第17話【ワンドールとクレプスキュール】
俺たちの住んでいる町、フレイラは良い言い方をすれば自然が多いが、悪い言い方を、すればまだまだ周りと比べれば発展していない。
だから、必然的に力を持った人間、金のある人間はよその王国に移る。
まぁ当然だな。いくら金を持っていたってここで買えるものなんて知れている。
――だが、そんなフレイラにもひとり――いや、ひと家族だけ大金持ちが住んでいる。
その家族は黒を基調とした周りは約5メートルの壁で囲まれている屋敷(もはや城)に住んでおり、その家族の人間と知り合いという訳でも無かったが、それはフレイラの中でも1番異質な建物で、同時に近寄り難い雰囲気を醸し出していた。
――そして今、そんな異質な屋敷の門前に俺たち3人と先程冒険者ギルドで知り合ったウェイリスさんの計4人で立っていた。
いや、おかしくね?
「あ、あのウェイリスさん……?この屋敷って、」
「えぇ、ウェイリスたちワンドール家の所有物よ。」
「ま、マジか……!?」
確かにギルドから出て歩く方向も完全に
ってっ!!だとしたらこの人のキャラ濃すぎないか!?
なんだよ金持ち一家の娘で上級冒険者で俺の父の元弟子って!!
「ウェイリスさん、冒険者としてのレベルも凄いのに、お家もお金持ちなんて凄いよっ!」
「そんな対した事無いわよ。ほら、入りましょ」
そうして固く閉ざされた門に右手をかざすウェイリスさん。するとその途端、門の真ん中に巨大な紫の魔法陣が出現し、
ぎぃぃ、そう錆びた鉄の音を響かせながらそれはゆっくりと開いた。
「ウェイリスに着いてきてね。広くて迷子になる人もいるから。」
「あ、あぁ」「すっごいねぇ、」「結界魔法と言うやつでしょうか、初めて見ました、」
そんな光景に、俺たち3人は口を半開きにさせて驚く。
なんだよこれ……絶対フレイラみたいな町で見れる光景では無いだろ。
そんなこんなでワンドール家の屋敷へ入って行った。
♦♦♦♦♦
それから綺麗なレンガで出来た道を通り(途中に噴水などもありながら)遂に屋敷の中に入ると、内装は外装以上に豪華だった。
「な、なんだよこれ……」
「わぁっ!!こんなお城、これ私がちっちゃい頃によくお母さんに読んでもらってた本に出てきてたよっ!」
「私は長く生きてきましたが、ここまでのものを見たのは初めてです」
いや、マジですごいぞこれは……
壁は落ち着きを感じさせるダークな色合いで、地面には縁が金色の赤いカーペットが引かれている。
それに窓も多く、光がいい具合いに入って来ていてオマケに天井にはそれこそケティが言っていた様なおとぎ話の世界でしか見た事が無い豪華なシャンデリアが等間隔に設置されていた。
「ま、マジでウェイリスさん、ワンドール家ってなにをしていた人たちなんですか、」
逆にこの町にこれだけの財力を持っていて住んでいる理由を教えて欲しいんだが……
もしかしてあれか?こういうまだ発展途中の小さな町とかの方が土地が安いから屋敷を建てやすい的なやつか?
「ワンドール家は昔からずっとここら一帯の土地でモンスターを狩り生計を立てる冒険者一家よ。」
「冒険者、一筋だったのか……?」
本当に?それこそ英雄の様なレベルにまで達しないと冒険者だけでここまで成り上がれるとはとても思わないのだが……
しかし、対してウェイリスさんは目を閉じると感心した様に首を縦に振る。
「ほんと凄いわよね。でも、ウェイリスの家系がここまで大きく成り上がれたのはハヤト、貴方の家系クレプスキュール家のおかげなのよ。」
「え?なんで家のおかげなんだ?そんな対した家系じゃ――」
「いや、それがお母様の話によれば昔ここら一帯で1番有名だった家系はクレプスキュール家だったそうよ。」
「な、なんで……?」
その後、ウェイリスさんからその事を詳しく聞かせてもらうと、どうやら今は違うが昔のクレプスキュール家は皆魔法や結界などに大変優れていたという事が分かった。
「それで、対してその時ウェイリスたちワンドールはしがない冒険者の家系だった、でもクレプスキュール家と交流をし、魔法の事などを色々伝授して貰ったから、今のワンドール家があるらしいわ。」
「なるほど……あっ、だからその繋がりでウェイリスさんも父に剣術を教えてもらってたとか?」
「うーん、そこら辺はウェイリスも詳しくは無いから知らないけど、あるのかもしれないわね。まぁどの道、
「あっ、でもツバメさんはそんなの関係無くいい人よっ!!」最後にそう言い加え、はしゃぎ出すウェイリスさん。
相変わらず父に対する情熱が凄いな……
っと、するとそこで会話から外れてしまっていたケティとセリエラの内、ケティが「お話の途中で申し訳ないんだけど、」そう言い話に入ってきた。
あっ、なんかまた俺とウェイリスさんだけの世界に入ってしまっていたぞ、今日はこれよくやってしまうな。
「すまんすまん」
「いやいや!全然大丈夫だよっ!ずっと玄関前で立っててもあれだし、どこか椅子でもある部屋があったらなぁーって思ってさ」
笑いながらそう言い、右足を少し気にする素振りを見せるケティ。
そうか、今日は復帰の初日とは言え今までほとんどずっと横になったり座ったりしていたんだ、そりゃ辛くもなるよな。
すると、怪我の事情を知っているウェイリスもそれに気が付くと、
「あっ、ごめんなさい。ずっと立たせてしまっていたわね。着いてきて、そこでご飯を食べましょう。」
そうして俺たちは正面に続く長い廊下に向かって歩き出したウェイリスさんの背中について行った。
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