シャンプーマン少女?の事件簿 12個のシュークリームと消えた糖分

「これ良かったら皆さんで食べてください」


「「ありがとうございます!」」


 美容室に差し入れをしてくれるお客様は、けっこう多いんですよ。夏場だとアイスの確率が高いですね。


 お客様の差し入れは、アシスタントにとって貴重な栄養源なのでありがたいんですよ。なんせ、安月給で働いてますから、ここぞとばかりに、みんな群がりますよ。


 わたしは、パンが嬉しいなぁ。シュークリームはもらいすぎて飽きてきたのでパンでお願いします。(頂いておきながら失礼なヤツ)


 スタッフの中には、差し入れに敏感に反応する者もいる。普段は周りなど、見えてないのにそういう時だけは嗅ぎつける。


 何か頂きました?今日の差し入れってなんっすかね?……卑しいヤツ。なんか、ガツガツしてるヤツってちょっと引きません?思ってても隠せばいいのに……。 わたしのように……クク。


 人数いるとお客様も大変ですよ。何人だったか把握しておく必要があるでしょ。個数を間違えるとケンカになるから。


 そして事件ですよ。人数分あるはずのシュークリームが足りなくなったんです。


「おい、俺のシュークリームが無いんだけど!」


 わたしの地獄耳が発動する!

 

 はぁ?わたしもまだ食べてないんだけど……ちょっと、だれぇ〜!わたしのシュークリーム食べたの。楽しみにしてたのに(シュークリーム飽きたと言っていたシャンプーマン……)。


「お前、俺の分食べたんじゃね?」


「――な!っていうかわたしも、食べてませんよ。わたしのシュークリームを取り返してください。頭使い過ぎて糖分が不足してるのでフラフラです」


「おっ……おう」


 わたしの分も無いのに、疑われてイラッとしたんで、珍しく感情をあらわにすると、ちょっと怖気づいたもう一人の被害者。


 しかし、わたしの大事なシュークリームを食べたのは誰だ!(シュークリーム飽きたと言っていたシャンプーマン……)


 犯人はこの中にいる!


 動機からすると、容疑者はお腹が空いて飢えていた……


 スタイリストの可能性は低い、なぜなら経済的に余裕があるから。だとすれば、わたしの可愛いシャンプーマン達……くっ……ツラい……あの子達を断罪するなんて、わたしには出来ない。


 だが、わたしの大事な糖分を無断で摂取したのも事実……その罪は重い(シュークリーム飽きたと言っていたシャンプーマン……)。


 犯人探しなんて、したくない。


 この子達もきっと、悪気はなかったんだ……ちょっと魔が差しただけなんだ……


 現場には、シュークリームが入っていただろう箱が空のまま置いてある。


 箱の中を覗く……これは!


 2個1のシュークリームだと!?だとすれば、まさか……


「あれ?⚪︎⚪︎ちゃんは食べてないの?……足りてない?あっ!すまん、2個がワンセットで一人分と思って食べたわ」


 コイツら〜!犯人は逆だった……。


 オーナーとトップスタイリストだと!?


 お金に余裕がありすぎて、2個が一人分だと勘違いした贅沢ヤローどもだったか!疑ってごめん……わたしの可愛いシャンプーマン達……。


 2個がワンセットになったシュークリーム12個の事件……結局、富豪の二人に奢らせました。パンを……

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