君のために
昨日はあんなに晴れていたのに、今日の灰色だった。そんな空を見て今が梅雨時であることを思い出す。この時期は憂鬱になる日が多いけど、最近は天気に関係なく毎日たのしい。純粋にそう思う。私は青山くんに声をかける。
「おはよう。元気?」
「ねむい」
そういう彼の表情本気で眠そうだった。昨日も、本当はあの後バイトだったのかな。だとした申し訳ないことしちゃったな。
「体気をつけて、頑張ってね」
私はそう言って席に着く。二列前にいる彼の方に視線をやる。今日はどれくらいの時間一緒に過ごせるんだろう。気づけば毎日考えるようになった。彼と恋人同士になれれば...なんて考えることもある。
「けどきっと冷やかされんだろうなぁ.....」
ふと出る苦笑い。みんなはなんでそういう話を聞いた時に笑ったり、ヒソヒソするんだろう。何もせずそっとしておけばいいのに。そうすればみんな幸せになれるのに。
✱✱✱
「ねぇ知ってる?」
「なにが」
お昼時だった。教室でお弁当を食べていると、友達がニコニコしながら私に話しかけて来た。彼女がこの顔をしているときは何か新しいウワサなんかを仕入れてきたときだ。
「紫乃の彼氏、私らより年上らしいよ?他の女子たちが言ってた。ねぇ紫乃、あの話ってまじ?」
「知らない、またそんな話どこから....てか彼氏じゃないし」
いつの間にか、青山くんイコール私の恋人。が、定着している。ここで否定すると余計に冷やかされそうでそれもまためんどくさい。
本当は知っていたけれど、誤魔化した。動揺してたのも隠せていると思う。ここで知ってる風に話せば、ここからそれに尾にヒレが付いておまけに羽まで生えそうだったから。それに彼の秘密を知っているのは、自分だけでいいと思ってしまったから。
「知らないよ。ウワサ好きなのはいいけど、あんまり素直に信じすぎると....いつか詐欺とかに合うよ。それにもし本当だったとしても、詮索とかしない方がいいよ」
私はそう言ってから、玉子焼きを頬張った。
「ふぅん...」
私がこのウワサに食いつくと思っていたのが外れたからか、友達はつまらなさそうな顔をしていた。自分がウワサ話が嫌いなことを彼女には伝えていなかった。
「ごちそうさま」
私は十分程でお弁当を食べ終えてしまった。隣の椅子に座っていた友達は廊下に出て他の子と話していた。いつもの私なら会話が途切れることが怖いと感じて、一人反省会をしているところだ。でも今回は違う。
「これでいいよね.......」
これで少しは.....好きな人のこと、守れたよね?
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