小説家になっちゃった!

由永 明

第1話 自己紹介するわよ

私の名前は森田茜。大学生よ。今まで受験勉強、勉強、また勉強!みたいなノリで、自分のやりたいこと何もできなかった。親にも勉強しなさい!って言われるし、塾にも通ったわ。わりと真面目な生徒だったと思うの。でも正直に言うと勉強するふりしてぼーっと過ごすことのほうが多かった。大学ってどんなことなのかわからなかったし、自分が何を勉強したいのかもわからなかったから、モチベーションは低いまま。だって楽しくないんだもの。高校生活も楽しめたようなどうでもいいような感じだったけど、これからは違うわ。自分のやりたいことたくさんやるわ・・・なんて開放感に浸って、友だちとディズニーランド行ったり、ショッピングしたり、漫画も読み放題、ゲームもやり放題、LINEで一晩中やりとりしたり・・・でも私が本当にやりたいことって、こんなことだったかしら。


ディズニーランドってホントにおとぎの国よね、入った瞬間に夢見てるみたいにウキウキしちゃって、アトラクションに並ばなくちゃいけないことも私は平気なの。お目当てはホーンテッドマンションとカリブの海賊。暗くてワクワクして2回も並んじゃった。将来はここで働いてもいいかななんてちょっと思った。もちろんミッキーグッズ買ってきました。今バッグについてるから、いつでも一緒よ。でも入園料が高いからたまにしか行けないかな。


マンガ読むと頭悪くなるから禁止って親に言われてたけど、ホントにそうかしら、だって空想できるし楽しいし、たまにはいいこと書いてあるし、いいことばっかりじゃないの。コミケには行ったことないけど今度行ってみようかしら。あんなにたくさんの人が集まるんだから自分も体験してみたいわ。


大学生になればいろんな夢も叶うような気がしてたけど、実際は結構授業も多くて忙しい。受験勉強の緊張がないことは嬉しいわ。でも私の夢って何なのかしら・・・真面目に考えてみたことないわ。今まで親には、いい大学に入って、いい会社に就職して、いい人と結婚して、みたいに言われてきたけど、いい大学、いい会社、いい人ってなにかしら?


少し慣れてきたから授業もサボることあるの。そんなとき先生によって言うことが違うのよね。

一人の先生は「サボったら単位あげない」って怒ったわ。ちょっと怖かった。

もう一人の先生は何も言わなかったけど、それっていいのかしら、何も言わずに落とされるかもしれないって思ったわ。

別の先生の言葉は印象的だった。「サボるのは良くないことだよね、だけど、君たちには今しかできない経験もあるのだから、それを優先することもあっていいんじゃないか、いつもじゃ困るけどね。」そして自分の学生時代のことも話してくれた。「今だから言えるけど、私も授業サボって遊んだよ。僕の時代には麻雀とかもやったし、友だちとお酒も飲んだ。今は禁止されててできないけど、そんな遊びの中でたくさんの経験をしたからこそ、楽しくてもやっちゃいけないことは何かがわかったし、遊びとの付き合い方みたいなことも身体で覚えていったよ。」なんて、きっといい話だと感じたけど、今の私には正直ピンとこなかったわ。

どの先生の話が正解なのかしら。答えは一つって点数つけられて勉強してきたから、先生によって言うことが違うと困るわ。


でも、正直にいって、サボったのはただ友だちと遊びに行きたかっただけだったり、気分が乗らないから学校行きたくなかったからなのよね。毎日なんとなく楽しければそれでいい気もする。学校に行って授業聞いてるふりして、単位取って、友だちとおしゃべりして、LINEは便利よね、夜中でもいつでも話せるもの。たまになにかで言われるけど、人生の目的を持ちなさいとか、何のために生きているのか考えなさいとか、よくわからない。そういうことは、誰が教えてくれるのかしら。

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