第二章 3話
一時間以上もかけて飛行旅を体験した私と、宿敵のヒーロー、マジェイ君は目的地にしていた町へと到着した。
今は町の上空を飛んでいて、人気が一人もいない場所を探し回っていた。
「ねぇ、そろそろ降りれる場所を決めてくれないか」
空の旅程の時間はかかっていないのだけど、時間をかけなきゃいけない程の行動に理解ができないでいた私は、痺れを切らして冷たく感じる口調で問いかけた。
「ごめん、今の僕は仕事着を着ている状態だから、緊急時以外で人前に立つのは遠慮させているんだ」
ええと簡単に説明するに、例えるなら超有名なアイドルと俳優のように赤の他人が群がってくるから、人のいない場所に隠れて服装を替えておかないと、私と一緒に歩くのが難しくなるらしい。
だからこうして時間を無駄にかけてまで、人が一人もいない場所を探している訳だ。
「ふむ、勇敢に戦う戦士に憧れを持ち、価値のないサインをねだってきて、通り道を塞いでくる迷惑な連中と同じということか」
「ううん、その例えは間違ってはいないんだけど、かなり辛辣な言い方だね。
もしかしてパラメラさんはそういった経験があったの?」
「まぁね、こんな星に侵略する前は優秀な科学者として、皇帝陛下から称賛される程に大活躍だったんだから」
まだ一年半程しか経過していないけど、もはや私にとっては数十年も遡る過去の経歴なっていた。
だってそうじゃないか、無駄な時間を費やして意味なく後悔していたとしても、この現状から復帰できるなんて現実逃避した考えを持つなんて私にはできないからさ。
「皇帝陛下……、その人がこの星に侵略指示を出したの?」
うん? 彼から伝わってくる空気が変わったぞ。
「おや、君が興味めいたこと聞いてくることには驚いたけど、それは後の尋問で話してあげるよ」
驚いたといっても、表情は無表情のままだったけど、本当に驚いたよ。
マジェイ君から少しエデルタルの波長が乱れていることが、抱っこで接触している状態からの私でも感じとれた。
「ごめん……、話を戻そうか」
重要参考にとしてアレアバ帝国に関する情報を引き抜けるかもしれない私が、ちょっとした理由で情報を引き抜けなかったら、自分と地球が困ってしまうことを理解している彼は直ぐに謝ってくれた。
まぁ、地球にとって私はアレアバ帝国への攻略情報を持つ者として重宝したいんだろけど、私から勝つ為の情報を入手したところで、勝率は10%も満たないんだけどね。
「そういえば私達なにを話し合ってたっけ?」
「パラメラさんが皇帝って人から称賛を受けたってところだよ」
鬼才と呼ばれている私だけど、数分の会話内容を記憶に留めるっていうのが苦手となっている私を気遣ってくれた。
もしかしたらさっき話がそれたことへの詫びのようものかしら、別に気にしてはいなかったのだけど、一応心の中で感謝はしておこうかな。
「あぁ、ええとね、皇帝陛下からの称賛を受ける程に功績を積み重ねすぎたせいで、出世欲が高い連中と訳の分からない尊敬の念で近寄ってくる連中に群がれた経験があったんだよ。
余りのうざさに耐えられなかったから、半年間は仕事場に引きこもっていたさ」
「それは大変でしたね」
「本当に大変だったんだよ、特に前者の連中が一番酷かったさ、出世に一ミリも興味がない私と関係作ったとしてもなんの効果も与えられる訳ないのに、ストーカーレベルでしつこかったんだよ」
「あはは、あ! あった」
懐かしさの余りに、何故か熱弁しちゃっていた気がする。
面白さにはかける私のくだらない話しに、マジェイ君は同情した笑いが返ってきたところで、タイミングよく人が一人もいない場所を見つけてくれたようだ。
「パラメラさん今から降りるから、姿勢の変化には少し注意してね」
「わかった」
地上に降りる場所が見つかるまで一時間以上も寝そべった姿勢でマジェイ君の背中に抱きついていたから、急な垂直の姿勢になると腕が痺れて、掴む力が緩んで離れてしまう危険性を考えてのことらしい、お優しい彼は注意を促しくれた。
けれど多分、マジェイ君が超能力で固定してもらえると、彼の性格上から推測できているから別に注意を意識する必要はないでしょ。
というわけで、私の読み通りマジェイ君が超能力で固定してもらいながら、人気を感じない小汚い細道へと問題は起こることはなく地上へ降りることができたんだけど。
「おっと!」
無事に地上に着地はできたのだけど、ここにきて緊急事態が発生した。
マジェイ君のおんぶ状態から離れようとした時に、足の力が入らなくなってしまいバランスを崩れて倒れそうなった。
「ふぅ、パラメラさん大丈夫?」
察知したマジェイ君の腕が私の前に差し出してきて、私は危機一髪で腕に掴み倒れてしまわないように踏ん張れた。
するとマジェイ君が急に抱き寄せそうになる距離まで引き寄せてきて、私が倒れることがないよう姿勢を整えられる手助けをしてもらっていた。
そしたら一瞬、ほんの一瞬だけ心の中がモヤモヤしていた。
「あ、ありがとう」
何故か無意識に緊張していた口調で感謝してしまったのだが。
「僕も初めての飛行で着地した時は、姿勢が急に崩れて倒れた経験があったんだ、だから予想はできていたよ」
「ふ~ん」
降りるときに注意を無視しちゃったことへの仕返しだろうか、しかも乗り物を使わずに重量のある空間で飛行するのが初体験に気づいていた上でわざと教えてくれなかったでしょ。
「君って優しさ高めの真面目君だと思っていたけど、怒らせると面倒になるんだね」
さっきまで心の中がフワフワしていた感情がいつの間にか消え失せてしまい、彼の顔を睨み付けるように見つめながら文句を口にだしていた。
当然聞こえていた彼は理解しているようで、楽しそうに笑い返された。
「まぁ、いいか、それよりももう大丈夫なはずだから、いい加減に離してくれるかい?」
「あ! ごめん」
どうも女性の扱いはなれているという訳じゃないみたい、私との密着はしていないものの、傍から見たら抱きつこうとしているようにしか見えない状態だからね。
それに気づいたマジェイ君は慌ててはいたけれど、突き放したりなんかはせず、丁重に解放してくれた。
「じゃあ僕は着替えてくるから、少しここで待っていて」
「うん? 着替えなら別にここでやっても私は構わないけど」
勘違いしないでほしいのだけど、別に私は変態的な意味で提案した訳じゃないよ、それに異性への裸に興味は一切ないし。
「いや、まぁ、僕も別にここで着替えてもいいんだけどさ、その機密情報が含まれているから見せられないんだ」
「なるほど、それは確かに私には見せれないよね」
最後に「わかった」と伝えると、マジェイ君は直ぐ側にある曲がり角へと向かっていった。
「機密ということはそれ転移装着型といったところかな、文明力が低いわりに技術力はそこそこあるんだな」
「あはは、見抜かれちゃったよ」
「別にわかり難い程でもないでしょ」
さっきから仮面が邪魔でマジェイ君の表情が見えないのだけど、曲がり角の手前で足を止めて緊張した笑い声をだしたということは、私の推測は当たりのようだ。
マジェイ君が装着しているスーツは一見なんの機能もなく、でもアレアバ帝国の宇宙戦闘機を接近戦で撃破しても破損らしき箇所がなかったから頑丈差は物凄く高いとだけは一目で理解していたんだけど、ここで隠されていた機能がもう1つ、それは装着式の転送機能だった。
マジェイ君が機密って言っていたけど、おそらく地球だとまだ未知のレベルなんでしょうね。
アレアバ帝国じゃ幹部以上の人達が正装の服が汚れたり破けたりするのを避ける為に全員採用しているし、エデルタルを宿す一般兵にも能力の向上を施す装備を瞬時に装備させれるメリットから採用している。
更に手間のかかる着替え省く為、というだらけた理由で民間にも採用されているから、別に脅威じゃない技術だってのは口にしないでおこうかな。
そういえばマジェイ君のスーツにはマスクが着いてたな、もしかしてマスクには便利機能が付いていて、あれに機密部分が含まれているのかな。
いやそうとしか考えられないでしょ、そうじゃないと補助機能とか不要のステータスを持つ彼に、覆面のマスクを装備する理由が思いつかない。
「ううん、興味が湧いた。
後で聞けないかな、でも機密情報って言ってたし」
マジェイ君は着替えに行っていて居なくなっていて、私は独り言をぶつぶつと喋っていた。
「うん、話し声?」
マジェイ君が着替えに行ってから数分だけ時間が過ぎた時、マジェイ君が向かった道とは別の道から複数人の話し声が聞こえてきて、徐々にこっちらへと近づいて来ているのが分かる。
「ううん、あれぇ、こんな薄汚い小道に女の子がいるよぉ」
「え! うわ、本当じゃん」
日が沈んでいて暗くなっていた道先から、大体8人程の怪しい男集団が影の中から姿を現して、私に話しかけてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます