悪魔ちゃん的深夜飯

妖魏識 コヨミ

第一夜 多脂質ウインナーと背徳おにぎり

午後23時。会社の飲み会帰りの私、クロス•ペナ•スタンタスこと、竹内花子たけうちはなこは玄関に立ち尽くし、こうつぶやいた。


「腹……減った……」


今日は22時まで残業して仕事は終わらなかったし、いざ帰ろうと時間を見れば会社を出た頃にはもう終電過ぎてたし、タクシー拾って乗ったら乗ったで遠回りされて余計に運賃払ったしぃ……!


「ああぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!ほんっっっっっと人間社会ってムカつくことばっか!」


私は許さない。こんなストレスの多い人間社会にやってきた昔の私を、私は許さない。と、思いながら頭を掻きむしる。

しかし、怒りで忘れていたが13時以降私は何一つとして口にしていない。私の腹はそれを思い出したかのようにぐううぅぅ、と大きな音を立てて空腹とゆうことを私に知らせた。


「うっ……お腹空いた……でも疲れたぁ゙……眠いぃ゙……冷蔵庫なんかあったっけ……」


私は冷蔵庫に向かいパカッと冷蔵庫を開ける……


「あ……結構前に買ったクソデカ唐揚げおにぎりだ。確かこれ3つくらい買って、1個は遅刻しそうだった時に食べてそれ以降忘れてずっと放置してたのね。」


私はおにぎりを2つ手に取り電子レンジの中にぶち込む。そして私はまた亡霊のように冷蔵庫を隅々まで漁る。


「ん?なにこれ……チンしてできるウインナー?…………あー、私もちょっときれいめなお弁当作りとかやろうかなって思って買ったやつね……」

(まあ、一回作って面倒くさかったからそれ以降使って無いんだけどね……)


消費期限も近いし全部使っちゃおと、一回ぶち込んだおにぎりを取り出しウインナーと共に皿に乗っけてレンチンを始めた。


―――――――――――――――――――――


「うおぉ……」


私の眼の前にある巨大な皿に乗っかった唐揚げの油が溢れ出しそうなツヤツヤとした米の大きな握り飯。それを囲うように、大量の小さなウインナーの海が広がっている。

この圧巻とした姿に、私はよだれが止まらない。


「おいおい……!レンチンしただけでこんなうまそうに見えるのバグだろぉ……!」


こうしちゃいられない。私はこの皿に浮かんだ宝島を机に持っていくことはせず、台所にドンッと置き、そして、箸とキンキンに冷えたビールを取り出して


「いただきまs、ガブゥゥ゙ゥ゙ゥ゙!!」


と、感謝の言葉を言い終わる前に手に構えたおにぎりにかぶりつく。


「?!????!!!!?!」


かぶりついた瞬間、私に電流走る。

口の中に広がる肉汁。米と共に潰れるサクサクの衣。


(ん〜〜〜!これだよ、これ!チョーシンプルな唐揚げの味!あの時は遅刻スレスレで走りながら食べてたから味に集中してなかったからわかんなかったけど、めちゃくちゃうめぇなこれ!)


私は恍惚な表情を浮かべ大きなおにぎりを1口で食べてしまうような大口で貪る。


「さーて、ウインナーもいただきますかね〜〜!」


おにぎりを1つ食べ終えた私は右手に箸を持ち、ウインナーをウインナーを掴み、口に咥える。


パリッッ!


冷凍のものとは思えない音が聞こえた。まるで新鮮そのもの。肉の味が熱と共に口内に広がる。


(うんめぇぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!これホントに冷凍?!お店みたいな味するんだけど?!噛めば噛むほど脂が舌を包み込む……!飲み込めば粉々になった肉と脂が疲れた喉を潤す!まぢ最高ぅぅ!)


そう。それはまさに言葉で表すならジューシー。その一言に限る。あぁ!なんて素晴らしい響なのか!引き締まった皮の中にある肉と脂のハーモニー!それをジューシーと言わずなんと言うか!そして私はすかさずビール缶を開け、ビールを一気に流し込む。


「むごっ……んごっ…………プヘェェぇぇ゛ぇ゛…………まぁじさいこー」


ストレスが溜まった体がビールの泡に流され、一気に癒える音がした。人間世界に来てたからストレスが多い生活をしてきたが、この深夜にいただく背徳なご飯はいつまで経っても辞められない。


「ふふ〜〜ん♪このおにぎりの上にウインナーぶっ刺して〜〜♪ごま油をこれでもかっ!と、ぶっかければ〜……じゃじゃーん!超背徳スーパー脂質おにぎりかんせー!そんじゃいただきま〜す!あーーむ。」


これまた最高の逸品。ごまの芳醇ほうじゅんな香りが鶏肉と豚肉を混ぜ合わせ、味が鼻から通り抜けてゆく。この香りこそもこの背徳飯の醍醐味だいごみであると私は考えている。


「美味すぎぃぃぃ!さっっすが私!このウインナーもったいないし、ツノにぶっ刺しておこーっと!えへへ〜!怪獣ウインナーデビル〜!なんちて。」


私はそんなふざけたことをしながら、口内に残っている香りはビールで胃に洗い流す!


「ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛。うんめぇなぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!こんな飯、あっちの世界じゃ食べれねぇやぁ。」


現在時刻午前1時28分。ビールの缶は6本に増えていた。こんな時間にこのような食事をとることに、脳は否定し、明日のことを考えさせようとするが、疲れた心とポッカリと空いた胃はそれを許さない。明日のことなど、明日の私にやらせれば良い。今は目の前にある報酬に目を向けようじゃないか。

そして私はガツガツと止まることはなく、皿の上の宝を胃という名の宝箱にしまった。


「んごっ……んごっ……ぷはぁ。ゲェェェプ。ふへへ。どんな美女が汚ねぇゲップしようと、今は私一人だからし放題だもんね〜わら


今日の出来事もあってか酔いが素早く回ってしまったようだ。1人とはいえ、だいぶ下品なゲップをかましてしまった。(美女なのに)


「あ〜シャワー浴びなきゃあぁ〜。ふふふ〜ん♪」


と、シャワー室に向かおうと1歩踏み出した瞬間。


「あぎゃっっ!」


自分の足につまづき転んでしまった。


「……いって〜なぁコノヤロー!…………くかー………」


……どうやら眠ってしまったようだ。しかし、これで後悔するのは明日の私だろう。だが、明日の私は明日の私だ。どうにかなるだろう。


────────────────────


「……んっ、アレ?なんで私こんなとこで寝て……ハッ!待って!昨日転んでそのまま寝ちゃった?!も〜やらかしたァ……」


と、昨日の自分の行動に後悔する私。重い目を擦りながら自分の体を起こす。この後私は昨日浴びそこねたシャワーを呑気に浴びに行こうとする……時計を見るまではね。


「てか今何時…………えっ?8時15分?……は?!8時15分!?やばいやばい!また遅刻じゃん!とりあえず上司に連絡を……ってうわぁぁぁぁぁ!スマホ充電切れてるぅぅぅ!」


私は一気に目が覚める。シャワーなんか浴びてる時間はないので、苦し紛れに香水を吹きかけ、乱れた髪を何とか整え、昨日の化粧を落とし、スッピンのまま家を出た。


(うわぁぁぁぁぁ!昨日の私なにやってんのよぉぉ!)


と、涙目になりながら電車に間に合うように全力で走る。こりゃまたストレスが溜まりそうな1日になりそうね。






-------------おまけ---------------


「はい。では、この資料でお願いします。失礼します。」


と、きちんとしたOLである私はきちんと仕事をこなし、きちんと後輩達に超絶美女優しすぎ悪魔先輩であるとゆうことを見せつけてゆく。


「……あの〜先輩?花子先輩。」


「ん?何?樹奈子きなこちゃん。どうしたの?」


何故か不思議そうな顔をして話しかけてきたのは同じ会社の後輩、小泉樹奈子こいずみきなこちゃん。


「ずっと気になってたんですけど……そのツノ……」


「あぁ、このツノ?このツノはね。悪魔特有の魔力を探る装置みたいなものよ!」


と、自慢げに自分のツノの話をするが、樹奈子ちゃんは「いや……」といい、ツノの先っちょを指さした。


「そのツノに刺さってるはなんかのオシャレですか?」


「…………」


私は昨日ふざけてウインナーをツノにぶっ刺したことを思い出し、そういえば電車でも街中でもなんか人目が気になるなぁ〜と思い返し、何故鏡を見た時に気づかなかったのだろうかと思い、恥ずか死んだ。









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