クラスで一番人気の女の子の突然の告白
人間には誰にでも表と裏があると本で読んだことがある。
実際自分自身も表と裏はあると思っている。
他人に対して自分たちが表と思っているだけで、本当はその人の表じゃないこともあるだおる。
例えば俺たちがテレビでみている芸能人が見せている顔は表なのか裏なのか?
アイドルがファンに見せている顔は表なのか裏なのか。。。
それは本人と身近にいる人にしかわからないことだろう。
嶋野愛に対する認識もそうだ。学校に在籍している98%(俺と春乃さんを除く)ぐらいの生徒は嶋野愛は才色兼備の完璧な女の子だと思っている。
しかし今見ているように嶋野愛の才色兼備で完璧な女の子は愛にとっての表じゃなくて裏なのだ。
この認識は仕方がない、今の愛を他の人はみたことがないからだが、気づけば愛のイメージは勝手に才色兼備で完璧な女の子になってしまっているのだ。
2年生の始まりのころの話だ
俺は1年生から同様に教室の隅でボッチで過ごしていた。
ただ、1年生の時と違うとすれば隣に嶋野愛がいたことだ。
最初は心の中でガッツポーズをしたが、話す理由も勇気もないし、教室のでの嶋野愛は話かけるなオーラがすごいのもあり、隣同士で会話することはなかった。
会話することはなかったが、嶋野愛が隣にいることで再認識したのが「嶋野愛に対する周りの過剰な評価」だった。
「嶋野さんって天才だよね」
「嶋野さんが成績悪いところなんて想像できないもんね」
「嶋野さんって一度みただけで暗記してしまうらしいぞ」
これは周りが勝手に思っているだけで、隣にいるからこそわかるが
嶋野愛は天才というよりは努力家だった。
予習復習をしっかりしているし、教科書を読んでいるときも片手にペンを持って大事なところにはマーカーで線を引いている。
こんなことは天才はしないし、一度見ただけで暗記してしまう人はしない。
まぎれもなく才能の天才ではなく努力の天才だと思う。
でもこの「努力」が天才という言葉で片付けられているのは不憫だなと正直思った。
誰しもが他人に評価されるわけではないと思う。事実松岡瑞樹は他人に評価されていないだろう。
全く評価されないのも悲しいかもしれないが、違った方向に評価されているのもどうかなとは思う。
「あの。。。」
珍しく嶋野さんの声が聞こえた。
誰かを呼んでいるのだろう。
「あの。。。松岡くん」
「えっ俺?」
初めて嶋野さんに名前を呼ばれて俺は少し声が裏かえってしまった。
「えっ何?」
「消しゴムが落ちたので取ってくれませんか?」
俺がいろいろと嶋野さんのことを考えているうちに足元に消しゴムが落ちていた。
消しゴムが足元に落ちたことにすら気づいていないぐらい嶋野さんのことを考えている自分がキモかった。
「ごめん。今拾うね」
「ありがとう」
急いで消しゴムを拾うと元々大きかったであろう消しゴムが半分以下まで小さくなっていた。
改めて嶋野さんの努力の量を実感すると、先ほど嶋野愛を過剰評価していた生徒たちに腹がたった。
「なんでそんなに頑張るの?」
思わず嶋野さんに聞いてしまった
「何がですか?」
「隣で見ていて嶋野さんってすごく努力家なのに、それを周りの人たちって天才とかで片付けているでしょう?嶋野さんはなんのために頑張っているのかなって、もし周りの人の評価を裏切りたくないみたいな気持ちで頑張っているなら馬鹿らしいなって」
「馬鹿らしい?」
「もしそうだったらの話だよ?今言われて嶋野さんはどう思った?自分が頑張っている理由について」
「まぁ少しはがっかりされたくないなとは思っているかもしれません」
「それが馬鹿らしいなって思うんだよ」
「なんで関係ないあなたにそこまで言われないといけないんですか」
「それもそうだよね。余計なことを言ったね。ごめん」
嶋野さんに対して「馬鹿らしい」なんて自分らしくないことは重々承知している。
普段の松岡瑞樹だったらこんなことは言わないし、高値の華の嶋野さんに対して陰キャの自分が言ってはいけないことばだろう。
それでも嶋野さんの努力をみたら言いたくなってしまった。
ただ、言ったのはいいが恥ずかしくてこの場から逃げ出したい。
「あなたにはわかりません」
嶋野さんの方から何かが聞こえたような気がした
「あなたにはわかりませんよ」
今度ははっきりと聞こえた
「なにがわからないの?」
「私だって最初は周りに期待されることが嬉しくて頑張ってました。でもずっと頑張っていると、がっかりされることが怖くなるんです。高校生に上がるといつの間にか才色兼備で完璧な女の子というところまで私の評価はあがってしまっていて。自分じゃどうしようもなくなってしまう感覚があなたにはわかりませんよ」
「そうだね。全くわからないね」
「なら馬鹿らしいなんて言わないでください」
「普段ならこんなことは絶対に言わないし、今でも嶋野さんに対して自分が話しているのが不思議な感覚だよ。でもいいたくなったんだよ。嶋野さんの努力は誰が認めてくれるの?」
「何をいっているんですか?」
「他人に期待されることはすごいことだと思う。だからその気持ちに応えたいと思うことも自然なんだと思う。でも、期待に応え続けた先になにがあるの?嶋野さんの努力はいつ認められるの?そういった場所がないといつか疲れてしまうし壊れてしまうよ」
「自分が認められる場所・・・そんなところない」
「そういった場所になれるとは思っていないけど、俺は嶋野さんの努力を本当に認めているよ。普段から予習復習はちゃんとしているし、板書もノートに綺麗にまとめている。大きな消しゴムが半分以下になるまで使っている人の努力を認めないのがおかしい」
「松岡くん。。。」
「だからさ、頑張りすぎなくていいんだよ。途中で休憩することも大事だと俺は思う。きつくなったら弱音を吐けばいいし、疲れた休憩すればいいんだよ。それでまた頑張ればいい。期待されることは幸せなことだし、期待に応えることも素敵なことだと思う。実際期待されるのは一部の人間で、俺みたいな陰キャは特に期待すらされていない。だから嶋野さんはもっと堂々と私は天才じゃなくて努力の天才なんです!!って胸をはっていいんだよ」
「・・・・」
つい勢いで早口で話してしまったが、ちょっとカッコつけすぎたかもしれないとかなり後悔している。
しまも嶋野さんは下を向いて無言になってしまった。
笑いをこらえているのだろうか、それとも陰キャに説教みたいなことされて怒り狂いそうになっているのだろうか。
単純にドン引きしてしまったのだろうか
しかも「君のことをちゃんとみていたよ」発言は普通にキモイ。
これは完全い詰んでしまったのではないだろうか。
幸い放課後でほとんどの生徒が下校や部活動にいっているから教室には人は少ない。
「松岡くん」
嶋野さんが下を向いたまま俺の名前を呼んだ
「はい」
「私とお付き合いしてください」
「喜んで!!!あれ???嶋野さん今なんて言った?」
「私とお付き合いしてください」
「なるほど。。。お付き合いしてくださいね。それって買い物とかに?
「いや恋愛的に」
「本気?」
「本気」
「そうなんだね。。。。えええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
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