第 肆拾玖 話:鬼神とネフィルムの決闘

 翌日、再び十字軍は支城と本城を攻め始め、別れた別動隊の十字軍、一千万は南下し、京を目指して進軍を始めた。


 だが、京を目前に兵糧が底を着いてしまい愛宕山付近で織田連合軍の猛攻を受け、大多数の死者を出して若狭方面へ撤退した。だが撤退途中で潜伏していた織田連合軍の兵士達の奇襲に遭い、さらに被害は大きくなり若狭湾方面に戻った時には十八万にまで減っていた。


 さらに最悪な事に城の攻略は別動隊が出発して二日が経った時点で完全に失敗してしまい浜辺まで後退、別動隊と合流した時には一千万だった兵力が何と七万まで減り、しかも兵糧も底が着いた。


 そして十二日目の夜、浜辺に建てられた十字軍のテント内では灯されたランタンが置かれたテーブルの上に広げられた曖昧な日ノ本の地図を元に椅子に座って作戦会議をしていた。


「くそ!くそ!誰か‼何とかこの状況を打破しないとまずいぞ!おい!誰か!いい案はないか‼」


 上座の椅子に座るギーは苛立つ感じで左右の椅子に座る十字軍の将官達が悩む表情で答える事が出来なかった。


 すると、そんな中で一人のチェイン・メイルを着こなし、その上からプレートアーマーを付けた姿をした若い薄茶髪の男性騎士が手を上げるとギーは一旦、落ち着いた表情となり彼に向かって“どうぞ”とハンドサインを送る。


 そして若い騎士は立ち上がり、自身の意見を述べ始めた。


「ギー大将軍、我ら第10次十字軍は既に食料が底に着き、しかも兵力は当初の約八割以上を失っています!このままでは十字軍は崩壊してしまいます‼ここは敵将と和平を結びアーク聖櫃の奪還は諦めましょう」


 現在の状況を説明しながらギーに対して述べる第10次十字軍の騎士将軍でバチカンに属する聖騎士パラディン、『ジョナサン・ロンデバルト』。


 すると彼の向かいの椅子に座るギーの腹心であるチェイン・メイルを着こなした小太りの中年の男性騎士、『ルノー・ド・シャティヨン』が立ち上がり、険しい表情で反論する。


「いや!ダメだ‼極東の猿共と和平を結ぶなど騎士の屈辱だ‼ならば最後の一兵まで戦うまでだ‼」


 するとルノーから見て向かいの左の椅子に座る赤い司祭服を着た少し幼さを残す女性が不安そうな表情で立ち上がり、ルノーに言葉を掛ける。


「ルノー様、最後の一兵と申しますけど今、十字軍内は敗戦に次ぐ敗戦で皆、国に帰りたがっています。それはフランスとプロイセンから集まった少年少女の騎士達もそうです。どうか!和平を‼」


 そんな彼女からの懇願にルノーは首を立てに振らず、横に振って拒絶する。


「いいや、ならん!それに聖なる軍である十字軍に参加した以上、神の為に戦い死ぬのは我らの十字軍の本懐だ‼ギー!もう迷っている暇はないぞ‼奴らが攻めて来る前にこちらから攻めよう!」


 ルノーからの強い意見にギーは決意した様な笑顔で頷く。


「そうだな。奴らも長い戦いで疲弊しているし、軍を立て直す為に補給が行われているはずだ。ならば、ここは討って出よう。ルノー、すぐに攻勢の用意だ」

「はっ!」


 ギーからの指示にルノーは一礼をする。そしてギーとルノーは立ち上がり、上座から見てルノーと同じく左側の椅子に座っていた二人の側近と思わる騎士達も立ち上がり、二人の後を追う様にテントを出る。


 一方、上座から見てジャナサンと先程の彼女が居る右側の椅子に座る騎士達や修道女騎士シスターナイト達が困った表情をしていた。


 そしてジョナサンは大きく溜め息を吐きながら椅子に座るとルノーに異を唱えていたさっきの女性も溜め息を吐き、椅子に座る。


「申し訳ありませんヨハンナ様。私がもう少し慎重に戦略を練っていれば」


 申し訳ない表情で言うジョナサンに対して『ヨハンナ・タルトン』は笑顔で首を横に振る。


「いいえ、貴方はベストを尽くしたまでです。神もきっと貴方の努力に賞賛の言葉を贈るはずです」


 ヨハンナからの励ましの言葉にジョナサンはのしかかって心の重さが軽くなり、笑顔になる。


「ありがとうございます。少し気持ちが楽になりました」


 そしてジョナサンとヨハンナは苦境の中でお互いに笑い合うのであった。


 一方、織田連合軍は夜間の内に浜辺で押し戻した十字軍と湾内に居る十字軍の艦隊を一網打尽にする為に軍の配備をしていた。


 浜辺が見渡せる丘には密かに先に着いていた工兵達が作った蛸壺壕に野戦移動式40ポンド アームストロング砲を配置、さらに大砲陣地の前に作られた塹壕には前列にはスナイドルMk.Ⅲ小銃を装備した鉄砲兵と弓兵が後列には一般の足軽が配置された。


 そして合図があるまで塹壕とアームストロング砲は緑の大きな布で隠された。


 真斗達は他の武将達と共に後列の塹壕に身を隠して待機していた。


 身を低くしている真斗は布を通して差し込む僅かな月明かりで手紙を読んでほくそ笑む。


わか様、もしかして奥方様からの手紙ですか?」


 真斗の右隣に居る左之助が笑顔で尋ねると真斗は笑顔で頷く。


「ああ、竹取かぐやからの手紙だ。三日前に伝書鶴で届いてなぁ。いくさの勝利を会津から祈っていると」

「そうですか。いいな。早いとこ俺も嫁さん、見つけないと」


 少し羨ましさを見せる左之助に真斗はクスクスと笑う。


「そうだなぁ。でもまずは目の前の十字軍を追い出さないとな」


 笑顔でそう言う真斗に対して左之助も笑顔で頷く。


「そうですね。じゃわか様、俺が見張りますのでお先に仮眠をして下さい」

「ありがとう左之助、何かあったら知らせろ」

「はい、わか様」


 そして左之助は塹壕から頭上半分を出し、布隙間から浜辺を見張り、真斗は竹取かぐやからの手紙を折り畳み懐に入れるとうずくまる様に仮眠をする。


⬛︎


 翌日の日が出始めた早朝。浜辺に建てられた十字軍のテント内から一人の男性騎士があくびをしながら背伸びをする。


「さて。今日で決着が着くといいが」


 そう言いながら男性騎士は海で顔を洗い、タオルで拭き、再びテントへ戻りカイト・シールドとアーミングソード、ノルマンヘルムを装備し見張りの為に丘の方へと向かう。


 すると丘の上で足軽達が何かを退けているのを発見するが、不可思議としか思っていなかった。


 だが布が全てなくなると取り込む様に蛸壺壕に配置された無数のアームストロング砲が姿を現す。そして後部から一体型の砲弾が装填されると頭形兜ずなりかぶとを被った砲兵隊の足軽隊長が高く上げた軍配を振り下ろす。


はなてぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」


 砲兵隊の足軽隊長からの大きな合図で砲撃を担当する足軽達が一斉に発火紐を力一杯に引っ張る。


 そして爆音と白煙と共に40ポンドの砲弾が雨の様に発射され次々、十字軍のテント陣地に着弾する。突然の織田連合軍からの奇襲に十字軍は大混乱となり多くの騎士達は慌てながら装備を整える。


 砲撃が止み、茶色い体色の馬に乗ったギーが片手にアーミングソードを持ちながら何とか戦闘準備を整えた騎士達を鼓舞する。


「皆の者よ!狼狽えるなぁーーーーーっ‼例え危機的状態でも必ず勝機はある!命を惜しまず神の為に戦うぞぉーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」


 それを聞いた騎士達は武器を掲げて大きな歓声が上がる。そしてギーは前を向き、指示棒の様にアーミングソードを真っ直ぐに向ける。


「敵の大砲を叩くのだ!突撃ぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」

「「「「「「「「「「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」


 雄叫びを上げながら騎士達は馬や自分の足で走りながら丘に向かう。


 すると騎士達が浜を出て緑の草地に入った瞬間に地面から布が飛び立ち、地面の下からスナイドルMk.Ⅲ小銃と和弓を構えた足軽達が現れる。そして兜と甲冑を着こなした勝家が軍配の様に愛刀を振う。


はなてぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」


 勝家の合図でスナイドルMk.Ⅲ小銃と和弓で引っ張られた矢が一斉に放たれ、塹壕に向かって突っ込んで来た騎士達は次々と倒れる。


 突然の織田連合軍からの不意打ち攻撃に十字軍は混乱し、進軍の足を止める。それを見た勝家は塹壕から出て皆に指示を出す。


「今だ‼︎敵の足は止まった!斬り掛かれぇーーーーーーーーーーっ‼︎」


 勝家からの指示に後方の塹壕に潜んでいた足軽達が一斉に雄叫びを上げながら塹壕から飛び出る。それを見た真斗も愛刀の赤鬼あかきを抜き、塹壕から出て指示を出す。


「者共!遅れを取るなぁーーーっ‼︎掛かれぇーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」


 真斗からの指示に源三郎達を含めた後方の塹壕に潜んでいた足軽達が一斉に雄叫びを上げながら塹壕から飛び出て、真斗を先頭に向かって来ていた十字軍の騎士達に目掛けて全力疾走する。


 さらに前方の塹壕で射撃をしていた鉄砲隊と弓矢隊の足軽達は後方から来た足軽達が通り過ぎた後で頭形兜ずなりかぶとを被った鉄砲隊と弓矢隊の足軽隊長が指示を出す。


「総員!着剣‼︎」

「全員!刀を抜け‼︎」


 二人からの指示に鉄砲隊の足軽達は腰に付けた革製のベルトに装備されている銃剣を手に取り、スナイドルMk.Ⅲ小銃の銃口下に取り付け、一方の弓矢隊の足軽達は持っている和弓を背中に背負い、腰に提げている打刀を抜く。


「「掛かれぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」」


 二人の足軽隊長の指示に鉄砲隊と弓矢隊の足軽達は一斉に雄叫びを上げながら塹壕が走って出る。


 塹壕から勢いよく走って出た真斗達は十字軍の騎士達と衝突、真斗は愛刀の赤鬼あかきで次々と騎士達を斬り倒して行った。


 混沌と言うべき血で血を争う浜辺での戦闘。一方、丘に居る大砲隊は今度は湾内に停泊している十字軍のガレオン船に向かって砲撃を開始。


 さらに浜辺の東西からは武田軍、上杉軍、真田軍、伊達軍、前田軍、島津軍が十字軍を挟撃し湾内の出入り口からはフリゲート艦を中心とした九鬼水軍、村上水軍、毛利・小早川水軍、長宗我部水軍の艦隊が十字軍のガレオン船団を奇襲し激しい船上戦となっていた。


 また駄目押しと言わんばかりに大砲隊の後ろから信長を筆頭とした残存兵力が現れ、浜に向かって突撃する。


 そんな乱戦の中で真斗は海の方へ走って逃げるギーの姿を見付ける。


じい!槍を貸せ‼︎」


 自分の側に居る源三郎にそう言うと源三郎は差し出された真斗の左手に持っていた和槍を渡す。


「どうぞ!わか‼︎」


 そして和槍を受け取った真斗は右手に持ち返し少し助走を付けて大声を出しながら力強く投擲する。


 息を切らせながら海に向かって走るギー。もはや自分だけ逃げる事にしか頭になく必死で戦う騎士達には目もくれていなかった。


「あと少しだ!これで私は・・・‼︎」


 自己中心的で安易な希望に喜ぶギーであったが、真斗が投擲した和槍は見事にギーの喉元を突き刺す。


 遠くまで逃げた小さなギーに見事、和槍で命中させた真斗に見ていた源三郎、左之助、忠司、平助は賞賛の言葉が出る。


「お見事です!わか‼︎」

「流石です!わか様‼︎」

「よっ!日ノ本一のわか様‼︎」

「あっぱれです!わか様‼︎」


 彼らからの言葉に真斗は少し照れる。


 一方、ギーの副官であるルノーは部下である四人の騎士を連れてボートで一隻のガレオン船に向かって急いで漕いでいた。


「おい!もっと急げ‼︎早く船に向かうんだぁーーーっ!」


 死に物狂いで言うルノーであったが、丘から砲撃したと思われるアームストロング砲の砲弾がルノーが乗るボートの近くに着弾する。


 大きく上がった水飛沫でボートは横転しルノーと四人の騎士達は海へと投げ出され、四人の騎士達は泳いでガレオン船に向かう中でルノーだけはバタバタと踠く。


「おい!おーーーーい‼︎誰か!助けてくれぇーーーーっ‼︎誰か!誰かぁーーーーーっ‼︎」


 喉が渇れる程の大きな声で助けを求めるルノー。だが、両者の激しい砲撃音と攻撃を受けて爆発するガレオン船、そして着弾で発生する水飛沫でルノーの声はかき消され誰の耳にも届かなかった。


 そして丘から放たれた一発の40ポンドの砲弾がルノーの頭上から海に向かって着水、大きな水飛沫を上げながらルノーの体はバラバラとなった。


⬛︎


 陸と海からの織田連合軍の凄まじい挟撃で十字軍は約二時間に及ぶ激戦でガレオン船団は全滅、浜辺の戦力に関しては二百人に満たない程の騎士が残る程度でほぼ全滅していた。


 残されたギー達が作戦会議をしていた大型のテント内では上座に置かれた大きな台の上に置かれた十字架に向かってヨハンナを先頭にジャナサンを加えた騎士達と修道女騎士シスターナイト達、そして今回の十字軍にプロイセンとフランスから集まった少年十字軍のリーダーと思われるハイエルフとダークエルフの男女が片膝を着いて祈っていた。


 一方、真斗は信長の元から来た伝令の足軽から書を受け取り、一人で名の知れない黒い馬で大型のテントへと向かった。


 ある程度の距離まで行くと真斗は馬を降り、その場から馬だけを去らせる。そして大型のテントに向かって大声を出す。


「十字軍の指揮官は居られるか!私は織田 信長様の使者として参上した者である‼︎」


 外から聞こえて来た真斗の問い掛けにテントの中はザワザワとし始める。すると覚悟を決めた表情でヨハンナは立ち上がる。


わたくしが参ります!皆様はここで待っていて下さい‼︎」


 皆に命を出すヨハンナ。すると彼女の右隣に居るジョナサンが立ち上がり、ヨハンナに向かって首を横に振る。


「ダメですヨハンナ様!ここは、このジョナサンに任せて下さい‼︎」


 ジョナサンからの強い意志と覚悟に満ちた表情と眼差しにヨハンナは少し驚くが、すぐに真剣な表情で頷く。


「分かりましたわジョナサン。でもお気を付けて」

「ありがとうございます、ヨハンナ様」

「主よ、どうかこの者に生きる力を。アーメン」

「アーメン」


 ヨハンナからの祝福を受けたジョナサンはノルマンヘルムを被るとテント出て、一人で真斗の元に向かった


 ある程度、歩くと砂浜辺の上で真斗が立って待っていた。そして真斗は対面したジョナサンに対して一礼をし、ジョナサンも右手を胸元に置き一礼をした。


「私は織田 信長様の家臣にして会津城城主の鬼龍 真斗と申します」

「初めまして真斗殿どの。私は第10次十字軍の将軍にしてバチカンの聖騎士パラディンでありますジョナサン・ロンデバルトと申します」

「ジョナサン殿どの、出会って単刀直入ではあるが、よろしいかな?」

「ええ、構いませんが」


 すると真斗は甲冑の内側から“降伏”と書かれた書状を取り出し、ジョナサンに見せる。


「降伏して下さい。もう、これ以上の戦いは無意味です。無駄な血が流れる前に剣を置いて下さい」


 必死に説得する表情でジョナサンに訴える真斗であったが、ジョナサンは冷静と冷血を感じる表情で首を横に振る。


「いいや。我ら騎士は例え負けても決して敵に降伏などしない。どうしても我らを降伏させたいなら」


 そう言った後にジョナサンは腰に提げている名のある鍛冶職人が打った愛用のバスタードソード、“ハルバート・ヘルム”を鞘から抜き、両手持ちで上段の構えをする。


「真斗殿どの、私と決闘して下さい。貴方様が勝てば我らは剣を降ろし、降伏します」


 覚悟を決めた表情で決闘を申し込むジョナサンの姿に真斗は頷く、そして書状を再び甲冑へとしまうと腰に提げている愛刀の赤鬼あかきを鞘から抜き八相の構えをする。


 そしてお互いに構えた状態で居合の状態となって微動だに動かない。真斗とジョナサンの後ろでは多くの者が二人の決闘を固唾を飲んで静かに見守っていた。


 若狭湾から吹く海風で舞い上がる浜辺の砂、二人の上を飛び回る鷹、岩で羽を休める海猫の鳴き声、浜辺に来る細波の音、極限状態の集中力の中で真斗とジョナサンはお互いに誇り高く勇ましい表情で見つめていた。


 二人が構えてから約三分、二人の中では既に三時間は経過していた。するとまるで決闘開始の合図の様に周りから聞こえていた自然の音がピタリと消え、真斗とジョナサンは物凄い速さでお互いに間合いを詰める。


 そして地を裂き海が割れる様な凄まじい金属がぶつかり合う音が若狭湾に響き渡る。


 お互いの愛用の得物えものをガチャガチャと震わせながら下段の状態で鎬を削る真斗とジョナサン。その表情は一心不乱にの様であった。


 そんな状態から最初に仕掛けたのはジョナサンで、彼は円を描く様に下段から上段へと刃を交える位置を変えて素早く後ろへと下がった。そして下がった時に起きた後ろへ向かう反動を利用して再び間合いを詰めた。


 凄まじい表情と声でジョナサンは手を出させまいと物凄い速さでハルバート・ヘルムを振るい、真斗を防戦一方にさせる。


(よし!これならイケる‼︎このまま押し込めば、相手はバランスを崩して隙が生まれる!)


 心の中で勝利を確信するジョナサン。だがジョナサンの絶え間ない斬撃で防戦一方となっている真斗はジリジリと後ろに押されながらも鋭い眼差しと冷静な表情でジョナサンの動きを見ていた。


(よし!今だ‼︎)


 そう心の中で決意した真斗は素早い動きで左足を前へと出し、横振りを避けると脇構えをして柄の先でジョナサンの腹部に向かって強烈な打撃を打った。


 それを受けたジョナサンは想像を絶する痛みと衝撃で後ろへと大きく下がった。そして真斗は開いた間合いを一気に詰めてジョナサンへ反撃する。


「キエェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 鬼すらましてや神ですら恐れる様な殺気と怒りに満ちた表情で叫ぶ真斗は人間離れした凄まじい動きで斬撃と体術を合わせた攻撃でジョナサンを窮地へと追い込む。


 ジョナサンは先の打撃から来る痛みと目眩、そして吐き気に何とか耐えなが素早く体制を立て直しハルバート・ヘルムで真斗の斬撃を防ぐが、赤鬼あかきを防ぐ時に発生する僅かな体の大きな隙から来る真斗からの体術の打撃にジョナサンは口から血を吐く。


 一方的とも言うべき真斗の容赦のない打撃を受けるジョナサンの姿を他の騎士達と共に祈る様に見守っていたバチカン所属する修道女騎士会の女騎士長、『アヴィラ・テレサ』は驚愕していた。


「そんな⁉無類の強さと貧しい民の為に戦う誠実さを持つ姿から“精霊神ネフィリム”と呼ばれている!あのジョナサンが‼あんなに血を吐きながら追い込まれるなんて!」


 そして大振りをし、顔ががら空きになったジョナサンの頬に真斗は強烈な拳を叩き込む。それを受けたジョナサンは後ろによろめき、ハルバート・ヘルムを砂浜に突き立てると片膝を着いて顔を下に向け、受けたダメージから来る苦しみで大量に血を吐き出す。


 それを見た真斗は下段の構えで憐れむ表情でジョナサンに言葉を掛ける。


「ジョナサン殿どの、もうやめにしよう。これ以上、戦っても貴方が死ぬだけだ」


 だが、ジョナサンは苦しみに耐えながら震える体を突き立てたハルバート・ヘルムを杖代わりにして体を起こし死に物狂いの様な表情で息を切らしながら上段でハルバート・ヘルムを構える。


「こっ!断る‼俺は!俺は何があろうとも戦う‼俺の愛する故郷と故郷の民達の為にも!ここで死ぬ訳にはいけないんだぁーーーーーーーっ‼」


 そんなジョナサンの姿に真斗は自分自身と似ている事に気付き、真斗はすぐにキリッとした表情となり下段脇構えをする。


「分かった!では次で勝負を決めよう‼」


 お互いに構え直した二人は呼吸を整える。そして居合を待たずに間合いを詰め、刀と剣を振う。お互いの刃がぶつかり合った事で物凄い金属音が鳴り響く。


 交差し立ち位置が代わった真斗とジョナサン、しかも被っていた兜とノルマンヘルムがお互いの斬撃を受けて吹っ飛んでいた。真斗は少しよろめき、その姿を見ていたヨハンナ達は安堵するが、ジョナサンは首から大量の血を吹き出し、崩れ落ちる様に砂浜に倒れ込む。


 真斗は死を覚悟した表情で振り向き倒したジョナサンを見て、安堵し大きく一呼吸をする。


「勝負ありだなぁ。誇り高き騎士よ」


 そう言って真斗は赤鬼あかきを鞘に納める。そして再びヨハンナ達が居るテントを見ると浜に打ち上がったと思われる細い木の棒に括り付けた白旗を持ったヨハンナが覚悟を決めた表情で真斗に向かって無言で頷く。


 それを見た真斗は再び赤鬼あかきを抜き、丘の方を向き愛刀を高々と上げる。


「十字軍は我らに降伏した!我らの勝利じゃぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」


 真斗は大声で勝利を宣言すると丘に居る織田連合軍の武将達と足軽達は歓喜の声を上げる。


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 地と海が揺れる程の大歓声、こうして第10次十字軍の日ノ本遠征は失敗し、逆に織田連合軍は元寇モンゴル襲来以来の二度目の国外からの侵略行為に打ち勝ったのであった。



あとがき

織田連合軍と第10次十字軍別名:極東十字軍と戦闘はここで決着です。

次回は日ノ本による欧州征伐と欧州までの旅路を描きます。皆様、お楽しみに。

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