第38話 はぁ?鑑定士になる?そんなことを言って、関係ないことばっかり調べてたら嫌われますが良いのです?①

「ユフィ、僕はスキルや天命の鑑定士になるぞ!」

「はぁ?」


執事長になりたいと言い出して翌朝レオンと一緒に食事を採るためにあっさりと前言撤回した旦那様が、またこんなことを言いだしました。

まぁ、この話はちょうどいい気がするので受諾して頑張ってもらいましょう。


なにせ、元異世界の勇者である旦那様ならレオンの持っている力をしっかりと鑑定してくれるかもしれません。

そもそも私が保有している記憶によると、レオンに特殊能力などなかったのです。


にもかかわらず、怪しい光をまき散らし、あのおぞましきカエルや旦那様、そして可愛らしいウサギを召喚することができるなんて、どう考えてもおかしいのです。


きっと旦那様が身に着けてしまった変な力のせいでしょう。


また、旦那様はレオンの守護騎士になると言って憚らないのできっと気にはしていないとは思うのですが、いつまでも召喚獣扱いと言うのはさすがに可哀そうというか、申し訳ない気がします。

一応こんなのでも人間ですし、旦那様という関係にある友人なのですから。


「よろしいのではないでしょうか。鑑定士になっていただいて、レオンのことを見てあげて頂きたいですわ。そうすればこの子の持っている力のことがきっとわかるでしょう」

「えっと、うん、そうだな。わかった。ユフィ、僕は頑張るよ! アーゼンベルク公爵家の鑑定士であるロベルト殿にお願いして習ってくる!」

これは明らかに別の目的があったようですね。

このタイミングで言い出したのにレオンの力以外のものが気になっているって、やはり旦那様の頭はどこかおかしいのではないでしょうか?


そして部屋の隅で執事長が私を凝視しています。

きっとあの視線は、『既に高名な魔術師の方にレオンの鑑定を頼んでいるのにどういうことですか?』とでも言いたいのでしょう。

えぇ、わかります。


しかし理由なんて旦那様のガス抜き以外にありませんので、悪しからず。

それでもし本当に鑑定ができるようになったらなったで、高名な魔術師の方が視た結果と比べてみればいいのです。

どちらかではわからないと言うこともあるかもしれません。というか、実際にあるようです。

 

公爵家のお抱えの鑑定士の方々からは、『幼少期に旦那様を視たにも関わらず、こんな育ち方をするとは考えもできず申し訳ございません』と、たびたび謝られているのですから。

習いに行く先がそんな公爵家の鑑定士の方というのが少々気にはなりますが、まぁ気がすめば帰ってくるでしょう。


 

□エラルド


ユフィからの許可を得たので、僕は実家に帰ってきた。

アーゼンベルク公爵家にはお抱えの鑑定士がいるからだ。

先ぶれも出していて、息子レオンを鑑定してあげたいから教えてほしいと伝えて了解も得ている。


僕は弟や母に会わないように絶妙に見計らってやってきた。

あの2人は顔を合わせるなりユフィに酷いことをするなとか、遊び回るのもいい加減にしろとか言ってくる。

 

僕はユフィには誠実に対応しているし、他の女性たちのことも決して遊びではない。にもかかわらず、こちらの言うことは聞いてくれないあの2人に会うのは億劫だ。



「お久しぶりです、エラルド様」

「あぁ、ロベルト殿。今日はよろしく頼むよ」

「はい……この不肖ロベルト。常日頃よりユフィ様には大変申し訳なく思っていたところ、こんな形で機会を得ることになろうとは。必ずやエラルド様を真っ当な鑑定士に育て上げ、クルスローデン伯爵家の役に立つ方に変えてみせますぞ!?」

「えっ、あぁ……そういうのはちょっといいかな……」

「なにを仰いますやら! さぁ、まずは魔力を練ってください」

「こうか?」

「素晴らしいです! なんともう基礎は完ぺきではないですか。では、次に……」


なぜか異様なほどやる気を出しているロベルト殿から全てを吸収するのに半日とかからなかった僕はやはり天才だ。

執事長はいつも僕を仕事が覚えられないとバカにするが、鑑定士のスキルはこうしてすぐに覚えられたことからすると、きっと領地や家の仕事が僕に向いていないのか、それとも執事長の教え方が悪いんだ。

そうに違いない。


そして、鑑定士のスキルをちゃんと覚えることができたのは僥倖だ。

これで困っていたアリシャを助けることができる。


なにせ彼女はドジでおっちょこちょいだ。

見た目は信じられないほどに愛らしい女性なのに、もったいない。


しかし彼女が泣く姿は見たくない。

この前、クルスローデン伯爵家が購入した絵画を誤って傷つけてしまったらしい。その場面を見かけた僕が咄嗟に匿ったから今のところ気付かれていないだろうが、なんとか修復してあげたい。


しかし僕はそもそもそういった類の魔法は苦手だ。

攻撃魔法や戦闘支援系の魔法は得意なんだがな。

回復やその他の支援系魔法はあまり覚えられなかった。


ほら、やはりだ。やはり人には得手不得手がある。

僕は僕ができることをやるのがいいんだ。


まずは鑑定士のスキルを覚えたから、次は修繕方法を探さないとな。

どこがダメになっているかが理解できて、修正することができれば誤魔化せるだろう。


待っていてくれ、アリシャ。


あとはユフィに指摘されて一瞬焦ったけど、よくよく考えたら覚えた鑑定士のスキルでレオンのことも見てあげれば、きっとレオンは僕をますます尊敬するだろう。

レオンのことが守れるなら召喚されるのは全く問題ないけど、そこに何か注意すべき点などがあっては大変だ。それも鑑定で見つけられるだろう。

一石二鳥、いや一石三鳥とはこのことだな。


ちなみにこの元の言葉は僕がかつて飛び回っていた先の異世界の一つで覚えた言葉だ。とても素晴らしい言葉だからすぐに覚えた。

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