第8話 留学の誘い

時が流れ、是清は藩校での学びを続け、少しずつ成長していた。武術の訓練や学問の深まりに伴い、彼の知識と技術も向上していた。友達との絆もますます強くなり、彼らは数々の冒険を共に乗り越えてきた。


ある日、藩校の校長室に呼ばれた是清は、心臓が高鳴るのを感じながら、重々しい扉をノックした。


「高橋是清、入ります。」


「どうぞ、入りたまえ。」校長の穏やかな声が返ってきた。


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校長室に入ると、校長が書類を片手に微笑んでいた。


「高橋君、君に大切な話がある。座りたまえ。」


是清は緊張しながらも席に着いた。


「君はこれまでの学業や武術の訓練で素晴らしい成果を上げてきた。そこで、君に海外留学の機会を与えたいと思っている。」校長が言った。


「海外留学ですか?」是清は驚きと興奮で声を上げた。


「そうだ。君のような優秀な生徒には、広い世界でさらに学び、成長する機会を与えたいと考えている。これは君にとっても、藩にとっても大きな意味がある。」


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その夜、是清は家族と共に夕食を囲みながら、この話を切り出した。


「お父さん、お母さん、今日校長先生から海外留学の話を聞いたんだ。」是清が言った。


「海外留学?それは大きな話だな。」覚治が驚きながらも誇らしげに答えた。


「はい。校長先生は、僕が海外でさらに学び、成長することが大切だと言っていました。」


「それは本当に素晴らしい機会だよ、是清。君ならきっと大丈夫だ。」母も優しく励ました。


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是清は家族と共に、この留学の話を深く話し合った。彼の心には期待と不安が入り混じり、未来への決意を新たにした。


翌日、是清は友達に留学の話を伝えた。


「みんな、実は校長先生から海外留学の話をもらったんだ。」是清が言うと、友達たちは一斉に驚きの声を上げた。


「それはすごい話だね!」正次郎が言った。「君ならきっと成功するよ。」


「うん、でもみんなと離れるのは寂しいよ。でも、僕はもっと成長して帰ってくるよ。」是清は決意を込めて言った。


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数日後、是清は校長に留学の意思を伝えるため、再び校長室を訪れた。


「高橋君、決心はついたかな?」校長が優しく尋ねた。


「はい、校長先生。僕は留学することに決めました。」是清は力強く答えた。


「素晴らしい決断だ。それでは、留学の準備を始めよう。」校長は微笑み、是清の肩を叩いた。


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高橋是清は、1867年(慶応3年)に仙台藩から派遣されてアメリカ留学の機会を得た。当時、江戸幕府は開国を進めており、外国の技術や知識を学ぶために多くの若者を海外に派遣していた。是清は、サンフランシスコのセント・ポール学校で学びながら、異文化に触れることで新たな視野を広げていく。


是清の留学は、彼にとって大きな挑戦であり、さらなる成長の場でもあった。彼の未来は、広がる世界への期待と共に輝いていた。

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