不滅の魔女様、VTuberになる。

猫好きのユリスキー

プロローグ


「……お金が…ない…?」




 永遠を生きる魔女である私に、突然の危機が訪れていた。



「え……あれだけたくさんあった金貨は…?ちょっと前に何処かの城から貰った気がするのですが……?」


 使い魔であるキャスパーに食事を頼んだところ、お金が無くて今日の分しか作れないと言われてしまったのだ。


「メルトリーゼ様、近隣の城主から金貨を貰ったのはもう300年も前ですよ」


「も……もうそんなに経ったの…?」


「はい、ちなみにメルトリーゼ様が現在もしている研究を開始してから、既に250年経っております」



 嘘……でしょ……永遠を生きているから、いつの間にか時間感覚が狂いすぎていたらしい。

 別に何も食べなくても命に支障は無いけど、精神的には食事ができないのはかなり辛い…キャスパーは日を重ねる度に料理の腕を上げていて、今では食事でやる気を上げないと何も行動する気が湧かなくなってしまった。



「…仕方ないですね…昔のように、何処かの国でも襲って奪ってくるとしましょうか…」


「それは得策では無いかと、メルトリーゼ様」


「……?昔のように奪ってくるのではダメなのですか?」


 手っ取り早い良い手段だと思ったのだが、キャスパーに止められてしまった。


「不滅の魔女であるメルトリーゼ様と同じく、長い時を生きる魔女である暴風の魔女様を覚えていますか?」


「暴風……あー、あの騒がしい人ですか…確か中々強かった覚えがありますね」


 ちょっと前(500年ぐらい)に喧嘩を売られて少しだけ戦ったな…懐かしい。



「その暴風の魔女様は、今から約100年ほど前に、人間達の戦争に巻き込まれて消し炭になりました」



「……え?…あの…暴風が?」


「はい」


「魔女同士の戦いとかではなく、人間に?」


「はい。人間が作り出した兵器の余波を受けて、粉々に吹き飛びました」


「そ……そうですか…」


「ちなみに、暴風の魔女様がメルトリーゼ様を除いた最後の生き残りでしたので…残る魔女は遂にメルトリーゼ様1人となりました」



「………………」



 え……人間達、成長し過ぎじゃない…?確かに研究に集中しちゃって250年ぐらい外出てなかったけど、暴風の魔女を殺せる兵器を作り上げるのは流石に予想外すぎます…しかも暴風を狙った訳でも無く余波で……



「ですので、お金を手に入れたいなら何か仕事を見つけるのをオススメします」


「仕事……ですか」


「はい、私は流石にこの見た目で仕事なんて出来ませんので、メルトリーゼ様にお任せするしかありません」


 確かに、人と同じ体型の黒猫なんて人間から見れば完全に化け物みたいな物だろう。

 それなら仕方ないけど……


「……この家から1歩も動かずにできる仕事とかありませんか…?」


 できれば家から出たくない…ここ数百年、1度も家を出てない私が、お金の為とはいえ毎日仕事をしに外に出掛けるのはキツイものがある。


「そんなのある訳が……いや、もしかしたらあるかもしれません」


「えっ、ホントですか?!」


「はい、これなのですが…」


 そう言って、キャスパーが自分で買ったらしい人間達の機械をこちらに向けてくる。(ぱそこん…?という名前らしい)

 そこには……



「……VTuber…?」




「はい。バーチャルTubeの略で、イラストを自分の動きと連動させて表情を動かして、見てくれている視聴者と話したり、ゲームを実況したりする職業のようです」


「ふむ…?」


「つまり、人気さえ出れば、話したりゲームしたりするだけでお金が手に入るって事です」


「おぉ!良いですね、VTuber」


 家から出ずに仕事したい私にはピッタリだ。お喋りは……ここ数百年はキャスパー以外と話してないから少し不安だけど、ゲームは面白くて偶にしてるし大丈夫だと思う…多分。


「それでは、ちょうど企業が新規加入者を募集してるので、そこに履歴書を作って送ってみましょう」


「履歴書…?」


「……私が書きますので、メルトリーゼ様は私の質問にだけ答えてください」


「はーい」



 VTuber……なると決めたからには全力で頑張る!私の平穏な(家でゴロゴロしながら過ごす)日々の為に!!




 ───────

 …数日後


「メルトリーゼ様。履歴書を送った企業から、1度本社まで来て欲しいとのメールが来ました」


「えっ…本社にですか…?」


「どうやら、履歴書の内容が真実かどうか確かめたいようでして…行かなければ、虚偽の履歴書と見なされて強制的に不採用となるかと…」


「…それなら仕方ないですね…テレポートで行くので、住所を教えてください」


「はい、かしこまりました。この本社ビルの住所は………」



「…それでは、行ってきますね」


「はい、恐らく内容の真実を確かめるだけなので、気を楽にして行ってきてください」


「お土産に何か買ってきますよ」




 ───────


「お帰りなさいませ、メルトリーゼ様」



「……採用されました」


「…え?」


「…本社ビルに行って、しゃちょう?と名乗る人と話しながら魔法を見せたら…その場で「面白いから採用」って言われました……」



「……その会社、ホントに大丈夫ですか…?」



「……わかんない」




 魔女の最後の生き残りであり、不滅の魔女の二つ名を持つ私、メルトリーゼは、VTuberになったらしいです。



 ✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -

 もしも読んでくれた人がいるなら…


 初心者の執筆なので、言葉の違和感や誤字などがあるかもしれません。もし見つけたら遠慮なく指摘していただけると助かります。


 更新頻度も不定期ですが、続きが気になるって思ってくれた人がいれば嬉しいです。


[作者コメント]

 VTuberもの書いてみたくて色々考えたけど、他の人のパクリだけはしたくないなぁ…ってなった結果「本物の魔女がVTuberになる」ってシナリオになりました。


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