第8話 不正の兆し

朝の会議室は緊張感に包まれていた。真田剛は、吉川奈緒、高橋勇人、そして川上智也と共に、内部調査の結果を精査していた。テーブルには調査報告書が並べられ、その中には複数のスタッフが不正行為に関与している証拠が含まれていた。


「この結果を見てください。」川上が報告書を指し示す。「複数のスタッフが収賄や情報漏洩に関与していることが明らかになりました。」


吉川が眉をひそめる。「これは深刻ですね。早急に対応しなければなりません。」


「まずは関与したスタッフを特定し、事情を聞く必要があります。」真田が力強く言う。「パークの信用を守るためには、迅速かつ徹底的に対処しなければなりません。」


その日の午後、真田は関与が疑われるスタッフたちを個別に呼び出し、事情を聴き始めた。最初に呼ばれたのは、施設管理部の田中であった。彼は落ち着かない様子で椅子に座り、真田の質問に答えていた。


「田中さん、最近あなたが不正行為に関与しているという報告があります。」真田が静かに問いかける。「これについて何か説明できますか?」


田中は一瞬躊躇した後、うつむいて答えた。「私は何も知りません。本当に何も。」


「ここに証拠があります。」真田は机の上に証拠の一部を広げた。「あなたが収賄を受け取った記録です。」


田中の顔色が変わり、しばらく沈黙した後、彼はしぶしぶ口を開いた。「...わかりました。認めます。でも、私は指示されただけです。もっと上の人が関与しています。」


「もっと上の人?」真田は眉をひそめた。「具体的には誰ですか?」


田中は再び黙り込んだが、やがて震える声で名前を挙げた。「...中村課長です。彼が全てを仕切っていました。」


真田はすぐに中村課長を呼び出し、彼に対する疑惑について問いただした。中村は最初は否定したが、証拠が次々と提示されると、ついに観念して全てを白状した。


「はい、私が指示しました。」中村はうつむきながら言った。「パークの利益を上げるためには、手段を選ばないことが必要だと思っていました。」


「あなたの行為は、パーク全体の信用を失墜させるものでした。」真田は冷静に言った。「責任を取っていただきます。」


中村は静かに頷き、その後、彼と関与したスタッフたちは解雇された。パーク内では厳重な管理体制が敷かれ、再発防止のための対策が講じられた。


その後、真田はスタッフ全員を集め、パークの再生に向けた新たなプロジェクトの発表を行った。吉川奈緒が提案した季節ごとの大規模イベントが正式に始動することとなった。


「皆さん、これからのファンタジーワールドは、年間を通じて訪れる人々に新しい体験を提供します。」真田は力強く宣言した。「春の桜フェスティバル、夏のナイトプールパーティー、秋のハロウィンホラーナイト、冬のクリスマスマーケット。これらのイベントを通じて、私たちのパークを再び輝かせましょう。」


スタッフたちはその言葉に歓声を上げ、全員が新たな挑戦に向けて一丸となることを誓った。


夜が更ける頃、真田はオフィスに戻り、一日の出来事を振り返っていた。川上智也が入ってきて、静かに話し始めた。


「真田さん、内部の不正は解決しましたが、まだ注意が必要です。競合企業が背後で暗躍している可能性があります。」


「競合企業?」真田は眉をひそめた。「彼らが何を企んでいるのですか?」


川上は深く考え込みながら答えた。「パークの評判を落とし、自社の利益を増やすために、様々な手段を講じているようです。これからも警戒を怠らないようにしましょう。」


真田はその言葉に強く頷き、決意を新たにした。「ファンタジーワールドを守るために、全力を尽くします。」


真田の目には新たな挑戦に向けた情熱が燃え続けていた。パークの未来を守るための戦いはまだ始まったばかりだった。

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