第5話 生命魔力と技巧魔力
私は魔法を撃った自分の手の平を見る。
この体で、この手で、私が......魔法を使ったんだな。
感動のあまり手も震えて......違う、これやけどだ。痛い......
手の痛みに悶えていると、キリエナが遠くから駆け寄ってきた。
「す、すごいですね。『
「えっ、やったー、......じゃなくて! 結局魔法使えるんじゃん!! 魔力が無いって嘘だったの?! ていうか嘘であってくれ!!」
「い、いえ、嘘なんてついてません!! えっと、そうですね......何から説明すればいいのやら......まず、人間の体には二種類の魔力が宿っているんですよ」
「魔力が......二種類?」
「ひとつが『生命魔力』。魔法と言っても、臓器や骨と同様、人体を構成する大事な要素のひとつです。そして、もうひとつが『技巧魔力』。こちらは、魔法を使う際に消費される魔力ですが......見た感じレイナさんは、この技巧魔力の方が全く無いんですよ」
全く無い......全く......
その言葉に、私は再度ショックを受ける。
「な、なるほど......この世界では生きるのに魔力が必要で......私はその生命魔力とやらは持ってるけど、魔法を使うのに必要な技巧魔力が無いってわけね......えっ、じゃあ魔法は使えないはずじゃないの?」
「そこなんですよ!」
彼女が声を張り上げる。
「さっき、レイナさんが魔法を使う時に魔力を注意深く見ていたら、微量ではありますが、『魔力拡散』がしっかり起きていたんです!!」
「ま、魔力拡散......??」
知らない単語が次から次へと......しかしそういう単語、嫌いじゃないぞぉ~
「魔力拡散は、魔法を使う際に体外に消費された魔力が抜け出ることを言うんです。つまり、それが観測できたってことは......」
「......魔力を使用している、ってこと? 魔力が無いのに??」
「技巧魔力が無いのに、体の中の魔力を消費している。そこから導き出される答えはひとつです。つまり......」
「レイナさんは、生命魔力を消費して魔法を使用している、ということになります」
......沈黙する二人の間を風が通り抜ける。
話を聞く限り、MPが無い代わりにHPを消費して魔法が使えるってことだろうか。
「......その、生命魔力が消費されるとどうなるの?」
「細胞と同様に、常に少しづつ新たな魔力に入れ変わっていくので、少量を消費する分には問題ありませんが......一気に削れてしまえば、その部分はとても傷ついてしまいます。本来、大量に消費されるものではないので......」
へぇ、結構この世界って科学や医療が発展してるんだなぁ......
待て、今すべきことは現実逃避ではない。
「それって......えっと、特別な力、とかではない?」
「特別というより、ヤバイです。前代未聞ですよ! 私の考えが正しければ、レイナさんは魔法を使う度に生命魔力を消費するので......」
そこで私は気づいてしまった。
そうか! 生命魔力を消費するってことは......!?
「もしかして......あんまり魔法を連発できないってこと?!」
「はい......はい? いや違いますよ!? っていうかそこじゃないでしょ?!」
「おいマジかよぉ......連射できないのかよぉ......ん? もしかして強い魔法も扱えないの!? そ、そりゃ困る......」
「だからそこじゃないでしょ!! 魔法を使う度に体が傷ついていくんですよ!? 最悪死ぬ可能性だって......」
「え? まぁ確かにそりゃ不便だな......でも、魔法は使えるんでしょ? だったら、それは問題じゃないかな。ところで魔力の消費を抑える修行とかってあったりする? 色々と工夫しないとなぁ......」
「聞いてましたか?! し、死んじゃうんですよ?!」
「え? うん、分かったって。使い過ぎないように注意するよ」
その時、キリエナは形容し難い気味の悪さを感じた。
彼女の顔には一切の恐怖がない。
もしかしたら、この人は「魔法が使えるのなら死んだってかまわない」、と本気で思っているのだろうか......と。
何処かも分からない世界に飛ばされて、あまつさえ死の危険性があると言われているのに......
一体、何がこの人をそうまでさせるのか、元の世界で何があったのか......
......それを質問するのは、また今度にしようとキリエナは決めた。
「それにしても......レイナさん、魔力が無いこと以外は凄く優秀ですよ? 魔法を撃つ時の基礎的な部分はほとんど完璧です。威力の調節と距離の調整については、まだまだ練習が必要ですが......」
「それは嬉しいけど......そうか、どんだけ頑張っても「魔力が無い」って言われ続けるのか......なんか嫌だな、それ」
「実際、すごく不利にはなると思うので......仕方ないと思います」
「まじか......魔力無くても戦えるかな」
「魔法自体は使えるので、激しい戦闘をしなければ............」
素晴らしき魔法ライフを送るために頭を働かせていたその時。
......突如として夜になった。
いや、正しくは玲奈達の頭上、空に大きな物体が浮かんでいた。
巨大な鳥? 雲? 島? ......城?
違う、あれは......
「戦艦......?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます