第22話 しばしの休息

 食堂は、静寂に包まれていた。

 皆が神妙な面持ちで、食事を摂っている。


(流石に、カタストロイ本体との戦い前に派手に騒ぐなんて真似、できやしねぇってことですか)


「アイク、席はシャオが取りに行ってしまったから、先に食事を取りに行ってきてくれるか?」


 ロディに声をかけられたアイクは、静かに頷く。それを確認すると、ロディはシャオのいる方へと向かって行った。


(ロディ中尉は、どう思っているんですかね~? あの人も、分からん人ですよ。まったく)


 半ば諦めつつ、アイクは食事を取りにカウンターへ向かう。この基地特製のお任せバーガーをトレイに乗せる。そうして、シャオが取った右端から三番目の席に着くと、シャオが既にバーガーにかぶり付いていた。


「アイク、任せた」


 一言告げると、ロディがカウンターへと向かって行く。その背中を見つめながら、アイクは特製バーガーに視線をやる。

 どでかいハンバーグが二枚に、チーズとパイナップル、そして、レタスにオリジナルソースがかかっている。ユーリと一緒に、日本のハンバーガー店に行ったときのサイズの小ささに驚いた事を思い出して、やはりバーガーはこのサイズだと再認識して、口に運ぶ。


(なかなか、美味いじゃないですか)


 シャオの方へ視線を向ければ、彼は満足そうな顔でバーガーを頬張っていた。見た目に反して、幼子のように、口元が汚れているのが、アイクの心をまた揺らす。

 ――彼は本当に、戦場にいるべきなのか。

 そんな想いを封じるかのように、アイクはバーガーに集中するのだった。


 ****


 食事を終えた三人は、ゴミをゴミ箱に捨て、トレイ置き場にトレイを返して食堂から出た。少しの休憩を挟んでから、ミーティングがあるのだ。

 一度専用ルームに戻ると、それぞれの端末に送られて来ていた資料に目を通す。

 目新しい情報はほぼなかったが、一つだけ気になる事が記載されていた。


信徒アウスの気配が今の所ゼロ? 今までの傾向と違いますね~?)


 今まで、カタストロイ本体が出て来た後は、大抵信徒アウスが現れ、その後疑似怪獣ハイ・カタストロイとなるのがこれまでのデータから算出された傾向だった。

 だが、今回はそのケースに当てはまらない。

 それが不気味で、かつ不愉快でもあった。


(何が起ころうとしているんですかね? いずれにせよ、倒すだけですが)

 

 どうしても拭えない違和感を覚えつつも、戦いに備えて少しでも体力を温存する。いくら機体に乗り慣れているとはいえ、負荷がかかる事に変わりはないからだ。

 三人と大災害の悪魔カタストローフェ・トイフェルが対峙するまであと××――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る