忍活
藤城 吹雪
1.prologue
又、妻がトイレから出てきません。
額を壁に打ち付けているのか、それとも、ちいさな拳をぶつけているのか、
時折り、「ゴッ ゴッ 」と鈍く曇った音が、シンと静まり返ったリビングに響く。
時計の針が真上から、右下に傾く頃、「ガチャッ」とドアノブの回る音とともに、
大きい瞳いっぱいに涙を溜めた妻が、力ない足取りでフラフラと出てきた。
「また、ダメだったよ。」
ぽろっと悲しい言葉と、大粒の涙が頬をつたう。
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