第688話 アメリカ滞在2日目

 起きたら、すでに11時前だった。

 オバケはでたのかもしれないが、そうだとしても熟睡していたので気づかなかった。

 あまり霊感は強くないし、とにかく疲れていたので、それどころではなく、泥のように眠った。

 トランクの中身が部屋中に散らばっているが、寝ぼけてぶちまけたのだろう。


 さて、窓を開けると、空には雲一つない青空が広がっていた。

 なかなかいいじゃん。

 今日はいい日になりそうだ。


 携帯電話が鳴った。

 見ると、三田村だった。


 「よお、兄貴。やっと起きたか。

 何回鳴らしてもでないから死んだかと思っていたぜ」

「だがらその兄貴っていうのやめろよ。

 あらぬ誤解を招く」

「じゃあ、ブラザー」

「それも却下。普通に高橋様と言え」

「そんな冷たいこと言わないでよ、お義兄さん」

 三田村が甘えたような声で言った。


「朝から気色悪い。

 用がないなら、切るぞ」

「あのよ、俺起きたら全裸だったんだけど、何でか知らないか?」

「知らねぇよ。寝ぼけて服脱いだんだろ。

 ていうか、他の人の前でそういうこと言うなよ。

 俺に風評被害が及ぶ」


「でさ、何時にロビーにいれば良いんだっけ?」

「あん、14時だ。遅れたら置いていくからな」

「12時な。了承」

 そう一方的に言って、電話が切れた。

 くそっ、違う時間を言って巻こうと思ったのに、変な聞き間違いしやがって…。

 僕はため息をつきながら、荷物をトランクに入れた。

 今晩からは事前に予約したホテルに泊まれるので、このホテルは昨晩限りである。

 何か背後に人の気配がするが、振り返っても誰もいない。多分気のせいだろう。


 ロビーに着くと、トーマス、そしてバローズがいた。

 バローズは黒沢選手のの友人で、これまで自主トレでお世話になっている男だ。

 昔、泉州ブラックスに在籍し、3回ホームラン王を取った。(初登場73話)


 身長が2メートルほどありそうな、黒人の大男であり、引退後、やや腹回りに贅肉がついているものの、筋肉質なところは変わっていない。

 ここでも翻訳機は役に立った。

 

『おう、高橋、三田村、アメリカへようこそ』

『よお、バローズ、会えて嬉しいよ。

 遠くまで来てもらって悪いね』

 バローズはニューオーリンズに住んでいるのに、わざわざサンフランシスコまで来てくれたのだ。

 同じ国内でもアメリカは広いので、3,000km以上ある。


『なーに、友人に会うためなら、全く問題ないさ』

 とても気の良い男である。

『黒沢からも聞いているよ。

 来シーズン、マイナーリーグに挑戦するんだって?』

 一応、メジャーリーグへ挑戦するんだけど…。


『明日からポストシーズンを観戦するんだろ。

 良かったら、出場チームの知り合い、紹介してやろうか。球団幹部にも知り合いがいるから、グラウンドやロッカールームにも案内してやるぜ』

『マジで?、ありがとう、バローズ。

 そうしてくれると、とても嬉しいよ』


 さすがバローズは顔が広い。

 観客席から、雰囲気を味合うだけで充分だと思っていたが、バックスペースも見せてもらえると嬉しい。

 フロリダの自主トレの時に来てくれた若手選手の中から、メジャーで活躍している選手もいるそうだ。


 この日はトーマスとバローズの案内で、サンフランシスコの街中を観光した。

 相変わらず作者は行ったことがない場所の描写ができないので、詳細は省略するが、有名なゴールデンゲートブリッジを渡ったり、ケーブルカーに乗ったり、フィッシャーマンズ・ワーフで新鮮な海産物に舌鼓を打ったりした。


 作者もいつか行ってみたいそうだ。

 叶うと良いね。金も時間もないから、今世では無理だと思うけど。笑笑


 この日は無事に事前に予約していたホテルに宿泊することができた。

 街の中心街にある、中々良いホテルだった。

 ただ宿泊代が1人一泊、70,000円もする。

 三田村の野郎。

 人の金だと思って…。

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