第227話

その後の戦闘はほとんどビルナーとリーセスの一騎討ちという流れで進んでいった。

レクス、レイ、ノインも時々援助しているが、中々その中には入っていけないようだった。

エルフ達もなんとか動き邪魔のならないところまで退避している。


リーセスは地面からの攻撃を避けながら少しづつ距離を詰めていく。

ビルナーも攻撃の間隔を変えながら少しづつリーセスの体力を削っている。


リーセスが地面を強く蹴り一気に距離を詰める。

ビルナーはそれに動じず後ろに下がり距離をとりながら空中のリーセスに地面からではなく壁から水平に植物を生やしすごい早さで成長させ一直線の攻撃をする。

しかし、リーセスはそれを横に飛び避けると片手で着地しそのままもう一度ビルナーに向かって距離を詰める。

ビルナーは一瞬驚きつつもそれに対応しもう一度壁からの攻撃を繰り出す。

リーセスはそれもまた避けるとようやくビルナーが射程範囲に入り強烈な蹴りを入れる。

その力は幻惑魔法により通常の何倍もの強さになっている。

しかし、ビルナーはその場に留まったままそれを受け止めた。

「こりゃあ埒があかんやつやな」

蹴りの反動を利用して距離をとったリーセスはそう呟く。

「理性が残っている分面白い」

ビルナーはまだ余裕そうである。



後方では必死の回復魔法が施されていた。

それでもカイが動くことはなくマイも焦り始めている。

その焦りを抱きつつ回復魔法をかけ続ける。

しかし、それは思いもよらぬ形で終わりを告げる。

流れ弾だった。

ビルナーが途中から使い始めた壁から一直線に相手に向けて植物を生やす技。

リーセスの限界が近づいてきて周りの確認がおろそかになってしまいそれを避けてしまう。

それが飛んできているのに気がついたときにはもう回避も防御も間に合わないタイミングであった。

ここで終わりなのだとそう思ってしまい回復魔法も消えてしまう。

次の瞬間寸前のところで植物が目の前で止まった。

一瞬何事かわからなかったが、すぐにそれがなぜ止まったのかがわかった。

カイからもらった自動防御の魔方陣。

諦めかけていた彼女にとってその魔方陣はカイを近くに感じさせるものだった。

魔法はイメージが大切である。それは回復魔法も例外ではない。

あまりに絶望的な状況であったためか先程までの彼女の回復魔法は魔力がたくさん込められているだけで効力はそこまでなかった。

しかし、今の彼女はカイを近くに感じたことでカイがもう一度動くイメージがしっかり出来ていた。

そのためか再度回復魔法をかけ始めるとすぐにカイがピクリと動いた。

それを見てかけ続けるとようやく目を開いた。

だが、彼の目は死神の目と野生の目が入り交じった混沌とした目のままだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る