第30話アキラとカノン2人の関係

「アキラ! だらしなすぎる!

今日という今日は、許さない。」


カノンが布団に入ってゴロゴロしていた俺を怒鳴りつける。


「なんだよ〜俺は伝説の遊び人だぞ? 職がそうなんだから、俺は呪われてるんだよ。」


だらしない。それは分かってても、治らないよ。諦めて欲しいなと、布団に隠れる。


「知るか! そんな呪いあったらレイナに解いてもらいなさい!」



「知るかってちょっとは寄り添ってくれよ〜。」


布団から顔だけ出して俺は言った。


「そんな優しさ、現世に捨ててきた!」


顔を赤くして彼女が口をへの字にさせて言う。目も赤いから、鬼の様だ。


でも正直よく見ると、可愛いのだ。微笑んでくれることがほとんどないから、そう思わないだけで。


「身も蓋ねーよ! 

…なら1からその優しさ今日から作っていこう。というわけで、おやすみ〜。」


俺が言うとカノンが布団を剥ぎ取った。


「残念作れません。さぁ、起きてご飯作るのまず手伝いなさい!」


人差し指を立てて言う姿は、まるで教師の様だ。


「ひぇ〜無理! カノンは無理難題を仰る。これだから、お局様は。」


「お局様? 結構傷ついた…ああ言ってしまってはいけないことを口に出したわね?」


彼女が手を顔に当てて、目だけは見えるようにして言う。


カノンの真紅の瞳は綺麗だなと、叱られているにも関わらず、リラックスしてしまった。


「すみません謝るので許してください。ってことでお食事頑張って下さい。」



「誠意は言葉ではなく行動よ? さぁ料理を手伝うんだぞっ。」


カノンが微笑んで言う。天使がそこにいた。


けれど、キレる寸前なのが伝わった。

いやもうキレてるのかもしれない。


急に喋り方を変えてくるなんて、恐ろしいぃ。


なにか、何かないか? 料理の手伝いをしない方法、考えるんだ!


「確かに誠意は行動だな。なぁ提案があるんだけど、俺はギルドの依頼をしてお金を稼ぐ。

カレンは料理を頑張る。」


これでどう? 別に問題はないだろ?


「問題ない? んーなにがだろ? ギルドの依頼私も出来るよ? アキラもご飯は食べるよね?

自分だけしないなんて、私なら情け無くて泣きたくなるけどな〜。」


彼女が笑顔なのに、顔がひきつってる。


駄目だ! カノンにギルドの依頼をさせて、怪我でもさせたら…って言い訳してもレイナに回復とか言われるし…どうしたら良い?


思案するんだ、人生最大の危機なんだぞ!

自分に言い聞かせ、俺は対策を考えた。


「分かった、料理人を雇う。俺のギルドで稼いだ金を引いて貰って構わない。

それで決着だ。」


胸を張って言った。これで良いだろ? 彼女の顔を恐る恐る見る。


「ふぅ〜アキラあのね、なんでもお金で決着させるような男の人ってどう思う? 最低だと思うの。私はそんな風になって欲しくないの。」


カノンが顔を伏せて言う。


「料理したくないって気持ちは分かる。でもそれでいつまでも逃げてたら、孤立すると思う。

私は料理するね、手伝いたくなったら来て。

待ってるから。」


伏せた顔を俺に向けた。そんな悲しそうな表情しないでくれと、俺は胸が痛くなる思いで、彼女に謝りたいと考えた。


だけど、それは言葉だけ。行動で示せと彼女はさっき言ったばかりだ。


俺はベッドから出て、ダイニングキッチンに向かった。


「アキラ…来てくれたんだ。」

カノンが目を輝かせて微笑む。


当然だろ? 来ないなんてそんな薄情なこと出来ない。

手伝うよ、嫌これは言われてされるみたいだ。なら手伝わせて下さい? これも卑屈過ぎる。



「ああ、カノンと料理したくなったから、一緒に料理作ろう!」


「うん、一緒に楽しんで料理しよう。」

カノンに教わりながら、俺も笑顔で彼女と料理に励んだ。


目を背けず、俺は逃げずに立ち向かったんだ。


「あれ? アキラって料理出来るの?」


彼女が目を見開いて言う。


「実はさ、料理のバイトで働いてて、やれるんだよ。」


俺はカノンに事情を話した。


バイトで全然仕事が出来ず、毎日叱られて仕事するのが嫌になっていた。


けど学校では、頼られる存在。そのギャップに苦しんでいた事を彼女に伝えた。


カノンが手を握って優しく言う。


「そうだったんだ…もう大丈夫だよ。この異世界にアキラを叱るような人がいたら、私が全力でアキラの偉大さを伝えてやるから!」


それを聞いて俺は涙を流して、彼女に感謝した。


カノンも涙を流していた。


「ふぅ〜。私こそ、教えてくれてありがとう。アキラの重荷一緒に背負うから。楽しく今は料理しよ。」


そうだなと俺は頷いた。


他の2人がそう言えば見当たらないので、カノンに聞いた。


「ミウは1人で用事があるって出てったよ? レイナはいつものように図書館に行ってる。」


ミウが俺誘わないって事は友達と遊びに行ったか? レイナは本読むの好きだな。



2人の分も作っておくのか、カノンに聞いてそうしようと言われた。


「いつも有難うな、色々やってもらって。」


「んーもう! 泣かせないでよ…そう言われると、料理出来ないじゃない。終わってから聞かせて。」


泣くのか叱るのか…でもここは、そうだな、ごめんなと彼女に謝った。


カノンが手慣れた手つきで、テキパキと野菜を切った。そしてフライパンで肉を入れる。


今日は野菜炒めだ。


「あとお局様って言って悪かった。むしろその…良い奥さんなれるよ。色々言われてカノンの思いやりが身に染みよ。」


俺がそう言うと、彼女は横を向いて吹き出して、顔を赤らめていた。


「もう、どうしちゃたのよ? 照れるから!」


それは本心で言った。久しぶりだと、ぎこちないな。肉を切るのを手伝ったりしたけど、カノンの方がやはり早い。


それを見たら、尊敬したのだ。


先に俺たち2人でご飯を食べて、美味しいねーと、いつもより上機嫌なカノンだった。

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