第六章 同化
同化①
ビーッビーッと耳障りな警告音が鳴り響いたと思えば、一瞬のうちにヘルの景色を変えた。
先程までいた薄暗い部屋とは打って変わり、目の前に広がるは見覚えのある人間界の少し賑わっている電車の駅改札口前。そこにヘルは立たされていた。外は明るい。目の前で行き交う人々。
そこには同じように集められた複数名の黒い人。それが自分と同じ死神たちだと気づくまで少し時間を要した。他の死神たちも何のためにここに集められているのかわかっていない様子で、ざわざわと疑問を口にするものも多い。
ヘルもこういった自体は今回が初めてなのでこれから何が始まるのか、ただ静かに時を待った。
そして程なくしてどこからともなく声が聞こえた。
『静粛に』
直接脳に響く聞き覚えのある少年の声は死神を総べる長の声だとすぐさま理解する。
ざわざわと騒がしかった死神たちは全員口を閉ざし、長であるミガニシの言葉を待った。
『各員に告ぐ。特急任務C233エリア。《想定外の死》が発生。直ちに対象の死神、キラーを捕縛せよ』
そう言い終わると脳内に響く声は長から別のものへ切り替る。
『ヘルはメアリーと共にC233-2をお願いします』
アイの声だ。だがそれも一言命令するとその後は何も聞こえなくなった。
そしてどうやら周りにいた死神たちにも命令が下ったようでぞろぞろと移動を始める。そうしてその場に残ったのはヘルといつの間にか隣に立っていたメアリーだけとなった。
「よろしく頼むね、ヘルくん」
「よろしくお願いします」
「君、この任務初めてだっけ?」
「はい。特急任務は初めてで」
「…………なんだかこの会話、既視感を感じるね」
実はヘルもメアリーと同じことを思っていた。殺人処理部に所属して最初の任務。今でも鮮明に思い出せる忘れられない殺人鬼の魂狩り。
何人もの人を殺して最終的に自殺をしたあの魂は、死んだ後もずっと『殺してやる』と殺意に満ちていた。
ヘル自身もその殺意に飲み込まれ、まるでその場に縫い付けられたかのように足が動かなくなり、そのあと何時間もかかってようやく帰ってこれたことを思い出す。
吉良響也の魂狩りは酷い任務だった。
「キラー捕縛、よろしくね」
なんの因果だろうか。今回の対象死神はあの時の人間だった。
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