第1部第1章 誕生、ユニークな「賢者」?
第1話 「日常」の終わり
彼の名は、
何故、
「じゃあオヤジ、行ってきまぁす!」
その日、いつものように元気良く涼司に向かってそう言って、
「おう、行ってらっしゃい!」
と、涼司に元気良くそう言われた後、春風は家を出て、近所の人達に軽く挨拶をしながら、愛用の自転車に乗って学校へ向かった。
それから暫く走ると、目の前に海が見えて、そのすぐ側に1つの大きな建物が見えた。
私立
それが、春風が通っている学校の名前だ。
校門を通ってすぐの所にある駐輪場に自転車を停めると、下駄箱で靴を履き替えて、2階にある自分のクラスの教室に向かった。
教室に入ると、そこには既にクラスメイトが何人か来ていて、それぞれのグループに分かれて談笑していた。
春風はそんな彼らの様子をチラリと見た後、窓際にある自分の席へと向かおうとした。
その時、
「おはよう、雪村君」
と、入り口近くの席に座っていた1人の濃い茶髪の少年に挨拶されたので、
「ああ、おはよう
と、春風はにこりと笑ってその少年に挨拶を返すと、再び席へと向かった。
席に着いて、
「ふぅ」
と、春風がひと息入れると、
「あ、おはよう雪村君」
「おはよう」
と、隣りの席に座る眼鏡をかけた長い茶髪の少女と、その後ろに座る黒髪の少女に声をかけられたので、
「あ、お、おはようございます、
と、春風は恥ずかしそうに小さな声でそう返事すると、そそくさと席に座った。その様子を見て、天上と呼ばれた長い茶髪の少女はくすりと笑い、海神と呼ばれた黒髪の少女は、何処か寂しそうな表情になった。
やがて次々と他のクラスメイトが教室に入ってきて、それから少し時間が過ぎると、校舎内にチャイムが響き渡り、1人のスーツ姿の女性が教室内に入ってきた。
その後、女性が教壇に立つと、女子クラスメイトの1人が、
「起立!」
という掛け声をあげると、春風を含めたクラスメイト全員が一斉に立ち上がり、
「礼!」
と、再び女子生徒の掛け声があがると、
『おはようございます!』
と、全員元気よく女性に向かって頭を下げて、
「ああ! みんな、おはよう!」
と、女性も元気良くそう挨拶をした。
それから朝のホームルームが始まり、それが終わった後、最初の授業が始まった。
本来なら、ここでいつものように授業が始まり、いつものように昼休みを自由に過ごして、いつものように午後の授業を受けて、それが終わると、家に帰って涼司と共に家業の喫茶店を手伝う。それが、春風の「日常」だった。
だがしかし、その「日常」は突如として
(さーてと、お昼ご飯としようかなぁ)
それは、午前の授業が終わって、春風がいつものように昼休みを過ごそうとしていた時だった。
「ーーーーー」
「ん?」
「ーーーーー」
(な、何だこれ、声?)
教室内に、何やら不気味な「声」のようなものが聞こえたので、春風は思わず周囲を見回した。
よく見ると、他のクラスメイト達だけでなく、朝のホームルームに来ていた女性にも聞こえているのか、皆、「何だ何だ?」と辺りをきょろきょろと見回していた。その「声」のようなものに恐怖しているのか、中には怯えてぶるぶると体を震わせている者もいた。
このあまりの異常事態に、
(何だ? 何か嫌な予感がする!?)
と、春風がタラリと冷や汗を流すと、
「うわぁ! 何だよこれ!?」
と、男子の1人が驚いたように、それまで開いていた教室の扉が、ばんっと音を立てて勝手に閉まった。
「あ、あれ!? 何で開かないの!?」
と、女子の1人が扉を開けようとしたが、残念ながらびくともしなかった。
突然の事に誰もがオロオロしていると、
「う、うわぁ、今度は何だよ!?」
と、別の男子の1人が驚くのと同時に、教室の床が眩しく光り、
「きゃあっ!」
女子の1人が、その光に飲み込まれた。
そして、彼女に続くように、
「うわぁあ!」
「きゃああ!」
「ひぃいい!」
と他のクラスメイトだけでなく、女性迄もがその光に飲み込まれ、
「うわぁっ!」
「っ! 桜庭君!」
と、春風が驚いたように、今朝挨拶してきた少年も消え、更に、
「いやぁああ!」
「て、天上さん!」
隣りにいた天上と呼ばれた少女も消えた後、
「た、助けて
と、海神と呼ばれた少女も、春風に向かって手を伸ばそうとしてきたので、
「っ!
と、春風も海神という少女に向かって手を伸ばしたが、無情にも間に合わず、彼女も光に飲み込まれた。
「ちくしょう!」
彼女を助けられなかった事を悔しがる春風だが、
「うお! 今度は俺かよ!」
と、自身も飲み込まれようとしていたの気付き、すぐに窓際まで移動すると、ガシッとカーテンを掴んだ。
(み、みんなは!?)
春風はすぐに教室内を見回したが、既に女性とクラスメイト全員が飲み込まれた後のようで、残りは春風ただ1人となっていた。
「う、嘘だろ?」
と、ショックで顔を青くした春風だが、
「う、うわぁあ、やばい!」
必死の抵抗も虚しかったのか、既に腰の辺りまで光に飲み込まれていたので、春風は恐怖したのか、
「た……助けて!」
と、ギュッとカーテンにしがみつきながらそう呟いた。
すると、
「この手に掴まって!」
と、何処からか女性のものと思われる声がしたので、春風は驚いて辺りを見回すと、
(……え、腕!?)
何と、目の前に別の光が現れて、そこから1本の腕が春風に向かって伸びてきたのだ。
その腕を見て、最初は怪しんだ春風だが、今はそんな事言ってられないと思い、
(よ、よし、行くぞ!)
「えい!」
と、春風はカーテンから手を離して、代わりにその腕を掴んだ。
次の瞬間、春風はもの凄い勢いで光から引っ張り上げられて、その衝撃が大きかったのか、
「ぐあああああああっ!」
と、春風は悲鳴をあげた後、
(オ……オヤ……ジ……)
そのまま意識を失った。
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どうも、ハヤテです。
という訳で、今日から「ユニーク賢者の異世界大冒険」の修正版の投稿を開始します。
前作から設定を新しくした「本編」の他に、その派生作品である「外伝」も一緒に投稿していきますので、皆様、どうぞよろしくお願いします。
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