第7話【新たな文章】
スライム討伐後、俺は自分の力不足を痛感し、今は亡き父がよく鍛錬に使っていた空き地で素振りをする。と、そこに現れたのは幼なじみのケティ。
そこで俺は改めてケティがずっと自分を見守ってくれていたんだと実感する。
その後、俺は少し素振りをするとケティと別れ、明日の為にも家に帰って身体を休める事にした。
今回の話はその翌日の朝から始まる――――
チュンチュンチュンチュン。
小鳥の声と窓から差し込んでくる眩しい光で俺は目が覚めた。
「ふっ、ふぁ〜、、。」
ベットから上半身だけを起こし、伸びをする俺。
昨日は早めに家に帰って早めに寝たから身体の調子が良いな。よし、じゃあ今日も1日頑張りますかね。
まぁ、デスティニーレコードがあればその日何が起きるのかだいたい分かるんだが。
「……と、そういえばデスティニーレコード。」
そこで俺は枕元に置いていたデスティニーレコードを開く。未来の出来事が記されていた本だ、もしかしたら新たな文章が加えられているかもしれないからな。
1ページペラリと開く俺。
すると、そこには4月1日:ケティ、セリエラと仲間になる。、4月2日:初依頼でスライムを討伐。に次いで3行目の文章が。そこにはこう書かれていた。
4月5日:ワーウルフ討伐にてケティが右足を負傷。
「って、……っッ!?!?、」
その文章を見た瞬間、俺の背筋に悪寒が走る。
いやだって、、負傷、、?
その文字だけじゃどのレベルかは分からないが、デスティニーレコードに記されるレベルだ。
もしかするともう冒険者として生きていけないレベルの怪我をするんじゃ……
「どうする……今すぐケティに伝えるか……?」
いや、でもデスティニーレコードは持ち主の俺にしか文章が見えないから言ったところで「心配し過ぎだよ〜」きっとそう返されるに決まってる。
……なら、今俺が出来る事はワーウルフの討伐に行く4月5日――明後日までに出来るだけ3人とも強くなっておく事、(ケティとセリエラは自分の身を守れる様に、俺は当日に出来るだけケティを守れる様に)そして、そもそも4月5日にワーウルフ討伐の依頼を受けない事だ……ッ!!
今焦っても仕方ない。まだ2日あるんだ。
きっちりと準備をすれば未来は変えられるはず……!!
「ふぅ……っし!!」
こうして俺は決意すると、ベットから立ち上がった。
♦♦♦♦♦
そしてそれから、俺は朝食を食べて準備を済ませるとすぐに冒険者ギルドへ向かった。(2人には明日また今日と同じくらいの時間に集合と言っている)
そして、ギルド前に到着すると案の定昨日と同じ様に俺の事を待っていたケティとセリエラの元に行くと、
「あ!ハヤトだ!おっはよ〜!」
「ハヤトさん、おはようございます。」
「あぁ、集まってるな。じゃあ早速行くぞ。」
「え?行くって依頼に?」
「違う。今日は1日特訓だッ!!」
両手を腰に当てると俺は高らかに声を上げる。
そう、これこそが俺の考えた2日後に待っているであろうワーウルフに向けた対策だ。
今の俺たちは(セリエラは違うかもしれないが)ドが付くほどの初心者。だからまずは基礎能力を上げるべきだと思った。
確かに依頼で経験を積むのも大切かもしれない、が、そこでデスティニーレコードに記されない様な小さな怪我をしたりしたらそれこそ本当にケティの怪我に繋がりそうだからな。
しかし、対して今日も依頼に行くと思っていた2人からは当然反論される。
「えぇ〜、依頼受けようよ〜!」
「何故ですか、私も依頼を受けた方が良いと思いますよ。」
「そう言いたくなる気持ちも分かるがな……昨日上手く行ったのは相手がスライムだったからで、きっとここからはもっとレベルの高いモンスターとも――」
「だから、早めに戦って慣れておこうよ〜」
「同感です。今は討伐の経験を積んでおく事が最優先だと思いますよ」
「げっ……」
やっぱりそう思うよな……
――だが、こんな事もあろうかと朝食を食べてる間に考えていたのだ、2人を説得する手段を……っ!!それは――
「……分かった。確かに2人の言っている事も十分に理解出来る。だがな――これは他でも無い、今は亡き父の教えなんだ!!」
そう、これこそが「先輩冒険者の言っていた事」作戦ッ!!
「ハヤトのお父さんって、冒険者だった人だよね?」
「そうだ……!!」
そして、俺の父が冒険者をしていた事を幼なじみのケティは知っている……!!これで自然とセリエラからしても「ケティさんが言っているなら――」という流れになるのだ!!
まぁ実際、父も「経験も大切だが――それは基礎が出来ている人間に適応される言葉だ。」と言っていたしな。今だけは借りさせて貰うぜ。
「俺の父はいつも言っていた。確かにモンスターと戦う経験は必要だ。だが、それよりも大切なのはやはり基礎練習だと!!なぜなら!基礎が完璧になる前にモンスターとばかり戦っていると絶対にどこかで大怪我を負ってしまうから!!」
「俺はリーダーだ。だからこそ、2人に大怪我なんて負って欲しくない。お願いだ。」
そこで俺は渾身の演技で2人にそう問い掛けた。
すると、さすがにケティやセリエラもここまで言った俺に反論するのは申し訳ないと思ったのだろう、
「そこまで言うなら、分かったよ!!」
「仕方ないですね、まぁ基礎練習も大切ですし。」
「ありがとう……!!分かってくれてありがとう!!」
よし……!!絶対にケティに怪我なんてさせないぞ……!!
予告された未来なんて変えて俺たちは最高の冒険者ライフを突き進むんだ!!
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