第30話 はぁ?守護騎士になりたい?子供を守ってくれるなら大歓迎ですわ!

「決めたぞ、ユフィ。僕はレオンの守護騎士になるんだ!」

「はぁ……」


なぜか私ではなく乳母のリフェレットに力強く宣言する旦那様はきっと最近性欲を持て余しすぎてついに彼女に欲情したのでしょう。

でも、彼女に手を出したら殺します。


「うぅ……」


私の殺気だけを込めた視線に辛うじて気付いたのか身震いをしています。


「いいだろう、ユフィ?」


もちろんレオンを守ってくれるなら構いません。

むしろ異世界で勇者となって大活躍してきた旦那様が守ってくれるなら安心できるまであります。


女性によるハニートラップだけは止められないでしょうが、それ以外ならどんな魔物が来ても、暗殺者が来ても問題ないでしょう。

というか、言い出されるまでもなく、旦那様はレオンを守るための盾としか思っていなかったのですが、本人がそれでいいというのだから問題ないでしょう。


「守護騎士と言っても、何をされるのですか?」

「よくぞ聞いてくれた、ユフィ」

そう言いながらまたリフェレットに向き合う旦那様……。もう勝手にすればいいわ。


旦那様の説明によると、四六時中レオンにくっついて周囲にいる者たちを含めて守るとのこと。

もちろん警戒のために接触することはあるが、それは許容してほしいと言われ、頭に疑問を浮かべながら了承しました。


すると、魔力紋で近付いてよい人物かどうか判別するということで、リフェレットの腰を抱こうとしたのでぶっ飛ばしました。


そんなもの非接触でやりなさいよバカ!

露骨すぎてリフェレットがひいているでしょう!?




翌日……我が家に異変が起きました。


なんとリフェレットが体調を崩したとか。

私は見舞いの品を送り、ゆっくり休んでいるように言いました。

もし移る病気でレオンが感染したらまずいですから。

それに体調を崩した理由は旦那様かもしれないから。


にもかかわらず旦那様は見舞いに行くと言って憚らないので、仕方なく見舞いの品と手紙を持たせました。

……が、やはり信用できないので後をつけました。



「こんにちは、リフェレット。体調を崩したとか。お見舞いを持って来たよ」

「まぁ、エラルド様。ありがとうございます」

聞こえてくる旦那様とリフェレットの声。


リフェレットは病気と聞きましたが、そこまで辛そうでもないのでたいしたことはないのでしょうか?


「あぁ……。君はもう二度とレオンの側によらないように……」

「えっ?」


はっ?

何を言い出すのでしょうか、旦那様は。

突然錯乱したのでしょうか?


リフェレットは平民出身ですが成績優秀で、我がクルスローデン伯爵家が面倒を見ている男爵家に嫁入りした才女です。

ちょうどよく、レオンよりも2か月早く生まれた子供がいて、乳母となってくれたのです。


そんな得難い女性への暴言……許せません。


しかしその後争うような声も音も聞こえてきません。

もしかして強く当たった後、優しく囁いて心の隙間に入り込んだとかでしょうか?


そうだったら、殺します。


リフェレットは私の相談相手でもありますし、その夫には事業を任せているのです。

そんな2人を攻撃するようなことをするなら、旦那様なんていりません。




「エラルド、覚悟!」

「えっ?」

「えぇ!?」


私はリフェレットの部屋に殴り込み、そのまま旦那様を蹴り飛ばしました。

私の身体ってこんなに軽かったでしょうか?


どうも最近、妊娠する前よりも体が軽いし、よく動く気がします。


そして押し入った先にはリフェレットに縄をかける旦那様。


最低すぎる。

そんな変態的な趣味まで発現させたのですか?


「まっ、待て!ユフィ!」

「待ちません!あの世で謝罪してください!!!」

「ふごぉぉおおぉおおおお」


フリューヴァルス様の力を乗せた私の全力の腹パンで旦那様は床に崩れ落ちました。


「あっ、ありがとうございます、奥様……」

そんな私を見てリフェレットが身を寄せてきます。






が……。





「あなたは誰ですか?」

「えっ?」


私はほどこうとしていた縄を逆に絞めました。


「本物のリフェレットは私のことを名前で呼ぶのです」

「なっ……」

潜入するのに初歩的なミスですわね。

さぁ、本性を現しなさい。そして本物のリフェレットを返しなさい。



「バレてしまっては仕方ないですね。まさか、平民出身の男爵夫人に名前を許すとは。いくら伯爵と言えど、やはり女には任せておけぬ!」

どう見ても女の暗殺者にこんなことを言われても何も響きません。


そしてあっさりと縄をほどいて襲い掛かろうとしたのでしょうが、これは旦那様が出した縄。

きっと異世界のとんでもパワーが込められていることでしょう。


「くそっ!?」

この程度の暗殺者に切れるものではなかったようです。


私は縄が切れずに奮闘している暗殺者の顎、頭、肩、腹、背中、足に蹴りを入れて黙らせ、兵士たちに引き渡しました。



そして、旦那様のおかげで助かりましたね。

このまま偽リフェレットを放置したら、風邪で少し声がおかしいとでも言いながらレオンに近付いて、彼を害したかもしれません。

 


「よく気付きましたね」

「それはリフェレットが偽物だと気付いたことか? それとも、見事な蹴りを喰らったのにすぐに目を覚ましたことにか?」

「あはははは」


まさか旦那様が正しい行いをしていて私が笑ってごまかすしかないなんてことが起こるとは。

ここは素直に謝るべきでしょう。


 

「すみません。まさか偽物だと思わず、旦那様がリフェレットに手を出したら殺してやろうと心に決めていたので……」

「怖いな!?」

それくらいリフェレットとその夫には感謝をしているのです。

旦那様という大きな障害物があるにもかかわらず乳母を引き受けてくれたのですから。


 

「立派な守護騎士でした」

「あぁ……任せろ」 



ちょっとだけ、旦那様がカッコよく見えたのは内緒です。


もしかしたらレオンに弟か妹ができるかもしれませんね……。

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