第26話 尋問

 松花振興会 本部 21時


 〝執行人〟真鍋透は、呼び出された。


 真鍋は、12階建てのビルの裏手、インターホンを鳴らす。

 やがて、「はい、もう関係者以外入れない時間ですが?どなたでしょう?」と返答がある。

真鍋は、「月は三日月で、雨は多少降っている」とだけ答える。

インターホンの側の脇のボックスが自動で開く。

真鍋は、ボックスから出た、スキャンのカメラに自らの右手の平を差し出す。

自動ドアが開き、風除室から、一本の長い廊下を進む。

 6畳程のエレベーターホールから、エレベーターに乗り、地下3階を押す。

 エレベーターは、地下3階に着くと、また一つの扉しかないエレベーターホールに出る。

 扉の横のスキャンに、右手、左手の手のひらを差し出す。

 扉は開き、中は、天井が8メートルはあるホールになっている。

 ホールは、薄暗く一番奥に月明かりを天窓から取り入れたベッドがあり、その一角は、ペンタゴンに型どられた床に〝例のトライアングル〟が置いてある。

 一人の70代の老人が真鍋に話しかける。

「随分と不様ではないか?〝執行人〟?御大の曾孫様の手までかり、逃げ出すとは。引退するか?真鍋!」と語尾は、強い口調であった。

 真鍋は跪きひざまず「申し訳ありません、邪魔が入ったもので‥」と言い訳をするが、隠した右手三本は、〝反撃〟の呪いの準備をしていた!

 「真鍋!止めておけ!無駄だ!」とホールの上部にある〝観覧席〟から、声が聞こえる。

その観覧席には、10人程の影が浮かぶ。

 その中のはかまを履いた一人の長髪の男性が発した声であった。

 真鍋は、10人程の影を見て、右手を床につけた。

70代の老人は、「もう一度、チャンスをやろう‥内閣総理大臣、〝小池慎太郎〟を始末しろ‥なかなかこちらの言いなりにならん!出来るな?真鍋!」と迫る。

 真鍋は、「分かりました‥で、諸先輩方は何をしてくださるんでしょうか?」と言い返した。

観覧席から、「お前が失敗した時の〝後始末〟だ!」と声が響き、笑い声も起きた。

 真鍋は、「分かりました、佐倉先生‥ところで、ご子息の始末はよろしいのでしょうか?」と聞いた。

 老人は、「余計な事は考えるな!」そう言って、〝言霊〟を使う!


    〝真鍋はこの場を立ち去る〟


〝言霊〟は辺りに響き、真鍋は操られるかのように、その場を去った。

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