第224話
しばらく進み後ろの皆が遠くになった時点で走り始める。
そこからまたしばらく進むと先代の精霊王と思われる姿が見えてきた。
「良く来たな。早速だがこれを見てもらおう」
脳内にある光景が流れてくる。
◆
突然倒れるマイの姿とそれを見て慌てる周りの皆の姿。
それを見た瞬間僕の中のもう一つの人格、つまり野生の目が今すぐにでも動き出そうとしているのがわかった。
それを必死に抑え込む。
「なんだ?使わないのか?その力を」
その声が聞こえるが、こんな状態で使うと大変なことになることは理解していた。
そしてそれに答える余裕もなかった。
「つまらんな。それならこれでどうだ?」
初めに写されたのはレクスの暗い表情。
レイは涙を大量に流しながらリーセスに支えられている。
そんなリーセスも暗い表情だ。
ノインですらいつもの明るさはどこにもない。
次に写されたのは顔を白い布で隠され周りには花が添えられている人だった。
服装は・・・・・・・・・マイのものだ。
ここまでは自分を保っていられた気がする。
しかし、そこで意識を手放してしまった。
◆
「・・・・・・・・・」
沈黙したまま顔をあげそっと目を開けるカイ。
その目は死神の目と野生の目が混ざり合い混沌としていた。
混沌とした目だがある一点を見ている。先代の精霊王だ。
「改めて名乗らせてもらおう。ビルナーだ。もう意識はないだろうがよろしく頼む」
「・・・・・・・・・」
沈黙のまま一瞬で距離を詰めると人間とは思えない動きで殴りかかる。
一撃を受けるごとに少しづつ後退していく。
後少しで後ろの壁に触れるというところでビルナーの姿は一瞬で消える。
カイはすぐには止まれず壁をえぐりながら止まる。
彼の拳からは血が流れているがそれを気にする様子は微塵もなかった。
振り返ったカイはビルナーの姿を見つけるとすぐに距離を詰め先程と同じように殴りかかる。
「それだけか。つまらん」
そう言うビルナーは右手を少し動かすとカイの足元から一瞬で植物が生えていきカイの動きを止める。
その植物の強度は強く野生の目を発動している状態のカイですら引き剥がすことが出来なかった。
「野生の目もここまでか。次はアイツを呼ぶか」
◆
カイが去った後を祈るようにずっと見ているマイに誰も声をかけることは出来なかった。
「戦闘音すら聞こえへんな」
少し時間が経ちリーセスがそう言う。
ここは地下ということもあり音が響いているため戦闘音は聞こえるだろうと考えていたのだ。
「嫌な予感がするな」
レクスのその発言にマイは更に心配そうな顔をする。
「いや、すまない。不謹慎だった」
それにすぐさま気づいたレクスは瞬時に謝った。
「謝らないでください。私は信じてますから」
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