第3話 帰る場所は二人の家

ルイナの話を聞いたユウはこっちの世界に来る前の自分を思い出してしまった。

長い時間一人でいた孤独感。一緒に遊んだりご飯を食べたり他愛もない会話をしたり。そんな他人から見たら当たり前かもしれないがユウは違った。

 

高校1年の秋ごろわたし学校へ行かなくなった。いわゆる不登校だった。

学校に行かなくなってからは自室に籠ることが多くなってから人と話すことがなくなっていった。親も共働きでいつも帰りが遅くご飯はいつも一人で食べていた。始めのうちはさみしくて悲しくて泣いていたり普段美味しいはずのご飯の味がしなくなったりしていた。そんな日々に慣れ始めたころわたしはこの世界にやってきたのだ。

 そんなこともあってか今目の前で孤独を感じているルイナを放っておけなかった。


「ねぇ、もしこのまま一人で過ごすならわたしの家で一緒に住まない?わたしこっちに来てから一人で心細いんだ」

「それはできない。さっきも話したが人間の寿命は短いたとえ一緒に暮らしたとしても数十年でお前死に我はまた孤独に戻る。それなら我はこのままでいい」


ユウの誘いをルイナは悲しそうに拒んだ。それもそのはずルイナは過去に共に暮らしていた人間の少女を亡くしているからだ。

それでもユウは諦めなかった。ここで諦めたらが昔の自分が報われないと思ったからだ。


「わたしはあなたを絶対に一人にしない!何があってもそばにいるから!」


ユウは懸命にルイナに話しかける。


「だから何度も言わせるな我は…私はもう何も失いたくないんだ!」


ルイナはそう言い捨てると自身の魔力を解き放った。背中からは黒い翼が生え右手には赤黒い魔剣を携えていた。しかしその姿はどこかさみしそうにも悲しそうにも見えた。

その瞬間ルイナはユウ目掛けて魔剣を振りかざしてきた。その剣技は小柄な体格と翼の機動力を生かした素早く切り込んできた。魔剣はユウの心臓目掛けて飛んできたが間一髪で回避することに成功したが一息つく暇もなく二回目の攻撃が飛んでくる。


「ねぇ落ち着いて、剣をおろして」


ルイナの魔剣を杖で受け止め押し返した。


「お前に何がわかるんだ大切な場所を大切な人を失うこの辛さの何がわかるんだ。これ以上何かを失うならもうずっと一人でいいんだぁぁぁぁ!」


ルイナが怒りと悲しみの感情を剝き出しにしながら魔剣を大きく振りかざした。


(・・・やるなら今しかない)


わたしは何を思たのか持ってた杖を投げ捨て魔剣が振り下ろされる前にルイナのもとに駆け寄った。そして思い切り抱き着いた。


「なっ、お前なにをして...離せ」

「離さないよ。あなたを一人にしたくないから」


ルイナは抵抗するが優しくも力強いユウの腕の中から抜け出すことはできなかった。


(なんだろうこの懐かしい感じ…温かくて懐かしい…)


ユウの暖かさに包まれルイナの目から涙が溢れ始めた。それは300年にも渡る孤独という名の檻から解放された瞬間だった。


「あなたはもう一人じゃない、わたしが居るから。一緒に帰ろ」


ルイナの頭を優しく撫でながら話しかけると直ぐに頷いた。

 ユウは腕の中のルイナを離そうよしたが服を強く握られた。


「…もう少しこのままでいたい」


抱きつき涙を流すルイナの頭を撫でながら泣き止むのを待った。


しばらくしてルイナは泣き止んで落ち着いた様子で話し始めた。


「さっきは取り乱してすまなかった。その…お前と一緒に住むという提案を受けようと思う」

「え!ほんとにいいの」

「あぁ」


ルイナは少し照れくさそうに頬を掻いていた。


「そうだこれから一緒に暮らすんだしわたしのことはユウって呼んでねルイナちゃん!あ、それと私の前でくらい素でいてよね」

「わ、わかった努力する」

「それじゃあこれからよろしくねルイナちゃん」


そして二人は館を後にした。外はすっかり陽も落ちていて少し肌寒かった。


「今日のご飯はシチューにしよう。あったかくて美味しいよ」

「ユウ手料理楽しみ」

「ルイナのために最高に美味しいのを作るから待っててね」


そんな何気ない会話をしながら二人は月明かりが照らす道を手を繋いで歩き出した。


そういえば手に持っていたお宝が実はルイナが創り出した偽物だったと知った時は膝から崩れたけど家に着いて二人でたべるシチューはいつもより美味しかった。






 





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