第57話 肌身 92

ラブレターを書いたなら


受け取ってくれますか


認めてくれますか


そうですか


置場所に困りましたか


それなら


いっそ


僕の存在ごと


燃やしてくだされ


・・・・


2023年

晴れ着の若人が酒を堂々と飲み交わしていた頃


一組の父,娘はまだ成人式へは遠い位置に腰をおろしていた

母が他界したこの親子

自然と娘は成長速度を加速させて

有意識とか無意識とか

どうでもいいけど

女に近づく


手紙渡したんでしょ


まあ


一定の効果はあるわ

スマホじゃなくて

自筆が大切なの

心持ちが違うでしょ


なあ、アユラ

8歳らしくしてくれないか


チャリルは仕事人間だし

冷たいところがあるから

隙をつくわよ


・・・・


チャリルとチュリミ

18の頃から交際を始めた

児童養護施設出身のこの2人は

この時28歳だった


土曜日だし

どこか出掛けない


悪い

仕事のこと考えたいから


そう


・・・・


父アネハは

娘アユラがいるが

結婚はしていなかった

未婚の父だった


それはハミルENの一員であって

其処は結婚することを認めていないから。


すなわち故セイナとは内縁関係だった

2人は娘を授かった

アユラ


セイナは事故で亡くなったが

その前から体調が芳しくなかった

事故の一因だった

アネハは体調不良を仄めかす内縁の妻を

精査させることが出来ず、己を責した

そうした感情は未来の幸せに対して

臆病の風を吹かせた


内妻が死して、8年の月日が経過していた


8年が齎した時の療養によって

ある女に恋はできたが

いいのか


そのオンナには

恋人がいるし

死んだウチヅマを愛したまんま

あいつは逝った

嫌いになって嫌気が刺して別れてでもいりゃあ、いくらでも新たな女に進めるのに

愛したまんまに逝っちまった、

俺のケジメは


死んだ女の乳房に残したままだろ


俺は既に45だし

28の女に恋して

愛だ恋だの撒き散らして

恥晒しに

なるのが使命だろう




チャリルと同棲しているチュリミはアネハから受け取ったラブレターの置き場所に困り


肌身離さず


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