IQ3の俺が転移したら、神になっていた

はぐるま

〜神殺し編〜 序章

 2200年、7月7日。今日は俺の誕生日だ。だが、俺はここ愛咲あいざき学園でいじめを受けていた。この学校の評判はそこまで悪くないし、偏差値も普通だ。

 ここに入学している生徒たちは真面目な人が多い。でも人は見た目で判断してはいけない。見た目が良くても中身はクズだ。


「おら!おら!さっさと立てよバカが!」

「なんも抵抗ていこうしないじゃん、マジウケるんですけどw」

「こいつ、学校イチの馬鹿なんだって」

「え〜?きっしょ」

「お前、死んだ方がいいぜ」

「これ動画撮って、ネットに上げちゃおw」


 ドゴッ!ドゴッ!っと蹴られ、殴られ、罵倒を浴びせられ…俺が何をしたって言うんだ。俺もお前らと同じ人間だぞ?

 ただ頭が悪いという理由なだけで、なんで俺だけこんな目に合わせられる?毎日増えていくアザ…治ってもまた増える。

 俺は助けを呼ばない。理由は他の人を巻き込みたくないからだ。でもこれは表向きの理由。本当は助けを呼んだって誰も来ない。

 俺に友達なんていない。それに先生は前から俺を見捨てている。何をやっても失敗ばかり。進学なんて夢のまた夢。今を生きるのに精一杯だった。

 学校が終わり、俺は家へと帰った。


「はぁ、今日もやられたか…」


 触るとジンジンして痛い。一応、家に怪我を治すやつがいっぱい入ってる箱みたいなやつはあるけど、怪我の治し方とかとか知らない。

 家に帰っても誰も居ない。俺が生まれて2歳の頃、父と母は別れ、俺一人となってしまった。名前も知らない父と母だ。その二人とも、この家にはいない。でも俺には上に姉が二人いる。一歳違いと二歳違いの姉だ。


「今日は遅いのかな?」


 いつもならもう、帰ってきてるはずだけど、多分買い物か仕事だろう。

 ぐぅ〜っと、腹の虫が鳴った。

 俺に昼飯を食べる時間なんてない。毎回アイツらに購買に行かされ、ありがとうの一言も無く、帰ってくる返事は「早くよこせ」などだ。もちろん金は俺から出している。

 弁当もアイツらに勝手に食べられ、荒らされる。中身はいつもぐちゃぐちゃだ。食べる気なんて湧いてこない。


「お腹すいたな…」


 昼から何も食べてないし、アイツらにボコボコにされたし、余計に腹が空く。このままだと餓死してしまいそうだ。冷蔵庫を開けても特に腹の足しになるものはない。炊飯器の中も無い。水なんかで腹が満たされる訳ないだろ。

 特に食べるものがなかった俺は自分の部屋に入った。ベットに横たわり、腹の虫が鳴る。

 俺は人生を諦めようとした。

 こんな人生クソくらえだ。生まれながらの負け組なんて誰が望む?こんな毎日が続くなら死んだ方がマシだ。

 頼む、神様。生まれ変わったら、こんな人生じゃなくてもっと楽できる人生にしてくれ。

 その瞬間……


「ん?」


 部屋の天井に魔法陣が展開された。暗かった部屋が一気に明るくなった。

 あまりにも突然のことでほとんど覚えてない。

 俺が覚えている記憶では魔法陣が展開されて、俺を飲み込んだ。

 そこからは分からない。なにか記憶が飛んだ気がした。



―――――――――――――――――――――――――――



「……ん?ここは?」


 俺は目を開けた。そこには青い空と白い雲。小鳥がさえずり、人の声が聞こえる。倒れ込んでいた俺は立ち上がり、辺りを見る。そこは城下町のような所らしい。目の前に広がるのはとても大きな城。

 だか何かがおかしい。人をよく見るとそれは人でない。耳が長い人、角が生えた人、顔が獣のような人、獣の耳が生えた人……多種多様だ。


「なんだここ?」


 見知らぬ場所、知らない人ばかりだ。でも俺は何故かすぐ鵜呑みにしてしまった。馬鹿だからか?まぁ、いいや。


「少し探検してみるか」


 俺は埃や砂を払い、歩いた。

 なんていい天気なんだ。太陽が煌々と輝いている。逆に眩しいくらいだ……太陽ってそんなもんか。

 俺は右、左とキョロキョロしながら歩いた。


「色々あるな」


 店が多く、飽きない。道も広く、通りやすい。

 よく整備されており、レンガ状の道はとても綺麗だった。人々の表情も明るく歩いてるだけで楽しい。

 俺はある場所で足を止め、見つめた。


「ここは居酒屋?」


 窓から見ると、可愛い女性店員さんが黄色い液体に白い泡が盛ったジョッキを持ち歩いている。あれは多分ビールだろう。

 あれ?確かお酒は18歳からだっけ?あれ、19?……まぁ、どちらにせよ俺はまだ飲めないな。あと、異世界に居酒屋ってあるんだな。

 俺はもう少し探索をした。チラリと見えたが、ここでもお金が使われているな……当たり前か。お金なかったら、千引きだっけ?あれ、万引き?まぁ、どっちでもいいけど、犯罪のやり放題だもんな。

 だが、お金のような物は俺が知っている1円玉や5円玉では無かった。茶色というか銅みたいな平たく丸い物を出していた。他にも銀色や金色もみた。

 そもそも、ここは日本なのか?そもそも…文化って言うんだっけ?今までの日本とは全く違う。


「でっか…」


 俺の家の2〜3倍ほどでかい。俺はまた窓から中を覗いた。これ遠くから見たらやばい人とか思われてないよね!?大丈夫だよね?


「ここは宿屋か?困ったらここで寝泊まりするか…」


 ん?俺は見逃さなかった。お客さんが銅色のメダルをたくさん店員さんの机に出していたことを。

 

「多くね!?」


 軽く10枚は超えてたよな?今の俺じゃ、泊まれねぇ…金ないやつってなんて言うんだっけ?無一むいちマンだっけ?むい…なんだっけ?いや、今はどうでもいい。早く金を集めないと!

 そして、探索をしていると俺はあることをやってしまった。


「やっべ、道迷った」


 ここどこ?

 さっきまでとは全然違う。さっきまでいた所は賑やかで楽しそうな雰囲気だったが、こっちはとても暗い。

 ん?待てよ、これって来た道を戻れば帰れるんじゃね?俺って天才!?…いや、当たり前か。

 俺は来た道を戻った。やっぱ暗いところより賑やかのほうがいいな。うん、この感じよ。うるさくなく、ちょうどいい。

 そう関心していると誰かが俺の肩をポンポンと、優しく叩いてきた。


「あの〜大丈夫ですか?」

「え?」


 後ろを振り返ると俺の後ろには女神の様に美しく、金髪の短い髪に緑の目をした可愛らしい女性が立っていた。なんか鎧みたいなのを着てる?


「何か困っている様に見えたので」


 この人は騎士?鎧には謎のマークがあり、剣を持っていた……このマークって、さっき見てた城のでっかい旗に書いてあったマークだよな。


「だ、大丈夫です」


 どうしよう、頭が回ってない。まぁ、いつもそうだけど。今だけは頭を使わないと、この人を困らせてしまう。えっ…となんて言えばいいんだ?


「何か探してますか?それとも誰か待ってますか?」


 どっちでもない!えっと、今は腹が減ってるな。多分この世界にも食事が出来る店みたいなやつとかあるだろう。飲食店とか!


「えっと、その…お腹が空いてて、でもお金がなくって…困ってて…」

「ゴールドがないんですね…なら、私がご馳走させますよ!」


 まじで!?

 やっとご飯が食べれる。でも、ここのご飯って美味しいのかな?…まぁ、お店だから美味しいんだろうとは思うけど。

 女性騎士と一緒に飲食店へ向かった。


「見たことない服装ですね」

「え?あ、あぁ〜母が作ってくれたんです」

「まぁ!お母様がお作りになられたんですね!とってもお上手です」


 もしかして…異世界って学校ないの!?それはそれで、最高だな…ってか、母の手作り制服ってなんだよ!言って、今気づいたわ!

 そんな他愛もない会話をしていると、到着した。女性騎士からは気にせず食べてくださいとのこと。なんかちょっと食べづらいけど、お腹が空いた!


「い、いただきます」

「はい、召し上がってください」


 ふぅ〜食べた、食べた。こっちのご飯も美味しいな。でも無料で食べていいなんて…優しい人で良かった〜


「他に困っていることはありませんか?」

「えっ…と、その…俺迷子なんです…」


 クソ…情けねぇ!俺、高校生にもなって、迷子になるなんて…


「なら、城で保護しますね」

「あっ、はい…はい!?」


 し、城で保護!?なに、迷子センターみたいなのがあるの!?小さい子供達の中に俺が来たら、小さい子たちびっくりするだろ!



―――――――――――――――――――――――――――



 俺と女性は城に向かった。城の中はとても綺麗だ。白を基調とし、縦のラインに青が入っている。城の柱にはたくさんの旗が飾ってあり、豪華だ。

 両サイドには隣の女性と同じ鎧、同じマークがついた鎧と盾を持ってる騎士がたくさん並んでいた。

 奥の額縁に絵が飾ってある。多分歴代の王様の絵なのかな?


「シューダ・ハイラス、ただいま帰ってまいりました。王国内で迷い子を見つけ、連れてまいりました」


 女性の名はシューダ・ハイラスというらしい。シューダさんは王様に向けて、片足でひざまずいた。胸に右手を当て、顔を下に向けた。

 あっ、これって俺もやった方がいいやつ?俺もシューダさんを真似て、跪いた。うっ…この体制きっっつ…


「表を上げよ、二人とも」

「はっ」

「…は、はっ」


 お、表?俺の右にいたシューダさんが顔を上げた。あっ、顔を上げろって意味なのね。…じゃあ、そう言えよ!紛らわしいなぁ。


「右の者よ、名を何と申す?」


 右?俺の右にはシューダさんしかいないけど?…あっ、王様から見て右ってこと?そうか!だからシューダさんは名前を聞いてきたのか!



数時間前



「城に行く前に貴方の名前を教えてもらいますか?」

「名前ですか?」

「はい」

「えっと…」

 

 あれ?俺の名前…俺の名前ってなんだ?名前だけは覚えてろって姉ちゃんに言われてたのに!


「あの〜大丈夫ですか?どこか具合が悪いとか?」

「分からないです」

「分からない?」

「はい、俺の名前は……」


 分からない。思い出せない、俺はなんだ?何故なぜ分からないんだ!なんで出てこないんだ…?くっそ、思い出せ!俺の名前は……名前は…


「……思い出せないです…」

「そう…ですか」


 すまない気持ちがあるな…もしかして、あの魔法陣の衝撃で忘れた!?そんな馬鹿な…ことないよな?

 その時、女性が口を開いた。


「ん〜なら、私が付けましょうか?」


 おぉ、ありがたい。名前がなかったら、俺、多分人間じゃないな、てか生き物ですらないからな。名前がないとこんなに不便なんだな。

 う〜ん、未だに名前が出てこない。一文字も出てこない。苗字すら分からない。

 そう思っていると、女性が名前を決めてくれた。


「よし!レルア!今日からあなたはレルア・カミアスです」

「は、はい!」



現在



「レ、レルア・カミアスです」

「レルア・カミアスか…ふむ、ここ一帯ではあまり見ない顔つきだな。遠くから来た旅人か?」


 旅人?まぁ、ここはうん、と言っておこう。なんか怪しまれそうだし。その後、王様と迷子になった経緯やどこで迷子になったなどを詳しく説明した。城には迷子センターのようなものはなかった。

 俺は王様とのやりとりを終え、シューダさんからこの王国の地図をもらった。これで道には迷わないとのこと。


「これで大丈夫ですね」

「はい、ありがとうございます」


 ここはクレキス王国というらしい。クレキス王国は他の王国と比べ…領地だっけ?まぁ、とにかく土地が広いらしく、毎年迷子になる人がいるらしい。だから、あの時すぐ言ってくれたのか。

 えっと、地図をもらったはいいが…俺、地図の見方わかんないんだな。地図を回したり、右から見たり、左から見たり、裏から、上下逆さまにしたりした。

 

「ど、どう見ればいいんだ?こうか?こう?」

「この向きで固定ですね」


 あっ、こうなのね。


「では、私はこの辺りで。また何かございましたら、私と同じ鎧を着ている騎士がいますので、お声かけください」


 あぁ、行ってしまう。俺はまだ聞きたいことが山ほどある。俺は去っていくシューダさんの手を掴んだ。


「あ、あの!俺まだ聞きたいことがあって」

「は、はい!」


 シューダさんは急いで振り返った。


「えっと、クレキス王国って言うんですよね?俺、初めて聞いて…ここのことまだ知らなくって」


 俺はシューダさんからクレキス王国の事を聞いた。


「わかりました、なら教えましょう。ここはクレキス王国。それは昔、「南ノ国」ことアルパイス帝国との戦争。その名も帝王対国戦争ていおうたいこくせんそう。その戦争で圧倒的に勝った国です。まぁ、昔と言っても、約1000年ほど前ですけどね」


 へぇ〜…ん?1000年前?…あれ?今って何年だ?


「今って何年ですか?」

「今は3200年ですね」


 3200年!?

 いやいやと思いながら、俺は横目で大きな看板を見た。そこにはデカい地図が貼ってあった。

 これは多分世界地図だろう。俺はその看板に走った。


(これって北海海?)


 でもなんか少なくね?北海道の下ってなんか長いのあったよな?えっ…となんだっけ?本…本なんとかだった気がする。

 それがあったであろうところは、あるで陥没したようになっていた。


「なんだこれ…」

「どうかしましたか?」

「これって北海道ですか?」

「北海道は昔の言い方ですね。今はノーズラインと言います」


 ノーズ…ライン?勉強についていけてない俺でもわかる。そんな言葉聞いた事ない。それに俺が知ってる北海道とは形も少し違う。なんかデカくね?唯一知ってるオーストラリアと同じくらいの大きさだ。

 その時、シューダさんはある事に気づきた。


「そういえば、何も持ってないですね」

「え?」


 確かに俺は今、ただの学生服だ。ポケットに手を入れても何も入ってない。


「私が何か買ってあげましょうか?」

「本当ですか!?」


 なんて優しい人なんだ。俺は看板のことなんてすっかり忘れて、シューダさんに着いて行った。

 あっ、さっき飲食店だ。飲食店を通り過ぎ、左を曲がるとそこには武器屋らしいものがあった。


此処ここは武器屋です」


 武器屋に着いた。店内にはそこら中に剣や盾、槍などが飾ってあった。中にはハンマーや斧、鎌など色々置いてあった。

 だが俺はある剣に目が付いた。


「いらっしゃい、シューダちゃん…ん?そっちのあんちゃんは?」

「あっ、レルア・カミアスと言います」


 俺はぺこりと礼をした。俺でもさすがに礼儀は知ってる。挨拶をしたら、礼をする。基本中の基本だな。


「おう、見てってくれよ」


 俺がさっきから気になっている剣に近づくと視界にサークルが現れ、剣に標準が合わさった。その剣の名はブラッティソードというらしい。

 名前からして黒い剣だ。剣の持ち手は赤く、どこか厨二心をくすぐられそうだ。そしてやいばは黒く輝き、カッコいい。形は日本刀みたいに少しだけ反っている。


「どれぐらいだろう?」

 


ブラッティソード 10金貨



 いや、高すぎん?金貨って多分結構レアだよな?俺が一人でクレキス王国を探索してた時も金貨を出してた人はあまりいなかった。それに金貨って……名前からしてすごそうだ。


あんちゃん…そいつぁ、やめときな」

「え?」

「そいつぁ、別名呪いの剣つぅ異名があるんだ」


 呪いの剣?確かに見た目から禍々しいけど、でもなんか気になる。こう…なんと言うか…変な気分だ。


「なんで呪いの剣なんですか?」

「昔の言い伝えでな、その剣を握ったものは一夜にして謎の死を遂げるって言われてんだ」

 

 謎の死?


「その謎の死が呪いの正体なんですか?」

「分からんが、俺はそうだと思ってるぞ」


 よく分からないが…でもこれがすごく気になる!他の剣もカッコよくていいんだけど…そもそもなんでここにあるんだ!?


「本当にそれにするんですか?」

「確かに死ぬのは怖いですけど、この剣がどうしても気になるんです!」

「そう…なんですね」


 シューダさんが少し悲しそうに言った。


「本当にこれにするのか!?どうなっても知らねぇぞ?」

「はい、覚悟は出来てます」


 買ってしまった…それもお金を出したのはシューダさん…俺、クズ野郎だな…俺は明日死んでしまうのかな?でも俺はこの剣が気になって買ったんだ!…まぁ、買ってくれたのシューダさんだけど。

 俺たちは武器屋を出て、シューダさんから品を貰った。



ブラッティソードを手に入れました。



「ん〜あと防具かな?」


 防具か…俺はあまり身体のトレーニングとかしてないからな、鎧とかだと動かないかもしれない。


「あの、防具だと重いのでなんか服とか無いですか?」

「なら、此処こことかどうですか?」


 案内した場所は、防具屋だが服も置いてある。色んな物が売ってるな。中には仮面など置いてあった。アクセサリーやら雑貨屋みたいだ。

 そこで白いパーカーに目が入った。結構カッコいいと思う。私服でも白いパーカーは持ってたから着慣れている。左の肩辺りに小さくだがこの王国のマークが記されてる。



ホワイトクロウズを手に入れました



「今日は、ありがとうございました」

「いえいえ、良いんですよ」


 シューダさんまじ女神か?

 今日はシューダさんに色々買ってもらった。なんか申し訳ないな……でもこれで少しは強くなったのかもしれない。これでこの世界でも生きていけるかもな…

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