レベル1固定の最強冒険者 〜謎スキル【ルーレット操作】で成り上がる〜

芍薬甘草湯

第1話 祝福の儀

 街外れの草原を駆ける少年と少女の姿があった。歳の頃は7〜8歳くらい。


「うぉー! モンスターめぇ、ボクが相手だぞー!!」

 黒い髪の少年の名前はルイン。冒険者を夢見る活発な少年だ。手には剣に見立てた木の枝を持って振り回している。もちろん周囲にモンスターなどいない、冒険者ごっこだ。


「ルイン、待ってー!!」

 後から駆けてくる少女の名はアンジェリーナ。

 長い髪を後頭部で一つに縛っている。陽光に金色の髪が煌めく。幼いながらも将来が楽しみな美貌の持ち主である。


 二人は戦争孤児で教会の孤児院施設育ち。幼なじみでいつも一緒にいた。


 ルインが活発な性格、アンジェリーナはやや慎重派な性格で二人で遊ぶのにもバランスが取れていた。


「アンジェ、ボクは将来冒険者になるんだ! 大きくなったらレベルを上げてそしてモンスターをたくさん倒して平和な世界にするんだ!」

「ルインはすごいなぁ‥‥‥。わたしはそんなの無理だよぅ」


「アンジェだって活躍出来るよ! 怒った時の力なんかボクよりも‥‥‥」

「もう!! すぐにそういう事言うんだから!!」

 膨れた顔のアンジェリーナも可愛いと思うルイン。

 こんな調子で二人はいつも一緒だった。


 アンジェリーナがぼそっと呟く。

「私は、普通のお嫁さんになりたいな〜。出来ることならルインの‥‥‥」

 特に後半の言葉は声が小さくなりすぎてルインには届いてはいなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 二人が12歳になり【祝福の儀】を受ける事になった。この世界の人間は12歳に神からの祝福【スキル】を受けるのが通例である。


「やったぁ! 【魔術師】のスキルだ!」

「私は【治癒師】よ」

「俺なんか【槍使い】だぜ! 将来は絶対兵士長になるんだ」


 先に祝福を受けた子達の話し声が聞こえてくる。

 スキルは人によって様々である、どのスキルが与えられるのかはわからない。


 ルインは自分にも素晴らしいスキルが与えられるのだろうとワクワクしていた。

 アンジェリーナはどんなスキルが与えられるのかドキドキしていた。


 二人の番が来た。

「アンジェ、先にやりなよ」

「う、うん‥‥‥」


 スキルを与えられる水晶に手を触れるアンジェリーナ。

 触れた途端、水晶は眩しいほどに光り輝きだした。この教会の神父はこれほどの眩しい光は経験が無かった。

 あまりの事態に周囲の親子達も静まり返った。


 やがて光がおさまると神父が目を見開き叫ぶ。

「ま、ま、【魔法剣士】!!!」

 

 一瞬の静寂の後、歓声が上がる。


「え? え? わたしが‥‥‥?」

 ざわざわと周囲の人が話し始めるなか、神父とこの式典を見守っていた騎士達も集まりアンジェリーナを囲んだ。

 興奮気味の大人達に気圧される二人。


【魔法剣士】とはジョブ系スキルの中でも上級職と言われる一つ。魔法と剣の才能に秀で、どちらも一流になれば組み合わせて使う【魔法剣】が使えるようになる。

 そしてこの上級職スキルを持つ者は勇者候補生として王都に集められる。そこに例外はなかった。


「君、名前は?」

「ア、アンジェリーナです‥‥‥」

 騎士隊のリーダーと思しき人物がアンジェに話しかける。アンジェはビクビクと落ち着かない様子だ。


「こちらにおいで。なーに、取って食う訳じゃない。そんなにビクビクするな」

「は、はい‥‥‥」


 その間ルインは一人取り残されていた。只事ではない事は理解出来てはいるが。

(アンジェが【魔法剣士】なら俺だって‥‥‥)

 ルインは自分も間違いなく良いスキルを授かる‥‥‥と確信していた。


 神父がルインの存在を思い出したかのように話しかけてくる。

「おお! ほったらかしてしまってすまんな、ルイン。【魔法剣士】なんてスキルが与えられるのはこの街では初めてじゃからな」

「まぁ‥‥‥そうですよね。俺のも早くみてください。いきまーす!!」


スッ!!


 ルインが水晶に触れると先程と同様に眩いばかりの光に教会内が包まれた‥‥‥。

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