第二章 5話

 マジェイ君がわざと降りる場所を選んでいなかったと願いたい不幸にも出会ってしまった不良達、誘拐されそうになった危機的状況から、もうヘロヘロとなっているスタミナを酷使させながら逃亡する。

 

 ランニングを開始してから10分程は経過しているんじゃないか、目の前に見えてきた行き止まりの場所へと到着するんだけど、追加で男が倒れていた。


「え、嘘でしょマジェイ君?」


 服装が違っている為、もしかしたらと思い倒れている男の側に近寄り、マジェイ君なのか顔を確認する。


「なんだ違ったか」


 男の顔には傷痕が何箇所もあり、伸ばしたままの髭を生やしているし、そして何よりもイケメンとは程遠いブサイク顔だった。

 私を追ってきたアレアバ帝国の宇宙戦闘機との戦闘中、一度だけ彼の顔を見ていたから、間違いなくこんな男がマジェイ君なわけない。


「ふむ、死んではいないようだね」


 善意とは関係なく職気質という理由で男の脈を測ってあげたら死んではいなくて、ただ気絶しているだけで、外傷も見たかんじなさそうなんだよね。


 しかも倒れている男が1人だけじゃなく、こいつと同様の状態で倒れている奴が他にも目の前で、死屍累々と勘違いしてしまう人数が道しるべのように倒れている。

 気絶しているだけの男達がしめしている方向が、雰囲気の悪い大きな建物へと続いていた。


 気にはなるけど、先ずは倒れている男達の顔も確認しておこう。

 ここにマジェイ君が倒れていたとしたら、追い着いてくるのが遅い不良達から逃げ切る手段を考えなきゃいけなくなるからね。


「まぁ、彼のステータスを考えたらありえないことだ」


 顔の確認は数分もかかることなく直ぐ終わり、当然結果はマジェイ君がここにいなかった。

 

 一騎当千以上の実力者と、私が評価しているんだから当然だね。


「となるとこの建物の中に入っていったのか」


 仕事着から普段着に着替えてくるだけなのに戻ってくるのが遅かった原因は分かったけど、ここで何をしていたのかは分からない。

 1つ分かることと言えば、倒れている男達を気絶させたのはマジェイ君のエデルタルによるものでしょ。


 それにしても彼が対象を戦闘不能にさせれる能力を持っていたことは知らなかったな、データ取集の為、定期的に送り続けていた機械兵器なんかじゃ判明できなかったよ。


「おっと、スローペースにしていたとはいえ、流石にのんびりしすぎたかな」


 他に逃げられる道がないことも確認しているから、とりあえずドアが開いたままになっていて、マジェイ君がいると思う建物へといざ入り込んで逃げる準備を整える前に、不良達が追いついてしまった。


 けれど全員、倒れている男達に驚いて思考が停止しているね。


「おい」

「おっと待ってくれ、これは私じゃないよ」


 そして先に思考が回復した男から怒り混じりに話しかけてきたから、本題を聞かれる前にカウンターで否定した。


「多分犯人はこの建物の中にいる人間がやったと思うよ、気絶しているだけのこいつらが道しるべしてくれているからさ」

「は、気絶しているだけだと?」


 気絶という単語を聞いて少し驚く男よりも、別の奴が直ぐに近くにいる男の容態を確かめていた。


「あの女の言う通りだ、気絶しているだけぜ」

「そうか」


 安堵した後、私に聞き取れないように少し話し合い始めだし、終了すると2人の男が懐から拳銃を取り出しながら私の方へと近づいてくる。


「あの、もしかして私が犯人だと思っているのかな?」


 危機感を感じ取りバッテリーが切れかけている光学迷彩を起動できるよう、気づかれずに準備を始める。

 

「いいや、お前が犯人じゃないことは分かったが、お前が待ち合わせで待っていたお知り合いが犯人じゃねぇかって考えいるわけよ」

「へぇ、知能の低い連中かと思っていたんだけど、以外だね」


 ドゴ!


 的確な正解を褒めているつもりだったんだけど、つい煽る言い方をしてしまったのがいけなかったかな、近づいてくる憤怒顔の男から無言のまま殴ってきた。

 不意の一撃に避けられず、踏ん張りに耐えられなかった私は後ろに倒れた。


「おい、怒る気持ちはわかるけど、一応こいつは後で商品になるんだからな」

「ふん!」


 殴った男には軽く注意するもう一人の男に代わるも、不服な態度を見せていた。

 

 交代した男の懐から手錠が取り出されて、気絶はしていないけど動けなくなっている私の両手を後ろにしてかけられて拘束された。


「お前は今から、俺達の仲間を襲った奴に対して人質になってもらうぞ」


 拘束してきた男に起こされた後、説明をする男からつづけて「立て」と命令された。


「その人のせいで上手く立てないんだけど」

「この!」

「待て待て」


 殴った男に睨みつけながらもう拘束男からの命令を冷たい拒否をしたら、再び殴りかかろうと近づいてくるけど、拘束男が体をはって引き止められた。


「じゃあ手を貸せば立てるんだな?」


 落ち着かない怒る男を食い止めながら私に質問をする男に、私は頷いて返答した。


「手を貸す前に1つ忠告しておくぞ、お前を人質にはするとは言が余り調子にのるなよ」


 どうにか怒る男を落ち着かせた後、イライラ顔の拘束男が胸ぐらを掴んで八つ当たって脅された。


 頷かず無言で返したけど、拘束男から手を貸してくれて立ち上がることができて、マジェイ君が居る建物へと連れてかれた。

 どうもこの建物はこいつら拠点らしくって、気絶していた連中は仲間みたい。


 後で私を何かの商品にするって平然と口にしていたし、多分こいつら不良じゃなくて犯罪組織なんだろう。

 

 私を拘束する2人とは他の連中は3手に別れて、4人が拳銃を取り出して先に建物の中へと無計画に突入していく様子がチラ見で見ていた。

 残りの2人は気絶している仲間を運ぶ作業を始めている。

 そして残り2人は、私の拘束と監視が担当のようだ。


 犯罪組織の癖に仲間思いな一面を持っていることに少し感心しておくけど、建物内にはまだ犯人ことマジェイ君が居る筈なのに仲間を助ける暇なんてないだろと、口にしたらまた殴られそうだから閉まっておこう。


 話しは変わって伝えておくことがある、私は何度も言っている心情無反応体質のせいで、ありとあらゆる感情が外に出ないどころか湧き上がることもない性質になっていんだ。

 何故そんな体質なのかについては機会が訪れた時に話すとして、今は何故この話しを急に持ちかけたのかを説明すると。

 心情無反応にはデメリットが大きい体質にしか聞こえないかもだけど、これでもメリットの方が結構多い、例えば不幸な今の現状に絶望しないでいれるんだよね。

 他にも色んな状況で助かっていることがあるんだけど、さっき殴られた痛み、これに関してはどうしようもなくなるんだよね。


 痛みが伝わることはないんだけど、代わりに思考が回らなくなっていて、戦い素人な私から分かる隙が多いこいつらから逃げる方法を考える余力すらない状態で、ピンチ。


 抵抗力を失っている私はこいつらの指示に従う事しかできないから、言われた通りに二人の前に立って建物内へと進んでいく、そして階段で突撃した連中とは別方向、地下へと降りた。


 扉を開けると内装は鉄格子の檻が部屋で、私は牢屋の中に入れられた。


「また痛い目にあいたくなきゃ、ここで大人しくしてろ」


 拘束男から忠告された後肩にかけていたバックを取り上げられて、手錠をかけられたまま檻の扉に鍵をかけるだけで、檻の前に監視役を置かずに二人とも部屋を出ていくなんてね。

 この部屋には無人機が設置されている箇所は見当たらなかったから、無抵抗となった私に油断しているのかな。


 バックは拘束男が持ち去られているから端末は使えないけど、地球人からはただのアクセサリーにしか見えない光学迷彩を取り上げられていないし、多少の防弾性を持つ上着を脱がされずに済んでいるんだな。

 それにと手触りで手錠の仕組みを確認したんだけど、電子式じゃなくてレトロ式な手錠だった。

 牢屋の鍵もレトロ、この部屋がハイテクだったら道具のない状態で抜け出すのは一筋縄ではいけなかったよ、思考が回復したら脱出する策を考え……。


「おい、誰だお前?」


 牢屋の外から話し声が聞こえた。


「待て、それ以上動くと!」


 ドサぁ!


 声を荒げそうになるも、急に静かになって倒れた音が聞こえた。


 ガチャ!


 牢屋の扉が開き、檻の中に設置されていたベットから立ち上がって身構える。


「パラメラさん!」

「……マジェイ君かい?」


 服装が違っていたが、顔と声に覚えていたから、恐る恐る顔つきの良い優男の青年に質問をする。


「うん、助けにきたよ」


 敵だと思い込んでいるのは私だけだったのかと、嫌気になっているのか、それとも呆れているのか分からなくさせる一言に、言葉を詰まらされた。

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