第16話いざエイル王国へ
ここは、前に怪しげな会話が行われていた場所。そこではまた国王と思われる人物と怪しげな人物が話していた。
「あの国の王子はどこに行ったのだ?」
「噂では国王となるもののならわしで王都外の街や友好国を巡っているそうです。」
どこからその情報を仕入れて来たのか分からないが正しい情報を怪しげな人物が言う。
「ほう、では例の平民は着いていってないのか?」
「それが平民がもう1人増え、着いていっております。」
「なんと、好機じゃないか。用意は出来ているのか?」
「ええ、もちろんで御座います。」
「どこで仕掛けるのだ?」
「次はエイル王国に向かうようなのでそこで仕掛けましょう。」
「どれほどの魔獣を用意出来た?」
怪しげな人物は少し面倒くさくなってきているのだが相手の方が偉いためそれを表情に出さない。
「最上級を用意いたしました。」
「何!?最上級だと?そこまで操れるのか?」
そう、この世界の魔獣にはランクがある。
下から下級、中級、上級、最上級だ。
最上級までなるとその出現は自然災害と捉えられる。そんな存在を操れるとなればそれこそ世界の危機と言ってもいい。
そのため操れることに驚いたのだが。
しかし、国王と思われる人物は欲で目がくらんでいる。世界の危機としてではなく征服する力と捉えた。
怪しげな人物はこの国の人間ではないのだが、そのことなど頭から抜け落ちているようだ。そして最上級を向かわせたら生け捕りなど不可能ということも。
これはもう洗脳に近いだろう。
「それでは準備がありますので失礼します。」
こうして怪しげな人物はこの部屋をさるのだった。
ところ変わってここは馬車の中。
中には僕、レクス、マイ、アゴットさんが座っており後の数人の兵士は馬車を引いている馬に乗っている人と交代用の馬に乗っている人がいる。
旅に出てから1週間が経った。
王国内の街を5つほどまわったのだが特に何も起こらなかった。強いて言うならマイとの気まずい沈黙の時間が減ったくらいだ。
早く旅を終えて恋人になりたい。
もちろんそんなこと声に出して言えないけど。
だってそんなことしたらマイに嫌われるかも知れないし、絶対といっていいほどレクスとソラがイジってくる。
特に前者は避けたい。後者も大分嫌だけど。
そんなわけで後1週間が早く終わることを心待ちにしている。
後友好国を5つまわったら王都に帰るらしい。
初めはエイル王国に向かうそうだ。
ウェンテライウ王国の南側に国境がある。
まあ国単位で言うところのお隣さんだ。
今回まわる国は王国から見て南から西南にある国だそうだ。
次回は北から北西だ。東側は帝国があるので危ないと判断されたらしい。
エイル王国の話に戻ろう。
この国では農業が盛んらしい。
エイル王国産の野菜はそれだけで他の国で作られた野菜より高価になるくらいおいしいのだそうだ。
というのをエイル王国に行く道中で教えて貰った。
そんなエイル王国の門に着いたのだが辺りは騒然としていた。
こちらの馬車に気づいた人が駆け寄って来た。
「この非常事態に何用ですか!!」
えっ?非常事態?
アゴットさんが代表して聞いてくれた。
「非常事態とは何事ですか?」
「聞いてないのですか?この国に最上級の魔獣が接近しているのです。」
そこまで言うと他の人が走って来た。
「最上級急接近直ちに避難してください!!」
「お、おい。レクスどうするんだ?」
「そうだな。ここは一旦離れよう。」
「それでも良いのかよ。エイル王国が滅びるかも知れないんだろ。」
「分かっている。だが、最上級は自然災害と捉えられている。そんな魔獣に立ち向かえなど命令出来ん。」
「でも」
「これは友好国とはいえ他国のことだ。
私たちが出張ることでは……………」
この言葉の最後は魔獣の遠吠えによってさえぎられた。
「もう手遅れのようですな。ここは最年長である私が魔獣を止めましょう。」
「いえ、僕が行きます。レクス、アゴットさん、マイこの魔方陣を魔力を込めて持って逃げてください。」
「そんな!!カイ君。危ないよ。」
マイに引き止められた。
「そうだね。危ないかもしれない。
だからこれだけ伝えとくよ。
僕もマイのことが好きだ。
初めて会った時からね。」
勢いで言っちゃったよ。
恥ずかしくなった僕は馬車を飛び降りて遠吠えが聞こえた方へ走り出す。
すると、そこにはオオカミに羽が着いて大きくなったような魔獣がいた。毛皮がなければドラゴンに見えるだろう。
僕が魔獣を認識したのと同時に魔獣も僕を認識したようだ。
少し助走を付けながら飛び低空飛行で僕に突進してくる。
僕は最上級どころか上級の魔獣も倒したことがない。どの程度強いのか分からないので全力で迎え撃つことにした。
まず、インベントリを自分の周りに配置する。そして魔獣を落とすために炎の魔方陣をを5こ取り出し僕の前方に配置する。それぞれに10発分の魔力を込めてから同時に放った。
すると、5個の魔方陣から連続で10回火の魔法が打ち出された。
この世界の人間が目にしていれば間違いなく驚き腰を抜かすだろう。
当然カイはそれを自覚していない。
そのため、これで止まらなかった時のために次の魔方陣を用意していたのだが、その魔獣は黒こげになって動くことはなかった。
……………………。
あれ?最上級ってこんなに弱いの?
この魔獣が最上級じゃない可能性は低い。
なぜならさっきの遠吠えは間違いなくこの魔獣によるものだったからだ。
取りあえずここにいても仕方ないので戻ることにした。
馬車は門の前にあった。逃げるように言ったのにと思いながら馬車に向かう。
馬車に入った途端マイが抱きついてきた。
か、可愛い。
「なんで無茶するんですか!!わ、私心配で……
そ……それにあれはズルいです。」
マイがさしているあれとは僕が馬車を飛び出す前に言ったことだろう。
今の今まで忘れていた。思い出して顔が赤くなってる気がする。
ただ抱きつかれいる感触に負けた僕は、
「ごめん。」
そう言いながら抱き返した。
ただその時忘れていたことがある。
「ハッハ青春ですな。」
「やれやれ、何故これで付き合ってないと言えるのだろうな。」
(良かったじゃん。)
そう、ここにはアゴットさんとレクスそしていつもだがソラがいるのだ。この声で気づいた僕達は急いで離れた。もう顔が真っ赤になっていることだろう。
「さて、イジるより先に報告を聞こう。」
「あ、ああ。倒した魔獣は……………こんなやつだった。」
近くにあった紙にさっきの魔獣を描く。
画力はそこまでないが特徴はちゃんと捉えられているはずだ。その紙を見せると3人とも顔が青ざめた。
「こ、これは………」
「オオハネカミではないか。」
何だよ、オオハネカミって。オオカミの間にハネが入ったそのまんまな名前じゃねぇか。
笑いそうになったが深刻そうな雰囲気なので我慢する。
「こいつを倒せたのか?」
「うん、ただこいつ本当に最上級なのか?あまりにも弱い気がするんだけど………」
「何を言ってるんだ、お前は。良いか、オオハネカミは近接戦をするものには届かないところから攻撃をし、魔法は速過ぎて当たらない。それどころか速すぎて起動出来ないことの方が多いのだぞ。」
なるほど速さ特化の魔獣だったのね。だからあっさり黒こげになったのか。
「その魔獣はどこに?」
「ああ、少し離れたところで黒こげになってるよ。」
「く、黒こげ………」
「何なら見に行くか?」
「あ、ああ見ないととてもじゃないが信じられん。」
そしてやはり魔獣はオオハネカミであり、討伐の証拠に持っていくことになった。
大きい袋に入れて。
インベントリは僕しか使えないので隠しているのだ。だから、防御の魔方陣を渡す時もいかにも今作ったように見せて渡している。
この後、エイル王国に魔獣を見せたらとても感謝され、パーティーに招待されるのだった。
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