第3話 魔素について

 やあ、みんな。


 アンだよ。


 また読んでくれたんだね。


 正直、うれしいです。


 前回は、私の経験談を書くって書いてたんだけど、この世界のことをちゃんと説明しないと、読者のみんなは話についていけないよね?


 だから、悪いけど、もう少しだけこの世界の説明をするね。


 私はいつもこの日記をスマートボードっていうスマホみたいな端末を使って書いているの。


 元の世界のスマホとの違いは、常に魔力を流し込まないと使えないってことね。


 でも、魔力を使えるってことは、メリットばかりじゃないの。


 この世界では、魔力を使うたびに魔素っていう物質が体内に蓄積されてしまうの。


 この魔素が体内に増えるたびに、身体が魔物に近づいてしまうから、無制限に魔法を使えるってわけではないのね。


 だから、魔素を溜めないように、何かしらの対策が必要なの。


 一番簡単なのは、他人に魔素を吸わせて押し付けることね。


 だから、この国には、他人の魔素を吸って自分の体内に蓄える女の人たちが存在するの。


 彼女たちは自分の子宮に魔素を取り込みやすくする特殊な魔道具を入れているの。


 そして、吸った魔素は彼女たちの子宮の中にある魔道具に蓄えられるの。


 魔道具に魔素を吸収させないと、一気に魔物化が進行してしまうからね。


 でも、魔素が溜まった魔道具はどんどん膨らむから、彼女たちのお腹はまるで妊婦さんみたいに膨らんでしまうの。


 そして、限界まで魔素を吸収した魔道具はやがて魔物の抜け殻のようなものへと変化してしまうのよ。


 魔道具には魂がないから、魔物の身体のように変化しても抜け殻になってしまうらしいの。


 そして、その抜け殻を産み落としてから、また、新しい魔道具を子宮に入れるんだけど、それを何回も繰り返していると、やがてその人たちも魔物化してしまうの。


 きっと、魔道具が吸収しきれなかった魔素が、少しずつ彼女たちの身体を蝕んでいるのかもしれないわね。


 そして、魔物化してしまった人たちは、この国から追放されてしまうの。


 だから、表向きにはこの国には人間しかいないことになっているのよ。


 宮古様や王様の親族の女性たちは、かつてこの国にいた魔道具職人が作った特別な魔道具を子宮に入れているの。


 この魔道具は魔素を無害な生体エネルギーへと変換出来る特殊な触媒で出来ているんだって。


 生体エネルギーっていうのは、オーラやチャクラって呼ばれている、人間の力の源となっているエネルギーのことらしいわ。


 だから、彼女たちは魔素を取り除かなくても大丈夫なのよ。


 でも、その魔道具を作ったエリシャっていう女性のエルフさんは、いつのまにかこの国からいなくなってしまったの。


 だから、この魔道具はとても貴重で、持っている人はこの国でも数えるほどしかいないと聞いているわ。


 私はね、何故か魔素の影響をまったく受けないの。


 おそらく魔素に完全な耐性を持っているんだわ。


 私が異世界から来た人間だからなのかしら。


 でも、このことを知られると面倒なことになるから、まだ私の先生にしか打ち明けていないんだよ。


 私は、魔素で魔物化してしまった人達を、なんとか元の姿に戻してあげたいの。


 それが私の目標の一つなんだ。


 だから、いつか、その天才エルフのエリシャを探し出して、解決方法を聞き出そうと思っているのよ。


 今日も最後まで読んでくれてありがとう。


 またね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る