【初配信】
今日は妹、夜宮咲楽の記念すべきVtuberとしての初配信だ。色々俺も手伝ってきた。絶対に成功させたい。そんな思いで学校へ向かった。
●
教室の隅っこの席で授業を受けても、あいつの初配信のことが頭から離れず、ろくに授業が頭に入らなかった。
「ただいまー」
「おかえり、兄貴」
「咲楽、初配信頑張れよ」
俺はそう言い残し、リビングに制鞄を置いて、風呂場へと直行した。
そうこうしている内に初配信の時間である21:00が近づいてきた。あと10分。1秒1秒がゆっくりと過ぎて行く。
俺はスマホの電源を入れ、黒く「X」と描かれたアイコンのアプリを立ち上げた。検索欄に「
貼ってあったURLを押し、配信サイトへと飛ぶ。コメント欄は
『待機!』
『待機、初配信楽しみ』
『キョロ(・ω・`三´・ω・)キョロ』
といったコメントで溢れていた。最後のやつなんだよ。
コメント欄を見ていて、衝撃の事実に気がつく。
『ご飯食べてから戻るか』
あ…れ?今日ご飯作ったっけ?朝しか作っていないような…
あ!!!!!ご飯作ってない!!!!!やばい!!!!!
どうしようどうしよう、きっと咲楽はお腹が空いている筈だ、初配信中にお腹が鳴ったりしたら…やべぇ…
急いで冷蔵庫から豚肉とキャベツを取り出し、フライパンの上で炒めていった。味付けも分量もくそもねえ…
あと5分…私のVtuber人生が始まる…
コメント欄を見ると、同接2000人を超えていて、色んな人が「待機」とコメントしていた。余計に緊張感が増してくる。
設定を完璧にして、もう21:00。——初配信、スタート。
【#初配信】皆さんはじめまして!!
「皆さんはじめまして…!乙宮華恋といいます!」
『きたー!』
『かわいい!!制服!!!』
『JK…((o(´∀`)o))ワクワク』
コメント欄があり得ないスピードで流れていく。…って、最後のコメント、何か怖い。
「今日は記念すべき私の初配信ということなので、自己紹介から始めていきますね〜」
『ktkr』
『楽しみ〜!』
《私の自己紹介》
名前:乙宮華恋
年齢:永遠の16歳JK
誕生日:1月15日
好きなもの:いちご
特技:ゲームと歌!
始まりの挨拶:こん
終わりの挨拶:おつ
一言:皆と仲良くしたいな〜♡
「上から順番に読んでいきますね〜」
そう言ったとき、部屋のドアからコンコンとノックがされた。
「ごめん、ちょっとだけミュートするね」
マイクの設定をいじり、椅子から立ち上がる。
俺は急いで作ったキャベツと豚肉の塩こしょう炒めを一心不乱に咲楽の部屋に持っていった。コンコンとノックをする。
「咲楽、これ。お前まだ飯食ってねぇだろ?」
「ありがとう、兄貴。…でも、今初配信中…」
「あ…!!やっべぇ…ごめん」
俺は足早にこの場を立ち去った。そこからは自室へ戻り、乙宮華恋の配信を見ていた。
兄貴からご飯を貰った。私はお皿を持って椅子に座る。
「皆ごめーん!兄貴が部屋に来て…ん?皆どうしたの?」
コメント欄を見ると、
『ミュート忘れきたぁぁぁぁーーーー!!』
『これ完全に事故だろwww』
『やばいやばい』
『兄貴優しい』
『兄貴くんかっこいー!イケボすぎる!!!』
等のコメントで埋め尽くされ…嘘、私ミュートにしてなかった…?終わった…私のVtuber人生終わった…。
咲楽に飯を届け、俺は布団に飛び込む。咲楽がやっている配信を見ると、さっきの会話が全て配信に載っていた。
やっべぇ…やらかした…俺のせいだ…。
とりあえず一旦、配信を見続ける。
●
初配信も終了した22:30。俺はベッドから立ち上がり、咲楽の部屋に向かって行く。流石に謝らないといけない。
「おーい咲楽、ちょっといいか?」
俺はノックしながら尋ねる。
「あー…兄貴、どうした?」
「あのさ…初配信中に飯届けちゃってすまん…」
「全然いいよ、話も盛り上がってたし」
確かに、咲楽の言うと通りだ。俺の話題で30分くらい話していたからな。
「本当にすまん、今後気をつけるわ」
「全然いいって。それとさ兄貴、私からも伝えたいことがある」
「…どうした?」
「あの黒くXって描かれたアプリあるじゃん、それのトレンド見てみてよ」
「…おう、それがどうした」
咲楽はすらすらとスマホを操作し、トレンド欄を俺に見せてくる。画面に写っていたのは、「#Vtuberの兄貴」が日本のトレンド1位になっていた画面だった。
「…どういうことだ?」
「呟きの内容見た感じ、兄貴っぽい。声がイケボだとか、料理できるあたり女子力高いだとか…」
「いや俺そこまでだけど」
「…なんやかんや、兄貴のお陰で配信が成り立ったと思う。ありがとう」
「いやいや、咲楽の話し方が上手かったからだよ」
「いやいや…」
思わず、2人とも顔から笑みが溢れる。
あれ、俺結構スルーしちゃったけど、日本のトレンド1位…?こんな俺が…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます