第90話片目だけ
「カイ君こっち向いて」
僕達のテントに戻るとマイにそう言われた。
不思議に思いながらも振り向く。
「やっぱり」
「え?やっぱりって?」
「気付いてないの?目が…………」
「目?もしかして……」
「うん、ほら」
マイはそう言いながらインベントリから鏡を取り出し、見せてくれる。
映った僕の目は右目だけ死神の目になっており、左目は通常通りだった。
「あれ?僕のって片目だけだったの?」
「いや、両目だったはずだよ」
試しに普通の目に戻そうとしてみる。
「あっ!」
「戻ったね」
そして自分で死神の目にしようとしてみる。
すると右目だけ死神の目になった。
また、戻そうとすると通常通りになった。
ということは………
「右目だけ死神の目を自由に制御出来るようになった………」
これは良いことなのだろうか。
「報告したほうが良いんじゃない?」
「そうかも」
ということでレクスのテントへ。
説明すると、
「私の勘が当たったな」
「これって良いことなのか?」
「それは私に訊くな。まあ、今のところ何もないようだし大丈夫なんじゃないか」
また適当な事を言いやがって。
「そんなに不安なら戦ってどうなるか試してみたらどうだ?」
「いや、でも魔獣相手に発動する効果なくない?」
殺意増大の効果がまだあるのなら別だがそれ以外は人間に対するものであるため関係ないはずだ。
「誰かと模擬戦をすれば良いんだよ。まあ、お前の相手が出来るのはここには1人しかいないが」
「いや、でも明日にでも戦争が始まるかもしれないのに………」
「それに関しては私達は何かが起こらないと出番はない。お前は多分出番があるが他は中々出番がないだろうな。お前さえ良ければ良いんじゃないか」
こうして今度はロヴァイトさんのテントへ。
事情を説明すると快く模擬戦を引き受けてくれた。
模擬戦の場所はレクスがアゴットさんに話にいったらしくテントのないスペースを貸していただく事になった。
ただし、休んでいた兵士達がほぼ全員観客として見に来た。
聞いた話によるとレクスが呼びかけたらしい。
いつもだったら何してんだと言っているところだが今日は頭が冴えていてこれに士気向上の意図があることが分かった。
今回は死神の目の力がどれ程のものなのか確かめるものだ。
ロヴァイトさんにもいつもと違う点を感じたら教えて欲しいと言ってある。
両目と片目で力の差はあるかもしれないがそれでも確認しておく価値はある。
思えば死神の目を知覚してから戦闘をするのは初めてだ。
それに人に対しての効果が高いのに模擬戦とかでは発動してなかったらしいからそういう意味では初めて力を使うと言っても良いだろう。
もしかしたら盗賊に魔法で攻撃したときに発動していたのかもしれないけれどあれは力の差があり過ぎて参考にならない。
こうして何度目になるか分からない、死神の目を発動させたという意味では初めてのロヴァイトさんとの模擬戦が始まるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます