第71話 破滅の雷
痛みで視界が霞む。
私は何秒ほど気を失っていたのだろう……いや、今考えるべきことはそこじゃない……
速く……戦いに復帰しなきゃ……っ!
一刻も速く、ルナの援護をしなければという思い。だがそれと同時に一つの疑念もあった。
私が行ったところで……どうせ足手纏いにしかならない……
ルナは以前私が洗脳されてしまった時に大きく力を上げた。以前のルナとはまるで別人のようだ。
だが今回の敵もルナと同レベル或いはそれを超える強さを持っている。そんな二人の戦いに私が混ざっても逆にルナが戦い辛くなるだけだ。
だからって……私はここで……ただ二人の戦いを見ていることしかできないの……? また私は仲間を助けることが出来ない……
その時、私の心に一つの言葉が浮かぶ。
『貴様の大切なモノ——魔法少女達は我が守る。その代わり、貴様は我の為に戦え』
そうだ、オメガは私の大切な仲間を守ってくれると言ってくれた。なら、私もあいつの期待に応えるべきだ。
……オメガを信じてみよう。
私はオメガの為に戦う。結果的にそれがみんなを守ることに繋がるのなら。
自身の中で何の為に戦うかを明確にしていくうちに内側からその想いに応じるかのように黒い力が湧き上がる。
迷いは晴れた……もう、戦える……!!
「さて……行こうか……!」
◇
「待たせたね……ルナ」
突如現れたクリスティナは白のレイピアを軽々と受け止める。
「クリスティナ……?」
「あなたは……先程とはまるで別人のようですね……」
そう、クリスティナは先程とは明らかに様子が異なっていた。
ボディースーツの様な体の曲線がくっきりと現れた黒色の衣装に、黒い雷。
「……ふっ、嬉しいこと言ってくれるね。そう、私は新たな力を手に入れた……『破滅の雷』の力……見せてあげるよ……!」
そう自身満々に言いクリスティナはバリバリッと黒い雷を発散させる。
「ルナ! 待たせたね! 私も——」
「すん……すん……」
「……って!! ちょっと、何してんの!!?
突然ルナに匂いを嗅がれ、クリスティナは驚いた様な声を上げる。
「もしかして……なんか匂う……?」
「いいえ、むしろいい香りよ。それよりも……クリスティナ、あなたも彼の眷属となったのね……!」
「え? なに?」
「とぼけなくてもいいのよ? あなたからは彼の寵愛の魔力を感じる。つまり彼の力を受け入れて、新たな力を得たのでしょう?」
「わ、私は……別に……あいつの……こと、は……」
「ふふっ、素直じゃないわね。でもこれだけははっきり言っておかなきゃ……私が彼の一番目の眷属だから。クリスティナ、あなたは残念ながら二番目、よ」
「え……あ、うん。まぁ……そこはあんまり気にしてないよ」
「そうだ! 今から彼への愛を語り合いましょ! まずは——」
「……あの」
二人が話していると申し訳なさそうに白が声をかけてくる。
「……何? 今いいところなのだけれど?」
「話を中断させてしまい申し訳ありません。その……もう私と戦わなくて良いのですか?」
「そういえばそうね。クリスティナ、彼への愛を語り合うのはこの戦いを終えてからにしましょ」
「う、うん」
二人は改めて戦闘体制を整える。
「……参りましょう」
次の瞬間、白は凄まじい程速い初速でその場から消え去る。
「逃がさない《堕雷》」
クリスティナがそう唱えると空が黒い雷雲で覆われて行く。そして——
「雷よ、堕ちろ」
柱のような黒い雷が天から地上を貫く。
その破壊力はまさに雷神が如く、周囲の存在を全て無に帰す。
だが——
「クリスティナ、まだ仕留めてないみたいよ?」
「ん。そうみたいだね。まだいく」
高速で移動する白に対してクリスティナは雷を追従するように連続で堕とす。
だがそれでも白にはかすり傷一つとして与えられていない。
「これじゃ白のスピードを捉えられないね。直接殴りに行った方が速そ」
「ええ、それが最善ね」
「ルナ、私に置いていかれないようにしてね?」
「それはこっちのセリフよ、クリスティナ」
二人は互いに微笑み合い、同時に加速する。
そして白の背後に着くとルナは再び大きな氷塊を正面に作り出し、進路を塞ぐ。
「こんなもの……」
白が氷塊を破壊しようとした時、隣を黒い雷が駆け抜ける。
「追いついた……」
クリスティナの双剣による蓮斬が白の外套を掠める。
「ッ! この程度……!」
その時、白は自分が嵌められいるかのような悪寒がし、咄嗟に周囲を警戒する。
——が
「もう、遅い」
刹那、上空から舞い降りたルナが白を斬る。
「ッ……!」
白は即座に反応したがそれでも間に合わずルナの刃が白の仮面に触れた。
真っ二つに切断された白い仮面を白は落ちないように咄嗟に手で押さえる。
「……っ! なんて品がない攻撃……! まるであの子みたい……!」
白は仮面を手で押さえながら少々苛立った様子で呟く。
「あの子って誰のこと?」
「……わかり……ません……これは……誰の記憶でしょう……まさか……私の……? あの子? 誰? 私はなんだ……何をしていた……あの子を探さ……なきゃ……きっと何処かで泣いてる……何を探すのですか……? あの子の側には私がいなくちゃ……守らくてはならない? 何故……私は……あなたは一体……何者……ですか……?」
様子がおかしい白に対してクリスティナもルナも警戒を深める。
「う……うう、うあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
白の苦しむような悲鳴が響きわたる。
その瞬間、白の力が抜け、仮面がカランと音を立てて地面に落ちる。
透き通るような白い髪に白い肌、そして白い目。全てが白のような少女は苦しそうに呼吸を乱している。
「へぇ……随分と可愛らしい顔だね」
「本当、仮面で隠しているのが勿体無いわね」
二人の声に反応することなく、白は再び顔を上げると二人の反応できない速度で上空へと退避する。
「……どいて……私は……あの子を探しに行かなきゃいけないの……っ!!」
「どけない、お前を野放しにしたら被害がもっと拡大する」
「ええ、残念だけど。ここで倒させてもらうわ」
その言葉に白は険しい表情を見せると手に持ったレイピアに力を込める。
「それを邪魔する者は……殺すッ!!《神牙》」
そして神速の突きが放たれた。
「クリスティナ、来るわよ。ここは二人でアレをやりましょ」
「だね。それが一番いい」
二人は背中を合わせて互いに片手を上空へと突き出す。
「「《 破滅の魔弾 》」」
二人の背後に現れた黒い魔法陣から現れた二つの魔弾は融合し、一つとなって《神牙》と衝突する。
凄まじい衝撃で大気が揺れ、空間が歪む。
そして——魔弾は《神牙》を飲み込んだ。
「終わりよ」
「終わりだね」
魔弾はそのまま一直線で白へと突き進む。
「そん……な……私が……負け……」
——着弾。
そこにはもう何も残っていなかった。
「……勝った、の……?」
「ええ、私達の勝ちよ」
勝てたという事実を認識した途端、クリスティナはルナに抱きつく。
「やったー!! 私達、勝ったんだー!!」
「ふふっ、そうね」
「あっ……ごめん……私、馴れ馴れしく……」
「クリスティナ、あの時のことはもういいわ。アレはあなたのせいじゃない」
「ルナ……いいの……?」
「ええ。今後は互いにオメガの眷属としてより一層仲良くしましょ」
「そ、そうだね」
「よろしくね、クリスティナ」
「よろしく、ルナ」
オメガの力を得た二人の魔法少女は深い握手を交わした。
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