第 肆拾零 話:武蔵の浮城
会津を出陣した鬼龍軍は武蔵へ向かう途中で豊臣の命で同じく
そして6月15日の昼に
その間に兜と甲冑を着こなした真斗は同じく兜と甲冑を着こなした源三郎達を連れて
「長親
真斗は何とか上座に居る長親を必死に説得するが、兜を脱ぎ甲冑を着こなす長親は目を閉じ、真顔で首を横に振る。
「真斗
「ですが・・・・」
心配そうな表情の真斗に対して長親はフッと明るく笑う。
「なーーに、そんな心配そうな顔をしなさんなぁ。例え負け
笑顔でそう語る長親であったが、その目には誇り高い武士としての意志が宿っており、真斗は同じ武士として納得し、それ以上、食い下がる事はなかった。
「分かりました長親
そう真面目な表情で言う真斗は左側に置いていた愛刀の
すると真斗の右後ろに居る源三郎は驚き、すぐさま彼の肩を掴み制止させる。
「
すると真斗は源三郎の方を振り向き、笑顔で頷く。
「分かっている。だが、長親
源三郎は真斗から言われたように長親と家臣達の目を見てみると確かに瞳の奥には揺るぎない意思がそこにはあった。
「長親
真斗が軽く一礼をした後にそう笑顔で言った後に長親は怪しそうな笑顔をする。
「はい。我ら坂東武者、いつでもお相手てしますので研ぎ澄ました牙をご遠慮なくお使い下さい。ニッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
長親はそう言い、真斗達は立ち上がり大広間を後にする。
そして真斗達は佐間の口から愛馬に乗って城を出る時に軽装の甲冑姿をした
「真斗!お前、本気で我々と戦うつもりか?」
少し険悪そうな態度で問う
「ええ。でも
真斗の助けに少し悲しい表情となった
「私でも無理だ。長親は一度決めたら何があっても曲げん男だ」
「そっかーっさて、どうするか?」
困った表情をする真斗に今度は笑顔になった
「そう落ち込むな真斗。お前はよくやった方だよ。それに長親も私も、そして城に集まった者達もそう簡単に死にはしない!安心せい」
「ありがとうございます、
「うむ。気をつけての」
そして
「そっか。戦う事になったのか」
兜と甲冑を着こなし、少し興奮気味の三成からの問いに真斗は申し訳ない表情で頷く。
「申し訳ありません三成様。何とか説得しまたけど、意思を曲げる事はないようです」
真斗からの報告を聞いた三成は笑顔で
「
「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」」」」
皆は気合いの入った返事をした後に自軍の兵力確認の為に本陣を後にした。
すると豊臣の家臣である兜と甲冑を着こなした大谷 吉継が少し慌てた様子で再び
「大丈夫か?
吉継の疑問に兜と甲冑を着こなし自慢げな笑顔で長束 正家が三成に変わって答える。
「お前は本当に心配者だな吉継。我らの兵力は三万、さらにまもなく小西 行長が率いる軍が到着する。合わせれば四万弱となる!こんな支城なぞ簡単に捻り潰せるわ‼︎」
だが、吉継と同じく真斗も不安そうな表情で
「俺もここはそう簡単には落とせないと思います。何度かここへ来ましたが、
「フハハハハハッ!真斗よ!所詮、
計画を軽視する様な傲慢な発言する正家であったが、真斗と吉継の悪い予感は翌日になって現実となった。
⬛︎
翌日の早朝、昨日の内に到着した小西 行長が率いる軍が到着し三成の軍は四万弱、長親の軍は三千弱と圧倒的な兵力差で三成の本陣から
だが
(城に通づる各門口は道は狭く、何より入り組んでいる。やはり
自軍と行長の足軽達に囲まれている中で愛馬の
「行長様!ここは力押しではなく‼︎無難に秤量攻めで落とすのが得策と思われます!」
真斗は危機迫った様な表情で左側で愛馬に乗り、兜と甲冑を着こなした行長に進言するが、行長は
「真斗、それは出来ん。確かにお前の意見は正しいが、軍議で力押しと決まった以上、すぐには変えられん」
「しかしっ!」
すると
「構えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
右手に和槍を持った丹波からの大きな号令に馬を操る騎馬兵が上半身を前に倒し、後ろの鉄砲兵が持っている二式火縄銃二型を構える。
「
丹波の号令で一斉に二式火縄銃二型の銃口から火を噴き、轟音と共に弾頭が飛ぶ出す。
銃撃を受けた前列の真斗、行長の足軽達は次々と悲鳴を上げながらバタバタと倒される。すると丹波が指揮する騎馬隊はすぐさま別の門口へと走って向かうのと同時に
その光景に真斗は引き締まった表情となり、腰に提げている愛刀の
「行長様!このままでは総崩れになります‼私が自ら最前に向かって直接!戦いながら兵の指揮を取ります‼」
そう言うと行長も引き締まった表情となり持っている軍配を投げ捨て、腰に提げている愛刀である太刀、
「ああ!だが私も
「はい!では参りましょう‼」
「ああ!主よ‼どうか我に力を与えたまえ!」
キリシタン大名である行長は祈りの言葉を唱える。そして真斗と共に愛馬の手綱を大きく振り、最前に向かって走り出す。
■
真斗と行長は最前で足軽達を指揮しながら成田軍と戦ったが、沼地と湿地ゆえ上手く立ち回る事が出来ず、全滅を避ける為に已む無く撤退した。
三成の本陣では三成、吉継、正家、行長、そして真斗以外の武将達は苦渋を舐めた様な表情をしていた。
「くそ!奴らを侮っていた‼︎まさかここまでの抵抗を見せるとわ!」
謙信がそう言うと同調する様に信玄が頷く。
「ああ!だが、どうする‼︎いつまでも
すると正家が物凄く不機嫌そうな表情で皆を怒鳴る。
「ならば早急に良い案を出さんかい‼︎甲斐の虎も越後の軍神もここまで無能だったとは!」
正家からの身に余る言動に幸村と兼続が反論する。
「親方様は決して無能などしておりませぬ!正家
「さよう!幸村
二人からの弁明申し出に正家のイライラはさらに強まった。
「なんだとぉーーーっ‼︎信長様の前に敗れたお前達が秀吉様の家臣であるこの俺に!楯突くかぁーーーーーーーっ‼︎」
お互いに睨み合いながら正家、幸村、兼続は一気に間合いを詰めた時に怒りの様な険しい表情をした真斗が三人の間に割って入る。
「三人共!おやめ下さい‼︎こんな所で言い争っても何も変わりはしませんぞ!もしこのまま続けるのであれば‼︎私は容赦なく皆を切り捨てます!」
そう言いながら真斗は愛刀の
すると
「各々の方、初戦で負けた悔しさはよく分かります。だが、ここは一旦、心を落ち着かせ下さい。たった今!三成は良い策を思い付きました‼︎」
三成は自信満々な笑顔で言った後に正家が問う。
「どんな策だ三成?」
「あの城は!水攻めで一気に落とす‼︎これなら落城は確実です!」
三成からの水攻めの提案に皆は納得する。
「それでは各々の方!水攻めの具体的な計画が出来るまで一旦、自軍の本陣へお戻り下さい!」
三成から命に信玄、謙信、幸村、兼続は気合いの入った表情で頷き、三成の本陣を後にした。
だが真斗は不安な表情で再び
「三成様!
だが三成は真斗の言葉に耳を貸さず、勝利を確信した様な自慢げな笑顔をする。
「いいや!あの城は確実に水攻めで落とす‼」
そして三成は事細かい指示を紙に書き留め、各武将達に配布した。更に堤防作りに百姓達を大量に動員する為に朝は金
■
報酬目当てに集まった大勢の百姓達をフルに使った昼夜を通しての堤防は
更に
「これぞ天下人の戦いぞ!歯向かう者は圧倒的な力で全てを叩き潰し‼そしてなぎ倒す‼」
自信満々な笑顔で
「もう好きにして下さい。私はどうなっても知りません」
そして三成は右手に持つ
「決壊させよぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」
「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」」」」」」」」」」
三成の号令に三成軍の足軽達は掛け声をし、その後に大太鼓が力強く鳴り響く。
そして雇われた陰陽師達によって
流れ出した大量の水は様々な物を押し流しながら
だが、水攻めが始まって二日目の大粒の雨が降り頻る夜に事態は急変した。
紫色の
「ん?なんだ今の音は」
一人が立ち止まり音がする方を探していると足元の土台が急に揺れ始め、しかも大きなヒビ割れが起き始める。
「ああぁーーっ‼︎防が崩れるぞぉーーーっ!」
「いかん‼︎防が決壊するぞぉーーーーーーっ!」
二人は慌てながら叫び、それを聞いた
鳴り響く釣鐘の警告音に
だが時すでに遅く、物凄い轟音と共に一部の石田
原因は突貫工事で
足軽からの報告を聞いた三成はすぐさま
⬛︎
翌日の早朝、鬼龍軍の本陣では兜を脱ぎ、甲冑を着こなした真斗が
「そっか・・・分かった。お前はもう下がってよいぞ」
「はっ!では失礼します」
真剣な表情で命じた真斗に向かって三成軍の足軽は軽く一礼し本陣を去った。
「さて、これからどう
右手で下顎を触りながら独り言を呟く真斗。するとそこに馬に乗った見知らぬ兜と甲冑を着こなした武士が突然、走りながら現れる。
「ご
武士は慌て叫びながら落馬する様に乗っている馬から降りる。
「貴様!何者だ‼︎」
兜を脱ぎ、甲冑を着こなした
すると現れた武士は息切れをしながら答える。
「私は北条 氏康様の使いの者です‼実は至急、真斗様にお伝えしたい事がありまして!」
「分かった。申してみよ」
真斗からの問いに武士は一礼し、ご
「はい!この先の
武士の口から出た小田原城の落城の知らせに真斗を含め皆が驚く。
「何だと⁉それは本当か?」
「はい!その証拠に真斗様にこの書状をお渡しせよと‼」
武士は胸元から“命”と書かれた折り畳んだ書状を取り出し、真斗はその書状を受け取るのと同時に
真斗は受け取った書状を開き、内容を確認すると確かに小田原城の落城と
「まさか・・・こんな事が起きるなんて‼」
未だに信じられない状況に少し戸惑う真斗であったが、書状を折り畳み真剣な表情となり武士に告げる。
「お前、名を何と申す?」
「はっ!私は
真斗からの問いに片足を付けて深々と頭を下げながら答えると真斗は自分の右側で和槍を持ち兜を脱ぎ、甲冑を着こなした源三郎に声を掛ける。
「
真斗からの命に源三郎、
「「「「「「「「「「はっ‼」」」」」」」」」」
そして真斗は
本陣に着いた真斗はすぐに三成にさっきの書状を渡し、
「なんと!支城より先に本城が落ちるとは・・・ハッ!まったく運のいい奴らじゃ」
三成は受け取った書状を真斗に返し、彼に命を下す。
「真斗、お前は
「はっ!」
三成からの命に真斗は軽く一礼し、
「各々方、これ以上の
「「「「「「「おぉーーーーーーーーーーーっ!」」」」」」」
返事をした信玄、幸村、謙信、兼続は自陣に向かう為に本陣を去るが、吉継、正家、行長は本陣に残り三成と共に
「ハハハハッ!まさか本城の落城まで耐え抜くとは‼この
笑顔でそう言う三成に対して吉継も納得した笑顔で同情する。
「確かに。はたから見れば我らの勝利だが、落城しなかった点を見れば我らの負けだなぁ」
一方で正家は物凄く悔しそうな表情で後頭部を右手で掻く。
「くそ!出来れば何とか落城させたかった‼」
すると行長は笑顔で正家の右肩を左手でポンポンと軽く叩く。
「仕方ないよ正家、勝負は時の運だ。まぁこれはこれでよしとしよう。主よ感謝いたします」
そして水が抜けた
あとがき
遅くなって大変、申し訳ありませんでした。意外と『のぼうの城』と全く別な描写を描くのが物凄く大変でしたが、何とか完成しました。
ノートに追加した本作に登場した戦国の武将と姫君のAIイラスです
【本作の武将と姫君イラスト】
《北条氏康》
https://kakuyomu.jp/users/IZMIN/news/16818093089579355738
《成田長親》
https://kakuyomu.jp/users/IZMIN/news/16818093089579429218
《正木丹波》
https://kakuyomu.jp/users/IZMIN/news/16818093089579510816
《大谷吉継》
https://kakuyomu.jp/users/IZMIN/news/16818093089579584350
《長束正家》
https://kakuyomu.jp/users/IZMIN/news/16818093089579623902
《小西行長と菊姫》
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