第21話 魔力数、5000……?

 それからも次々と測定は行われて、いよいよリアの番になった。

 

 俺はリアにエールを送りながら、検査員に誘導される。


 そしてリアが魔力測定器の上へと手をかざすと水晶が輝き始める。

 

「魔力量600です、Aクラスの基準を満たしています。」

 

 そう検査員はリアに伝えると、リアは安堵の表情を浮かべる。


 そしてそのまま測定所を出ていき、俺の元にやってくる。

 

「私は大丈夫でした、ロランお兄様」

 

 リアは嬉しそうに俺にそう報告をしてくる。

 

 俺はリアの頭を撫でながら言う。

 

「リアなら絶対Aクラスになれると思ってたよ」

 

「ロランお兄様にそう言ってもらえると、なんだか自信がつきます」

 

 リアはそう言って俺に笑顔を向けてくれる。

 

 本当に可愛い妹だ。


 そんなリアに見とれていると、今度はクレハの番になった。

 

「120番、クレハ、中に入りなさい」

 

「は、はい」

 

 そう呼ばれると、クレハが緊張した面持ちで測定所の中に入っていく。

 

(聞いた? あの子、平民らしいわよ)

 

(平民の分際で入学なんて、身の程を弁えないわね)

 

(間違いなくCクラスよ)

 

 そんな陰口が貴族達から聞こえてくる。

 

 だが、俺はそうは思わない。


 セシルには才能があり、努力もしている。

 

 だから俺はそんな陰口を叩く貴族達を睨みつける。


 するとその貴族達は慌てて視線を逸らして、何事もなかったかのように振る舞った。

 

 まあこれで少しは大人しくなるだろう。

 

「ではこちらの魔力測定器の上に手を」

 

 クレハは緊張しながらも、言われたとおりに測定器の上に手をかざす。


 そして水晶が輝き始めた。

 

 その輝きが止まった瞬間、計測員が驚きの声をあげる。

 

「魔力数、1500です! Aクラスで間違いありません!」

 

 計測員の驚きの声に、会場がざわつく。

 

(う、嘘!? あの平民が!?)

 

 そう驚く貴族達。

 だが俺は驚かない、だってセシルは原作でも魔力数1000ぐらいだったからな。


 まあ、この展開は予想できた。

 

 そして測定が終わったのか、クレハがこちらに戻ってくる。

 

「ロラン師匠、褒めてください」

 

 クレハは嬉しそうに俺にそう報告してくる。


 俺はそんなクレハの頭を撫でてやる。

 

「流石はクレハ、俺の自慢の弟子だ」

 

 俺が褒めると、セシルは顔を真っ赤にして恥ずかしがる。

 

 うんうん、やはり俺の弟子は可愛いな。


 そんなやり取りをしていると、俺の番が回ってくる。

 

「121番、ロラン、中へ入りなさい」

 

 そう指示され、俺は測定所に入る。

 

(あの怠惰な王子のことよ、Bクラスが関の山ね)

 

(ええ、今までサボってきた報いよ)

 

 そんなヒソヒソ話が聞こえてくるが気にしない。


 俺は検査員の指示に従い、魔力測定器に手を乗せる。


 そして水晶の輝きが消えるとともに、計測員が驚いた声をあげる。

 

「魔力数、5000……? え、えっと、Aクラスです」

 

(5000? あの怠惰な王子の魔力が?)

 

(ま、まさか、何かの間違いじゃないの?)

 

 再び会場がざわめき始める。

 

 まあ、そうなるよな。

 

 俺はそう思いながらも、測定所から出て行く。


 すると俺の後を追ってくるように、リアとクレハも出てくる。

 

「やっぱりロランお兄様は凄いです!!」

 

 そう言って腕に抱きついてくるリア。

 

 ぐほぉ……う、我が妹よ……あ、当たってるよ!


 柔らかい物が当たってるよ!


 俺は心の中でそう叫びつつも、顔には出さずに紳士的に振る舞う。

 

「ロラン師匠は、やっぱり凄いです」

 

 そう言って尊敬の眼差しを向けてくるクレハ。

 

「はは、まあ、たまたまさ」

 

「本当にたまたまなの?」

 

 俺がそう答えていると、横から会いたくなかった人物が現れる。

 

 第二王女のアリスだ。


 アリスは俺に近づいてきて、ジロジロと俺の顔を見る。

 

「あの怠惰なロランに、なぜ突然魔力が付いたのかしら?」

 

 俺の耳元で囁くように話してくるアリス。

 

「別に、俺が書庫で魔法書を読んでいたから、その成果が出ただけさ」

 

 俺がそう答えるとアリスは、『ふーん』と言いながら俺から離れていく。


 そして俺の横を通り過ぎる時にこう呟いた。

 

「もし今後私の脅威になるのなら、容赦はしないわ」

 

 そう言い残し、アリスは会場の中心へと歩いて行った。

 

 俺はそんなアリスの背中を見ながら、少し不安になる。


 アリスの魔力測定は見ていないが、原作だと確か6000ぐらいはあった筈だ。


 「目を付けられると厄介だし、うまく立ち回らないとな」

 

 そう自分に言い聞かせて、俺はリア、クレハと一緒にAクラスに向かうのだった。


―――



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