第22話 隣国は素敵なところ
「なぜ、聖ルピテア王国ハーマート公爵家のナリアンヌ嬢がここにいるのだ!」
「王女様が聖女を転移魔法で連れてこいと仰せになりまして」
「いやまて、なんであれが聖女なんだ! あれが聖女なら、この世界の神は魔王か!」
「まあ? エミル様の淑女に対する教育がなっていないとお母様とお兄様にお話ししておきますわ」
「待ってくれ、すまなかった。失言だ。撤回する」
「「「第一王子が謝られたぞ!?」」」
「聖女は私」
「なんだこのくそアマ。黙れブス」
「あらあら、相変わらず、お口が余りにもマナー違反になられていらっしゃいますわよ? またお母様とお兄様に注意されてしまいますわ?」
私がそう微笑むと、慌てた様子のエミル様は、ルチア様に謝罪されます。
エミル様とエミーラ様兄妹は、性格がとても悪いのです。わたくしに対する態度も当初はとても悪かったので、お母様とお兄様がしっかりとお話ししてくださったのですわ。
わたくしも僭越ながら物理的な力をお見せしたことはございますが、か弱い淑女ですから……お母様やお兄様には敵いませんでしたわ。
「お待たせいたしました、お嬢様」
「あら、ばあや。遅かったわね?」
「お嬢様が砂漠を散策なさる際の日傘など準備して参りました。まずは、砂漠のオアシスで採れたフレッシュなフルーツジュースなどお召し上がりになりますか?」
「ありがとう。そうするわ」
なかなか来ることのない他国ですもの。ゆっくりと羽を伸ばさせていただこうかしら。
「「お願いだから、早く帰ってください」」
いつのまにか気絶から戻ったエミーラ様と声を合わせてエミル様がおっしゃいます。
「まぁ。エミーラ様がご招待くださったのに? わたくし、このまま帰国したらうっかり口が滑ってお母様に“エミーラ様に誘拐された”と言ってしまいそうだわ」
「「精一杯おもてなしさせていただきます」」
「まぁ、ありがとう」
微笑みを向けると、兄妹仲良さそうに頭をつき合わせて相談なさっていらっしゃいます。
普段淑女として過ごしている分、国民の目がない今こそ!自由に過ごさせていただきますわ!
「ということで、エミル様とエミーラ様? わたくし、魔物を倒しにいきたいのだけれど。あと、観光も」
「「魔物……」」
「えぇ、我が国では流石に淑女となってからは手応えのある魔物と戦うことができなかったわ。この国ならまだやり残しもあると思いますし」
「「殺り残し」」
「えぇ。まぁ、殺りでもいいかしら。存分に戦いたいですわ!」
「お嬢様。ばあやも同行いたしますわぁ!」
「まぁ、ばあや。わたくしの取り分は取ってはダメよ?」
「おい、エミーラ。なんで聖女なんてものを召喚したんだ。あの国にあれがいることを忘れていたのか?」
「お兄様。だって、聖女欲しかったし、あれがくるなんて予想できないでしょ」
「我々は、あの国と最低限の友好以外関わるべきでないといつも父上がおっしゃっているだろう? 取り込まれるぞ」
かの兄妹がなにかこそこそとお話ししていますが、きっと大したことではございませんわ。わたくしの願いを口にさせていただきましょう。
「そうですわ!」
「「なんでしょうか?」」
「わたくし、獣人の方が奴隷のように扱われていることが納得できませんの。この国、変えてくださらないかしら?」
「「父上と相談の上、回答させていただきますので、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」」
「えぇ。まるでお店の店員の方とお話ししているように息が揃っているわね? マニュアルでもあるのかしら?」
「「はい、聖ルピテア王国向けのマニュアルがございます」」
「あら、そうなの。我が国を尊重してくださっているのなら」
わたくしが微笑むとなぜか皆様が頭を抱えていらっしゃいます。ばあやだけが嬉しそうに微笑みを浮かべてこちらを見ております。
そうしてやってきた砂漠! 砂漠といえば今回のイベントのバジリスクですわ! さぁ、どこからでもかかってらっしゃい!
……。あら、おかしいわね。先ほどまであった魔物の気配が消えているわ。なぜかしら。
「ばあや。周辺を探ってちょうだい」
「はい、お嬢様。……北に30キロほどの距離に魔物が集まっているかと」
「さぁ、殺りに行きましょうか! ……ルチア様?」
「バジリスク、美味しい? 獣人よりも」
「わたくし、獣人を食べたことはありませんわ! 何度も言っておりますが、彼らは人と同等だと考えてちょうだい? ルチア様は、バジリスクを食べてみたいのかしら?」
「食べられるならいく」
そうして、全員で全力ダッシュいたしました。途中、ルチア様が脱落してばあやに魔法を使って運ばれました。一部の兵は足手纏いになりそうでしたので、離宮に戻すようにいたしましたわ。
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