第20話 公爵家の力

 ばあやがドラゴンの森へとドラゴン全討伐に繰り出し、1時間後。先に我が家に戻り、わたくしとお兄様がうろうろしながらばあやの帰りを待っておりましたの。





「お、奥様。これで全部ですわ」


 ぜいぜい息を吐きながら、ばあやが現れました。


 ばあやは魔法使いですから、魔法を封じられたのはキツかったと思いますわ。


「……各色ドラゴン計30体。レッドドラゴン20体、ブラックドラゴン5体。ホワイトドラゴン1体。殲滅しましたわね」


「は、はい」


「所要時間は……1時間10秒。マリア? 10秒も過ぎているわ」


「申し訳ございません、奥様。これから、トレーニングして参ります」


「お母様! わたくしにもどうか罰をお与えくださいませ!」


「母上、私にも!」




 最近のお兄様はご自身のことを私とおっしゃりますの。“僕”と言ってた幼い頃と比較すると成長を感じて、妹はにまにましてしまいますわ!


「ナリアンヌ? どうかしたのか?」


「お兄様、なんでもありませんわ」


「奥様! 坊ちゃまとお嬢様の馴れ合いが愛らしすぎますわ!」


「本当ね、マリア。最高だわ。この瞬間を収めるために最高の画家をお呼びなさい?」


「わたくし、記録装置を開発しております。今すぐにそちらの性能を上げてまいりますわ!!」


「任せたわ、マリア」



 その後マリアの性能UPと画家が到着まで1時間。その体制で待たされましたの。わたくし、もう二度と魔物を餌に別の魔物を呼ばないと誓いましたわ。






 翌日、学園に登園すると、殿下とルチア様が走っていらっしゃいました。


「ナリアンヌ! ワイバーンを殲滅したと聞いたが、怪我はないかい?」


「悪役令嬢、癒す?」


「まぁ、殿下とルチア様。お気遣いありがとうございます。わたくしは、このように無事ですわ。ワイバーンの群れ程度でしたら……。でも、今回はタイムトライアルでしたから、必死でしたわ……」


 わたくしの表情になぜか周囲にいた皆様が悲痛な表情を浮かべられます。その一方で、殿下はぽかんとした表情を、ルチア様は何も考えてなさそうな顔をしていらっしゃいます。


 なぜわたくしがワイバーンの群れを殲滅したことを、皆様ご存知なのでしょうか?



「なぜ、わたくしが群れを殲滅したことをご存知でいらっしゃるのですか?」


「あぁ、ハーマート女公爵が大声で自慢しながら帰って行ったぞ。おそらく街の者も知っている」


「お母様ぁ!」


 全く、お母様は親馬鹿でいらっしゃいますわ。わたくしたちが必死に証拠隠滅したことは無駄でしたわ……。





「そういえば、次、何がある?」


「あら、珍しいですわね。ルチア様がイベントに興味をお持ちになるの。えーと……」


「嫌な予感がした」


「確かに、次のイベントはなかなか危険の伴うものでしたわ。忘れてましたわ! ルチア様」




 そういったときには、ルチア様の姿は消え去ってましたわ。





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