悪役カラスは全てを敵に回す〜ダンジョンができるまで後2年〜
真田モモンガ
第1話 超能力の育成日記
4月10日
今日から中学三年生だから日記をつけようと思う。まぁ、今日の始業式は熱が出て行けなかったけど。
今日はほぼ一日中ベッドの上で過ごした。
そしたら、熱にうなされ変な夢を見た。
最初はよくある高い所から落ちる夢だった。
だけど、途中で浮遊感が生まれ、空中で止まった。振り返って見ると、背中に黒い大きな翼が生えていた。
その後は色々な場所を巡った―――気がする。
夢だからよく覚えていない。
4月11日
俺は今もまだ夢の中にいるのかもしれない。
そう思えるほどに今日の出来事は衝撃的で、理解が及ばないようなことだった。
事実だけを言うと、どうやら俺はカラスへの変身が可能になったらしい。
ただ、昨日夢で見たような人間の体で翼が生えるだけのものではなく、バリバリの全身カラスだ。
朝起きたらその姿だったから思わずカーッ!と鳴いてしまった。
鳴いたら直ぐ人間の体に戻った。
もう意味が分からない。
体がおかしくなったのかと思い、学校を休んで近くの大きな病院に行った。病院の先生にはとても健康ですとだけ言われた。
妹の沙耶には大きな病気だと思われて凄い心配された。
ごめん沙耶。お兄ちゃん厨二病か仮病のどちらかで学校休んじゃった。
この変身について一つだけ分かったことがある。それは、俺の体に起きているこの異変は、他人に易々と教えていいものでは無いということ。ネットで調べてもそれらしいものは見つからず、病院の検査でも異常がないという結果が出た。
これは、未だ見つかってない、もしくは、政府が隠しているナニカだという可能性が高い。どちらにしろこの力を言いふらして良いことなんて一つもないだろう。良くて実験動物。悪くて解剖室行きだ。
あ、病院の検査の結果って共有されるんだったっけ?
·····まぁ、いっか。疲れたし寝よ。
4月15日
深夜、まだ太陽の昇る気配もない時間帯に、俺は試しに飛んでみることにした。
部屋で試してみたものの、何度も壁に激突して体がボロボロになる上に、マンションで部屋を借りている状況のためいつクレームが来るか分かったもんじゃない。
そんな不安とか諸々のために外で飛行練習することに決めた。
カラスの姿になり、ペタペタと人のときと同じ歩き方でベランダに出て、少し飛んで柵の手すりに両足を乗っける。
この作業が意外と大変だった。
カラスの体の構造は人間とは大きく違う。しかも、昨日雨が降ったせいで所々濡れていてバランスを崩しそうに何度もなった。
俺は手すりの上で大きな翼を広げ、飛び立った。
その後は他のカラスに襲われたり、いきなり雨が降ってきたりと色々大変だった。
そういえば日記に書いてなかったけど、この前変身能力で興味深いことが分かった。身につける服によるカラスのときの大きさの変化だ。元々服は変身してもその場に置いて行かれたり変身を解いたら消えてしまうなんてことは無いことは分かっていた。
パジャマの姿から裸同然のカラスになり、その後人間の姿に戻ればあら不思議、変身前の姿そのままになっている。
これについての考察を何個かした。その中でも一番納得したのが服も体の一部だと認識されているというものだ。
さっきも書いたとおりカラスのときの体の大きさは服によって違う。
詳しい関数は分からないけど、質量と体積が関係していることは分かった。
未だ分からないことだらけ。
少しづつ調べていこう。
5月18日
夜の飛行が日課になった。
相変わらず他のカラスの襲撃はあるが、冬用のモコモコジャケットを着てドーピングをしているので、体格はこちらの方がいい。なので問題はない。
しかし、何でこんなにも俺のことを襲ってくるのだろうか。
考えられるものとしては、俺が縄張りに入っているとか。
もしこれが原因だったらどうしようもない。だって、空に境界線なんて無いんだもの。
分かり易く区切られていたら気をつけることも出来るが、俺が見た限りそれっぽいものは無い。
つまり、俺は引き続き襲われ続けるってことだ。
まぁ、少しこれも楽しいと思い始めたからしばらくの間はこれで良い。
8月10日
カラスの群れのボスが勝負を仕掛けてきた。
なんかボスと言っても群れの中で一番強いみたいな意味合いで、ここら辺の縄張りの支配権をどうするかというものだった。実際、周りの群れのメンバーは全然ボスの言うことを聞いてなかった。結果的に俺が勝ったけど、結構危なかった。ポチ(前のボスに俺が付けた名前)は空中での動きが素早く、何度も懐まで潜り込まれ冷や汗をかいた。
そういえば、俺カラスの言葉分かるようになってる。
10月2日
学校が退屈になって来た。
最近やけに頭が冴えていて、受験する予定の高校には余裕で受かる程になっていた。
担任の先生は一つ上のランクの高校を受けるように勧めてきたが、俺は受験校を変えるつもりはない。
今以上に勉強するのは夜の日課の妨げになるからだ。
10月10日
昔見た夢のように背中から翼が出ないか試したけど出なかった。
10月11日
昨日と同じように昔見た夢を思い出し、どうすれば人間の状態で飛べるか考えた。
とりあえず人間の状態で高い所から飛び降りてみることにした。
すると、翼は出なかったが、飛ぶことは出来た。だけど、翼のような安定させるものがないからなのか、クルクル回ってしまった。
今度翼を作ってみる。
12月30日
爺ちゃんが死んだ。
父さんと母さんが死んでからも他の親族とは違って親切にしてくれていたから悲しい。
でも、俺って少し薄情なのかな。少しも涙は出ないし、手続きとかの時間も空を飛びに行きたくてウズウズしていた。
反省のために三日間飛行の自粛を決めた。
1月1日
大穴が近所に現れた。
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