第52話
ゴールデンバードは、何か鎖のようなもので翼や体、足を拘束されている。 そこには何か水晶のようなものがついた装置らしきものがある。
「ゴールデンバード...... 実験体にされたのか」
「でも人間のところにいるゴールデンバードって......」
ぼくはこむぎをみる。
「ああ、こむぎの母親だな」
「早く助けないと! はやくマフトレインさんを探しましょう!」
(マフトレインさんは、蛇に声を伝え逃がした。 ということは多分一人だ......)
「一人でいる人は、あっちか」
奥にある部屋の扉から覗く。 中には白衣の人物が疲れたように座っていた。
「おやじ!」
そういわれてこちらをみる。
「......アスティナ...... いるのか」
「ああ、いま姿を消している」
「その男は...... 確か兵士長」
「ぼくはトール、この城の兵士の姿を魔力で借りています」
「......そうか、そうだ。 ここにゴールデンバードがいる。 先に逃がしてはもらえないか」
「わかっています。 ただどうやってここからだすかですね。 あのゴールデンバードは弱っていますから、壁を壊してもとべるかどうか......」
「魔力吸収の装置だ。 あれを逆流させれば魔力は戻る。 私なら扱える。 ここから出られるかな」
「ええ、まってください」
ぼくは魔晶剣を鍵穴にあて魔力を膨らませる。 そして固めて鍵を開けた。
「おやじ!!」
そうアスティナさんがマフトレインさんにだきついた。
「ああ、心配かけてすまなかった...... でもまずはゴールデンバードだ」
「マフトレインさん、まずこの魔鉱石で分身をつくってください」
「わかった」
分身を部屋にいれ鍵をしめた。
「だれかが下におりてくる! ここじゃマフトレインさんが隠れられない!」
「どうするトール!?」
「そうだ!」
降りてきたのは兵士たちといるみしった人物だ。
(あれはダレス!?)
そう、ガルバインさまの妹、ミネルバさまを洗脳した魔法使いだった。
「......貴様、何をしている。 持ち場ではないだろう」
そうダレスはいった。
「......ええ、不審なものがいたとの報告をうけ、マフトレインをみにきたのです」
「......それで」
「ちゃんといるようです」
「......」
ダレスは部屋のなかを覗く。
「......いるな」
「はい、勘違いのようですな。 しかしもしと言うことがありますので、この場での警護を許可いただきたいのですが」
「......よかろう」
そういうと、ダレスは奥の部屋へとはいっていった。
「ぷはぁ......」
こむぎの羽毛からマフトレインさんが出てきた。 消えているこむぎの羽毛のなかに隠れてもらった。
「助かった。 まさかゴールデンバードのヒナがいるなんて」
マフトレインさんは驚いている。
「ピィ」
「しかし、あれはダレス......」
「ああ、私にモンスターから魔力を奪う研究を命じた。 娘をさらうと脅されて仕方なく協力させられた...... ただわざと実験をおくらせていることがばれてね。 娘を狙うと言われたんだ」
「おやじ、それで協力したのか......」
「ああ、でも、今は早くゴールデンバードのところに、魔力を失って危険な状態のはずだ」
「はい」
ぼくたちはゴールデンバードの部屋にはいる。 すぐにマフトレインさんは装置を操作し始める。
「いま、はずすから」
ゴールデンバードを拘束している金属の枷の鍵を空けていく。
「ピィ......」
ぐったりして座っているゴールデンバードをみて、こむぎはないてそばによっていく。 アスティナさんは回復魔法を試みている。
「ピィ」
「クァ......」
そう声を聞いてゴールデンバードはつぶっていた目を開けた。 姿を現したこむぎをみている。
「クァ...... クァ」
「ピィ、ピィ」
ゴールデンバードとこむぎは、互いになにかを感じ取っているようだ。
「よし、装置を逆に起動した」
大きな魔法珠が光ると、ゴールデンバードの体が光り始めた。
「魔力が逆流しているのか......」
「だれだ!! そこにいるのは!」
そういって兵士が扉をガシガシ動かしている。 ぼくは返してもらった魔鉱石で分身をつくり、扉をおさえていた。
「......なんの騒ぎだ」
ダレスの声がする。
「何者かが、装置を起動しているようなのです! あれはマフトレイン!? なぜここに!」
「なに...... この扉を壊せ」
「はっ!」
「まずい! 早くしないと!!」
「まて! 回復させる! それまでなんとかもたせてくれ!」
アスティナさんとマフトレインさんが回復魔法を使っている。
槍が扉から次々と突き刺される。
ぼくは魔晶剣に魔力をこめ扉を覆う。
「くっ! 頼む! こむぎ!」
「ピィピィーーー」
氷の魔法が魔力と扉を凍りつかせた。
ガキン、ガキンと槍の音がする。
「くそっ! 貫けん!」
(これで、でもゴールデンバードが回復しても、ここから出るのは無理か。 なら壁をぶち破るしかない。 でもどうやって......)
「
(壁をやぶる方法...... どんなかたちなら破れる。
突然ドォン、ドォンと爆発音が響く。 扉の氷がパラパラと落ちている。
「魔法を放ってきた! それほど長くはもたない!」
(いや、これを利用すれば、あと壊すには......)
「クア!!」
ゴールデンバードが立ち上がる。
「よし、魔力は回復した!」
「もうやるしかない! みんな乗って!」
ぼくたちはゴールデンバードに乗る。
「トール! あの壁破れるか!」
「やってみます!
後の扉と複数のネコのヒゲのような棒を壁にあてる。
「どうするつもりだトール!」
「彼らに手伝ってもらいます」
ドォン、ドォン、ドォォン!!
爆発で扉が破壊された衝撃で壁に槍がめり込んだ。
「よし!」
「まて! 貴様ら!」
扉から兵士たちがはいってきた。
「こむぎ!」
「ピィピィィーーー!!!」
「クワァーーー!!」
「ぐ、ぐわっ!!」
「くそっ! 前が!」
兵士たちをこむぎとゴールデンバードの吹雪が吹き飛ばした。
(刺さった魔晶剣に魔力を更に......)
「いけ!! 【猫立毛爆】《ブリッスルボンバー》!」
壁に深々と刺さった槍が一気に逆立った毛のように膨らむと、壁はバーンと弾けとんだ。 外には海がみえた。
「逃がすな!!」
ダレスの声が聞こえると、ゴールデンバードはかけて飛んだ。 そして羽ばたき空へとまいあがった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます