第21話 茜side
「それでなにを話したの?」
花凛書店から少し離れた場所で周囲に誰もいないのを確認してから話しかける。
「……浮気してたのバレたかもしれない」
質問には答えず言いたいことを言う。
「あんた!なんか余計なこと言ったわけ!?」
茜は秋夜の服を掴み下から睨みつける。
「なにも言ってない」
「本当に?」
茜は秋夜を疑うような目で見る。
「ああ」
「なら、なんで巴に会いにいったの?なにか話があったんでしょう」
「違う。偶然だ」
秋夜は茜を落ち着かせようと諭すように言う。
「嘘!そんなの信じられるわけないでしょう!」
「嘘じゃない。本当だ」
「なら、なんであの公園にいたのよ!私、前に言ったよね!あの公園の近くに巴の家があるって!」
掴んでいる服をさらに強く握りしめる。
「ああ。聞いた」
「なら、なんで……!」
「お前に会いにいったんだ!」
茜の言葉を遮り叫ぶように言う。
「お前に会いに行ったのに、家にいなかったから、帰ってくるのを公園で待ってたんだ。そしたら、巴と会って少しだけ話したんだ」
'なんでよりにもよって公園で待つのよ!家の近くで待っていてくれたら……'
茜は秋夜の軽率な行動に怒りが込み上がる。
「悪かった。勝手なことをして。でも、電話もメールも返してくれないから心配で……」
茜が急に黙ったことで怒らせたと思い、慌てて謝罪し、言い訳をする。
「……これからは勝手なことしないで」
茜はそう言ってその場から立ち去ろうとするが「待てよ。まだ話しは終わってないだろ」と秋夜に腕を掴まれ歩くことができない。
「なに。もう話すことなんてないけど」
茜は苛立ちを隠すことなく顔に出す。
「自分の言いたいことだけ言ったら用はないと……ふざけんなよ」
秋夜はボソッと呟く。
「……なんか言った?」
ボソボソと何か言っている声は聞こえたが小さすぎてよく聞こえなかった。
「俺の話はまだ終わってない」
「……!わかったから手放して!痛いから!」
急に腕を掴む力が強くなり顔を顰める。
「あ、悪い」
秋夜は無意識に力が強くなっていたことに気づき慌てて手を離す。
「それで、話って」
「俺たち付き合わないか?」
「は……?」
茜は聞き間違いか?と自分の耳を疑う。
秋夜の顔が真剣で嘘ではないとわかると、茜は自分の顔が引き攣っていく。
「冗談でしょう」
茜はハッと笑いそうになるのをなんとか耐えそう言う。
「冗談じゃない。俺はお前が好きだ。お前もそうだろ?」
'ふざけんな!本当にふざけんな!誰があんたみたいなクズのことなんて好きになるもんですか!'
そう言って秋夜の頬にビンタしたかったが、まだ使い道があるので今仲違いするわけにはいかない。
「はぁ…….今交際したら周りからなに言われるかわかってる?勘のいい子はすぐわかるわ。あんたと巴が付き合っていたときから私達は関係があったって」
「そんなの……!」
どうでもいいだろう、言わせておけばいい、と言おうとしたが、遮るように言葉を被せられ最後まで言えなかった。
「どうでもよくない!前に言ったよね。この関係を続けるなら、巴との関係が悪くなることだけはしたくないって」
「……わかってる」
「わかってるなら、二度とふざけたことは言わないで」
キッ、と秋夜を睨む。
「悪かった。もう言わない」
茜との関係を終わらせたくなくて、本当はまだ言いたいことがあったが無理矢理飲み込み黙り込む。
「なら、いいわ。それと暫く2人で会うのはやめよう」
「……わかった」
嫌と言ったらもう相手にしてもらえない気がして素直に頷く。
「じゃあ、私はもう行くから」
そう言うと茜は今度こそその場から立ち去る。
秋夜は茜の後ろ姿を眺め、完全に見えなくなると「クソッ!」と近くにあった缶を蹴る。
「そんなに、俺と付き合うのが嫌なのかよ!」
秋夜は気づいていた。
茜が自分のことを好きではないことに。
巴と付き合っていたからちょっかいを出されただけだと。
別れた以上、自分にもう用はないから捨てようとしているのだとなんとなくわかっていた。
だから、最近メールにも電話にも出てくれなかったとのだと。
信じたくなくて会いにいったが、いま話して確信にかわった。
茜は俺のこと少しも好きではないことに。
「許さねぇ。絶対に後悔させてやる」
自分を蔑ろにした茜とこんなことになった原因は全て巴のせいだと思い、二人に対して激しい憎悪が湧き上がる。
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