同化④
目視で確認できる範囲にキラーはいた。
だが時折振り返りながら余裕の笑みでヘルを確認している様子から、この距離を追いついてごらんと嘲笑っているように見えた。
(もっとだ。もっと早く動け俺の足!)
いつもは自慢の脚力もこんなところで力を発揮しないと意味がない。
そもそも、こうして他の死神につけ込まれる自分が全ての元凶。
生前深く関わった人間と接触してはいけない暗黙の掟は、こういうことを防ぐためにもあるのではないだろうか。
(悔しい。全部全部俺のせいじゃないか)
全力で走っているのにも関わらず、なかなか追いつくことが出来ない。少しの時間も惜しい。目的地はわかっているため、あえて追いかける道を捨てて近道を選択したい。
だけどその選択をするということは、キラーの様子が一切わからなくなるということ。
見ていない間に更なる被害が出てしまったら?
とにかく走ってキラーとの距離を縮める他なかった。
しばらくただがむしゃらに走った。
もう少しで春日家に続く十字路に差し掛かるというところで左側の道から誰かが飛び出してくる姿が見えた。
ここまで誰一人として人間に合わなかったことを幸運に思った矢先だった。
薄暗くてもはっきりと見えるよく見知った顔だった。
(待て。嘘だろ。なんでだよ……結衣)
彼女はこちらに気づくことなく、ヘルたちに後ろを姿をみせて帰路へと向かっていた。
ダメだ、間に合わない。
こんなの、いやだ。いやだ、いやだ。
失ってなるものか。
こんな理不尽なことあってたまるか。
「結衣!」
名前を呼ばれた結衣は後ろを振り返る。
キラーがすぐそこまで迫ってきていることを認識すると目を見開く姿が見えた。
その後はもうキラーの背中しか見えなかった。キラーが大きく振りかぶったからだ。
「破壊された魂は回収して修復されるようだけど、まあ肉体は無くなるし実質死亡ね」
メアリーは死んだ三十代男性のことをこう言っていた。
こんなところで失ってなるものか。
ただ、君を守りたい。死なせたくないんだ。
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