第55話:選択

Reader-イエルロ


「こ———ッのォッ!!」


異変は、指揮官がオルターを追った時から始まっていた。私の能力で脳髄が焼き切れるほどの一撃を喰らったはずのLicaシリーズたちが、再び一斉に立ち上がったのだ。


「『動くな』ッ!!」


スカレットが叫んだ瞬間、私たちを含む皆の行動が止まる。新しく覚醒したらしい能力、こちら側も動けなくなるのはネックだが、思考する時間ができたのはとてもありがたい。


「全員、ここからの判断は私がやるわ! スカレットはこの状況の維持に集中して!」

「了か—————ッッッ!!?」


不意に、スカレットがうめき出した。


何が、そんなことを考えている時間はなかった。






スカレットの能力を無視し、Licaシリーズが動き出した。


「スカレットッ!!」

「能力ッ、解除ッ!!」




「ハァァァアア!!」




全力の雷光解放! 今度こそ仕留め———!?


「どうして!?」

「違う、違うのイエルロ! この娘たち!!」



















! 全部オルターに統括されている!!」




嘘、つまり—————





















「こいつら全員クソババアオルターかよッ!」




そのまま私たちは、抵抗すらできずに800強の波に飲まれていった。






◇◇◇◇◇






「天音指揮官、もう、諦めろ」

「い、やだ」

「答えは出た、お前にアスナは救えない」


オルター……あんたは何で悩んでいるんだ?


こんな、こんなことをする人じゃなかった。


アスナのことを人一倍愛していて、甘いものが何よりも好きで、身長がコンプレックスで、


どこで間違えた? アスナが、居ないとこんなにも無力なのか、俺たち俺とオルターは。


「アスナは、救える! 俺たちが見つけてきた方法でッ!!」

「なら—————選べッ!! アスナかエシルかを!!」


どう言う……………!!


「そうかッ!」


盲点だった、アスナはなんのためにエシルを頭に入れたのかを忘れていたッ!!


「アスナを助ければエシルは一生目覚めない! エシルを助ければアスナは脳が焼き切れるだろう!! 選べ! 私には選べなかった、お前には選択できるのか、天音和人!!」




オルター、あんたはずっと選んでいたんだな。




さあ、どうする?

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