第60話 家族依存症な委員長に確認ですが、なにか?
私、初音は基本的にどんな相手だろうと苦手になることは少ない。
とはいえ、今のクラスになって苦手な人物は増えた。
先ずは、
「付きまとわれた時のしどー君よね……」
後で聞いた話だが、土曜日は探偵に監視させていたガチストーカーだが、今の私はそれを嬉しく思うぐらいには入れ込んでいる。
それだけしてくれたと思えば今では
さておき、まだ苦手な人物がクラスに二人いる。
「次にお嬢」
ハーフの金髪褐色肌で、ヤの文字が付く稼業の長女。
スラリとしたモデル体型の美女だが、胸はうっすらだ。
文武両道なパーフェクトお嬢様である。
結論から言えばこのクラス全員がそんな彼女をクラスのカーストから引きずり落とした。
……内容だけ見れば委員長(妹)へ虐めを行うよう示唆したお嬢に対して、関わらないよう無視を行った形だけだ。それだって虐めなのにねぇ……。
彼女の自業自得もあるとはいえ、関わろうとせず無視なんてらしくないことをした私は、お嬢に引け目を持っている。
「最期に委員長……」
もう一人はお嬢無視事件でクラス女子全員を誘導した黒幕だ。
日本人離れした白い髪、人を殺したことのある様な鋭い目つきが特徴だ。
私は上手い事、虐めという意識を希薄にされて、舞台装置に使われたという事実が苦手を覚える原因だ。
「というか、クラスの中でこいつに苦手意識を持っていない奴はいないと思うけどね……」
簡単に言えば、度を過ぎたシスコンな唯我独尊。敵対すると、正論、屁理屈、交渉なんでもござれで言いくるめてくる。
まあ、面倒見が良く、博識なため、相談事はクラス内外問わず笑顔で受けているとのことでその評判も和らいでいるようだ。
何より、常識的に外れる質問ですら、はぐらかさずにキチンと答えを出すという評判が今回、私が話しかけるきっかけとなっている。
私の中で整理完了。
さて、
「いいんちょー」
今日はいい加減に彼への苦手意識を解消しようとも企んだ。
余り負の感情を抱え込みたくない、ビッチは悩みを少ないモノだ。
ちょうど、委員長にうってつけの相談事があり、委員長(妹)とお嬢が二人で席をはずしたタイミングを狙った。
運が良いことに、野球部も暴力女も居ない。
「なんだい?」
私が培った勘で言えば、彼は敵対しなければ無害だ。
結局、クラス全員を誘導してお嬢を制裁した理由は、お嬢が委員長(妹)を虐めるように女子を仕向けたからだ。
その実行犯も許されているし、何故だか知らないがお嬢と彼は許嫁となってラブラブしている。
学内不思議の一つに数えられている謎だ。
「怖い顔しないでよ、質問しにきただけなんだからー」
そんな委員長の顔が私を見るや、一瞬だけ、厳しいモノとなった。
向かうところ敵無しな彼でも私は警戒に値するのだろうか?
そう逆に考えて気を楽にする。
さておき、笑みを飛ばして警戒を解こうと試みながら言う。
「ちょち聞きたいんだけど。
男の二股ってありだと思う?」
目が点になる委員長は珍しい。
してやったりだ。
「……つまり、風紀委員の彼が二股してるってことかい?」
私のことを探るような目線で問い掛け。
敵対や策ならば、こんな弱味になることは言わないだろうと、思考が回っているのが目に見えて判る。
「違う違う、させていいか悩んでるんよ。
ビッチとしては男としても成長して欲しいからねー」
合点がいったように私を観てくる。
こういう時、ビッチという肩書きは便利だ。
というか、ノロケがウザいとも目線で言われている気がする。
ざまぁみろ。
「委員長、二股どころか、ヤマタノオロチらしいじゃん?
だから聞いてみたかったわけよ」
それを聞いた委員長の口元がバッテンになる。
どこぞのゲームの兎を思い出す。
「どんな噂だね、それは」
「妹ちゃんにお嬢、金髪美少女中学生と歩いている姿も見たとか聞いてるわよー?
あと、横浜市内で小学生と」
最後の言葉を聞いた彼の動きが変に思えた。しかし、突っ込まない。
私の経験的シグナルが触ってはいけないと感じたからだ。
藪蛇しかねないし、今回の目的はインモラルな質問と要注意人物との距離間確認が主だ。
「……そもそもに妹とはそんな仲ではないのだがね?」
ちょっと意外だった。
妹ちゃんの目線からは恋する雌……つまり、私の妹である
「え、妹ちゃんとズブリしてないの?」
「なんだい、そのワードは」
「セックス、交尾」
「……成程」
抽象表現が嫌いと言われたので具体的に言ったら、私を観る目線が珍獣を観るような戸惑いに変わってくれる。
しどー君からも良く浴びせられた類の目線で、相手の常識外に飛び出たのだろう。
「ないない、近親相姦になるだろ?」
常識的な発言。
だが、その発言は何となく嘘っぽい。
多分だが、Cをしてないだけで、他のことをしているのではないかと思う。
そもそも妹ちゃんがクラスでキスを委員長に求めるぐらいだし、寝間に一緒に入っているのも聞いている。
しどー君に家族キスの件を問いただされた時、家族愛を決め付けるのかね? っと反論していたので、ギリギリのラインは守っているのかもしれん。
「シスコン、ブラコンだからてっきり」
「はぁ……それらは君の言うビッチな関係は当てはまらないのだがね?」
「私もシスコンだし、自分の妹とは有りだけど?」
私の浅慮と見せかけたレッテルの根拠を晒すと、相手は安心したように呼吸が漏れる。
委員長達のコンプレックスに関しては、学校内共通認識だ。
特に怪しまれるような所ではない。
「さておき、質問の答えだが君ともう一人の女性次第では?
あとは彼氏本人、つまりマジメガネ君のやる気」
私の元のスタンスと一致する答えだ。
インモラルな事をマジメガネ本人に相談することも出来ないし、真剣な二股なんぞビッチ側で質問できる話でも無い。
ましてやパパママなんかに相談したら、しどー君が殺される。
クラスの評判から消去法でインモラル委員長が選択肢上に浮かんだ。
「ふむふむ。
私は妹ならオーケーだから……」
今回、相談した理由の一つは、本気で私の事を愛してくれていると言ってくれたしどー君に対して、本当に妹をけしかけるべきかの迷いが出た。
私的には妹が不幸になるのはやだと結論がでていたが、ヤマタノオロチしている男性からも参考意見が欲しかったのだ。
「それ以上の発言は聞かなかったことにしていいかい?
委員長として、見過ごせなくなる可能性がある。
学校に認めさせた風紀委員の彼にも悪いだろう?」
インモラル野郎がマジメに諭してくるので、ちょっとイラっと来る。
とはいえ、私にそう忠告してくるという事は私を敵として見なしていないということだ。
これは大きな収穫だ。
やはり話をすればどんな人か、何を考えているかが判るし、ありもしない妄想で怖がっていることも多々あるのだ。
カースト的にもクラス内で苦手意識を持つ人物は減らしておくに限る。
「あー、めんごめんご。
さんくす、委員長。さんこーになったわ。
今度、何かで埋め合わせたげる」
心底、要らなそうな顔をしてくるので機会があればお嬢と妹ちゃんに男の喜ばせ方を教えることにする。
これぐらいは恩を売っても/嫌がらせしていい。
くくく。
委員長のすました顔が快楽あるいは戸惑いで歪むのを想像すると、楽しくなってくる。
今度からカップルの女性側に助言して男を困らせる楽しみをするのは有りかもしれんね?
なお、しどー君も委員長に、
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