第10話 ちやほやされたい
ガチャリ
俺は誰もいないマンションの扉を開けて奥へと進み、敷きっぱなしの布団の上へとばたりと寝転がった。
「……ん、疲れた」
今日は朝からバイトあって、その後配信という、そう言うスケジュールだった。
……正直、大変で疲労感が凄い。
「明日配信は休むか……」
そう思うが、いやいや。
毎日続けてこそ、大成できるんだ。
「……いやまあ、配信やってもあんま見られはしないけど」
そう思って肩をガクッと落とす。
陰キャながらもちやほやされたい。
そう思って三年前に始めた配信活動。
配信一年目は、そこら辺にいる様な雑魚配信者だった。
パットせず、目立たないジャージ姿。
今でこそ白髪になってるが、当時は目立たない黒色の短い髪。
噛みまくりで、そんなに喋ることしないパッとせず……そして何よりゴブリンにすら負ける雑魚。
それが当時の俺だった。
「……ん、、最初は本当ダメダメだったけど、今はこんな可愛くて、喋りもそこそこ。実力派サイキョーって感じなんだけど……」
……なんで伸びないのかなぁ。
「はぁ……」
俺は深々とため息をつく。
「もっとちやほやされてぇよぉ……女の子にもてたい。女の子と一緒に冒険したい。推しとコラボしたい……最強さんだーって言われたい―」
……あとお金欲しい。
「うなーー!みんなにちやほやされたいよー!」
そう言って適当にそこらへんにあった飲みかけの酎ハイを持ってぐびっと行く。
「……冷やした方がおいしいな」
美味しいは美味しいけど、なんか足りなさを覚えてしまう。
とりあえず、これ一回飲み終えて……
「……立つのめんどい」
けど、飲み物飲みたい……
「……立つか」
俺は怠い体を持ち上げ冷蔵庫まで歩く。
……ついでになんかつまみみたいなのも作ろう。
そう思いながら。
「あ、そうだ」
ふと思い出し、外出の時に持っていたリュックを漁る。
中から出てくるのはオーク肉。
「……早速こいつ使うか」
ごろッと出て来たオーク肉はまるで高級なお肉の様。
「……ゴクリ」
見てるだけでお腹水滴……あ、よだれ出てた。
「じゅるり」
やっばぁ、お腹すいてきたな。
もうおつまみじゃなくて夜ご飯にしよ。
そう思うと、体の疲れより食欲が俺を襲う。
疲れてると言えば死ぬほど疲れてる。
だが、もう既に俺の体はご飯を食べないと寝れない身体になってしまった。
食欲……まさに魔物である。
「とりあえず、肉だと物足りないしなんか他に何か……」
そう思って冷蔵庫を開けると、そこには酎ハイしかなかった。
「……あ、もやしあるじゃん」
無いと思ったら、冷蔵庫の奥底にもやしが一パック残されてた。
「しょうがない、今日はこれで……」
そう思ってパックに触れたら……何故だろう。めっちゃ柔らかい。
掴んで取り出してみれば、何という事だろうか。なんか水が溜まって、変な色になってる。
「腐ってんなこれ」
因みにこの後米だけ炊こうと思ったが、米も切らせていたことに気が付き絶望することになったのだが、それはまた別のはな……しじゃないな、今の話であった。
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