第9話 新たな調査

喫茶店「風雅庵」での打ち合わせを終えた翌朝、藤堂樹は再び店に向かった。しかし、今日はいつもと違う緊張感を抱えていた。桜井美和と共に取り組むことになったサイバー犯罪の調査が、彼の心に新たな挑戦と責任感をもたらしていた。


朝の光が店内に差し込み、温かな雰囲気を醸し出していた。常連客たちが静かに談笑しながら、珈琲を楽しんでいる。樹はカウンターの中で新しいブレンドの準備を進めながらも、心は次の調査に向かっていた。


「おはよう、樹。」美和の明るい声が聞こえた。


樹は顔を上げ、美和の姿を見て微笑んだ。「おはよう、美和。早いね。」


美和は軽く頷き、カウンターの席に腰を下ろした。「昨日のことが気になって、早く始めたくてね。」


樹は彼女の熱意に感謝しながらも、少し不安を感じた。「今日はどこから始める?」


美和はテーブルの上に資料を広げながら答えた。「まずは、最近のサイバー攻撃のパターンを分析するところから始めようと思うの。犯人が使っている手法やターゲットの特徴を洗い出せれば、手がかりが見つかるかもしれない。」


樹は頷き、彼女の資料に目を通した。「了解。僕も自分の端末で解析を始めるよ。」


二人はカウンターに並んで座り、それぞれの端末に向かって作業を始めた。樹は美和が持ってきたデータを元に、犯人の痕跡を追い始めた。彼の指がキーボードを軽快に叩き、画面に次々と情報が表示されていく。


「ここに何かあるかもしれない。」樹が画面を見ながら呟いた。


美和が彼の画面を覗き込み、興味深そうに見つめた。「何か見つかった?」


樹は頷き、詳細を説明し始めた。「最近の攻撃パターンを解析すると、特定の時間帯に集中していることがわかる。それに、攻撃の痕跡が残っているサーバーがいくつかある。これを手がかりに、犯人の動きを追跡できるかもしれない。」


美和はその情報を聞いて、目を輝かせた。「それは大きな手がかりだわ。早速、警察のデータベースと照合してみる。」


樹は彼女の熱意に応えるように、さらに深く解析を進めた。彼の心には、過去の痛みと葛藤が再び浮かび上がるが、それを乗り越える決意が揺るがない。美和との協力が、彼に新たな力を与えていた。


「美和、これを見てくれ。」樹が新たな情報を見つけ、彼女に声をかけた。


美和はすぐに彼の画面に目を移し、表示された情報に驚いた。「これって……犯人が使っているIPアドレス?」


樹は頷いた。「そうだ。いくつかの攻撃がこのIPアドレスから発信されている。これを追跡すれば、犯人の居場所に近づけるかもしれない。」


美和はその情報に感謝し、深く息をついた。「ありがとう、樹。君の協力がなければ、ここまでたどり着けなかったわ。」


樹は微笑みながら答えた。「僕たちはチームだからね。一緒にこの事件を解決しよう。」


その言葉に、美和は強く頷いた。二人の協力が新たな希望を生み出し、彼らは再び調査を進める決意を固めた。


店内には、新しいブレンドの香りと共に、未来への希望が広がっていた。樹の心には、過去を乗り越え、新たな挑戦に立ち向かう力が満ち溢れていた。

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