第42話 はぁ?杖職人になりたい?異世界の力満載の超強い杖とか特に欲していないのですが?②

□エラルド


まったくユフィのやつ。


せっかくこの僕が性能抜群で、見た目もキラキラしててカッコいい超凄い杖を作ってレオンに『ぱぱぱぱ、キャッコいい!』って言われようと思ったのに、なんで邪魔をするんだ。


きっと僕に憧れと尊敬の篭った視線を向けてくるであろうレオンの頭をわしゃわしゃ撫でて、高い高いして、抱っこしてスリスリしてほっぺにチューするつもりだったのにぃ!


しかし甘いなユフィ。


僕の手にかかれば、君がアーゼンベルク公爵家に依頼して作成する杖の依頼先を僕にすることなんか容易い。



と思ったのに、公爵家で仲良くしている侍女が言うには、依頼先は厳重に管理されていて、依頼前にも後にも確認が入るとのこと……そこに入り込むのは無理だった。


くそぅ!



こうなったら輸送の合間ですり替えてやる……。


どうしようか考えていたら、ふと思い浮かんだ。なんて良い方法なんだ。


自分の頭の良さにびっくりするな。

ではまず杖を用意しよう。


何を隠そう、僕は既に魔導具職人だからな。

素材もアイテムボックスの中に異世界のものがたくさんある。


適当に組み合わせてっと。


おっと忘れるところだった。


以前開発した対象者に好意を抱く機構をちゃんと入れ込まないといけない。


これでよし。


完璧だ。



あとは前に聞き出したレオンが大好きな青色をベースとして色をつけて、装飾もしてっと。完璧だ!



あとは渡すタイミングだが、これは慎重に考えないといけない。異世界のアイテムだと魔法契約が誤解したら渡すのを阻止されてしまうからな。


でも心配はいらない。あの魔法契約を解析したところ、相手がそれと理解していない状態で渡すのがいけないんだ。


だったら先にレオンに説明しておこう。


「レオン、パパが超カッコいい杖をあげるからな!」

「ぱぱぱぱ♪」


うんうん、明らかに喜んでいる。なんて可愛い笑顔なんだ。僕からこの笑顔を奪うなんて、酷いぞユフィ!


いけない。脱線してしまった。ちゃんと計画を伝えておかないと失敗するとまずいからな。


「だけど、そのためにはレオンにやってもらうことがあるんだ」

「ぱぱぱぱ? なんでちゅか?」

うん、えらい。えらいぞ。ちゃんとお話が聞けるなんて。これはやはりレオンも凄い杖に興味があるんだな。


「ママが杖をプレゼントしてくれようとする時にな……」

「ママ、すごいつえくりぇるの? わーい」

くっ、可愛すぎる……。だが、違うんだ。その杖は凄いかもしれないが超凄くはないんだ。


「その時に僕を呼び出してほしいんだ」

「ぱぱぱぱ、よびゅ~?」

「あぁ。そうしたらパパがママのくれる杖と超凄い杖を差し替えるからな」

「???」

疑問を浮かべるレオンもかわいい。


「理由は置いておいて、そうすればきっとパパの超凄い杖も、ママの凄い杖も、どっちもレオンのものだからな」

「おぉ~!? どっちもれおんの? うぉ~」


うんうん。ユフィは僕のやったことに気づいたとしても、きっと自分が用意した杖もレオンにあげるだろうからな。


「よし、じゃあ練習しよう。僕がこの枝を杖に見立てて渡そうとするからそのタイミングでユフィとレオンの間に僕を召喚するんだ」

「うん! とりゃー!」

実際には僕が杖を渡すユフィ役をしているから、僕は自分の腕があった場所に出現し、落ちかけている枝を受け止める。


そして超凄い杖に差し替える。


それをそのままレオンに渡した。


「すっぎょい!! ぱぱぱぱ、すぎょい!」


完璧だ。

ちゃんと渡せたぞ!



これで準備万端だ。

あとはユフィがアーゼンベルク公爵家に依頼した杖が出来上がってそれをレオンに渡すのを待てばいい。


召喚してもらえるならそのとき何をしていても問題ないから、僕は愛しのエルデリーゼのところにでも行って来るとしよう。







□ユフィ


ようやく杖ができあがり、クルスローデン伯爵家に届けられました。

完成した杖はとても美しい仕上がりです。


「旦那様の動向が気になりますが……」

「どうやら公爵家からの依頼先として自分に話が来るように動こうとしたようですが、無理だとわかって諦めたようですわ」

「そんなに簡単に諦めるでしょうか?」

「わかりませんが、何も考えずに愛人の家に行っているようですから、今のうちに渡してしまいましょう」


そうしてちょっとだけお部屋の模様替えをしてレオンを呼び出します。

こういう演出は重要です。旦那様ではありませんが、レオンが一生使うかもしれない杖を渡すのですから……。



「ママ!」


呼ばれてレオンがやってきました。

彼は普段とは違う部屋の様子にキョロキョロしていますが、私を見つけると駆け寄ってきます。あぁ、可愛い。


「レオン、前に1歳のお祝いをしたのを覚えているかしら?」

「おぼえてりゅ! でしゅ!」

勢い良く答えたレオンが可愛すぎて抱っこしてスリスリしてしまった私は悪くありません。なんて良い子なんでしょう。


「そこで国王陛下が素晴らしい素材を下さいまして、レオンに杖を作るように仰ってくださったのです」

「つえ~? つえ? わーい!」

ん?

今の感じは何でしょうか。ふと何かを思い出したようですが、もしかして国王陛下を覚えているのでしょうか?

だとしたらなんて頭の良い子なんでしょう。



「それで作ってもらったのがこの杖です。さぁ、手に取ってください。これはあなたのものですよ……って、レオン? なにを? 旦那様の?」

私は感動的に杖を渡そうとしたのですが、なぜかレオンがいつものあの怪しい光を放ったのです。


そして……。


「ん? 杖? あぁそうだった。これはレオンのだぞ!」

「わーい! ぱぱぱぱ、ママ、ありゃと!」


なぜか旦那様が現れ、私が用意した杖と、もう一本、青い杖をレオンに渡しました……。




でもその杖は?

旦那様は何をしたの?


「わーい♪ つえ!」

 

疑問はありますが、小躍りして喜ぶレオンが可愛いので一旦どうでもよいことにしましょう。

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