黎明の黒は終わりを告げる〜虐げられてきた無自覚ハイスペ令嬢は賢者の溺愛に気付かない〜

安崎依代@『比翼は連理を望まない』発売!

結婚ですか? 承知いたしました


「結婚……って」


 結婚相手である私に、迎えの馬車はおろか出迎えさえ用意しなかった男は、ボサボサな黒髪の下でラピスラズリの瞳をシパシパさせながら口を開いた。


「聞いてない、ん……だけど……?」

「……え?」


 人生は山あり谷ありと言うけれど、これはちょっと並の人生ではお目にかかれない山、もしくは谷なのではないだろうか。


 私は鉄壁と言われる無表情の下で、そんなことを考えていた。


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