普通

@marine1111

第1話 

「普通」という言葉があまり好きではない。

普通とはなにか、その人個人の価値観によって形成されている物差しに過ぎないと感じるからだ。

昔から普通という言葉に嫌悪感を抱いていたわけではない。僕は幼い頃は普通に憧れていたのだ。


生まれてすぐ、ADHDと診断された僕は、相手に言葉で何かを伝えることが苦手だった。友達と遊んだり、話したりするがすぐに喧嘩になり、口より手を先に出してしまう子だった。その結果、友達はいないし母親は周りの母親や先生から陰口や嫌味を受けていた。幼い時から喧嘩っ早い子だったため、小学校に入学後は特別学級という、みんなとは別の教室で授業内容も特殊な所で過ごしていた。

授業では、6教科に加え、生活という授業があった。この授業は畑を耕して野菜を作ったり、お花を育てたり、とにかく自然に触れる授業だった。

その学級で5年間過ごしていた。その頃には手を出すこともなく、相手に言葉で伝えることができていた。


小学6年生になる前に、母親から進路のことを

話された。

「このまま特別学級だと、中学高校と特別な学校に通うことになる。そうなると、元には戻れない」と、伝えられた。

その頃には僕と周りの違いにはすでに気づいていた。その後、母続けて「でも、中学受験してこの中学に行けば、みんなと同じになれる」と伝えられた。僕は元に戻れないってどういうことかあまり理解できなかったが幼いなりにどちらか選択しないといけないことはわかっていた。僕自身、みんなとは違う環境で育ったことから同世代の子と同じように授業を受けて、おしゃべりしたり遊んだりしたい。

小学生の5年間の中で僕は気づかない内に、普通になりたいという憧れを抱いていた。

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