第17話 会議
「はぁ。疲れた」
私は家に帰ると、制服を脱ぎ地面に寝転がる。
女子達の視線のせいでいつもの3倍疲れた。
今日は小学生の稽古をする日なのに、疲れすぎて動きたくない。
「動きたくない……」
このまま寝てしまおうかと思ったそのとき、バンッと勢いよくリビングの扉が開いた。
「巴!準備はできとるか!」
祖父の大きい声を聞いた瞬間、げんなりする。
このまま寝たふりをしようと無視を決め込んでいると「なんじゃ。寝とるのか仕方ない。このまま連れていくか」と足を持ち上げながら恐ろしいことを言うので、慌てて「起きてるから!」と返事をする。
「やはり狸寝入りじゃたな」
「わかってるなら、普通に起こしてよ」
「起こしたけど、無視したのはそっちじゃろ。ワシだってこんなことはしたくなかったけど、時間じゃから強硬手段に出るしかないじゃろ」
'ないじゃろ、じゃないわよ。可愛く言っても可愛くないから'
祖父のぶりっ子ポーズに鳥肌が立つ。
「わかった。着替えて、すぐいくから。先にいってて」
私は諦めて道着に手を伸ばす。
「早くくるんじゃぞ。もし、こなかったら……」
「いくってば。ちゃんと」
昔、いくと言っていかなかったときがある。
そのあとは、修行と称してボコボコにされた。
あんな目にあうくらいなら、疲れてても指導した方が100倍いい。
私はため息をつきながら、道場へと向かう。
同時刻、ファミレス。
桃花、芹那、楓はいつもの店でドリンクバーとスイーツを食べて話し合いをしていた。
巴を誘わなかったのは今日が指導する日だと知っていたのもあるが、今から話す内容を聞かれたくなかったからだ。
「あのさ、今日の昼休みの巴おかしくなかった?」
桃花が最初に口を開く。
「やっぱり、桃花もそう思った?私もそう思ったんだよね?」
楓が続く。
「二人もそう思った?私も同じこと思った?」
芹那も二人に同意する。
「やっぱり、そうよね。あの女に対して『今日も可愛い』ってならないなんておかしいよね」
桃花は巴の真似をする。
そのモノマネに二人は「似てる、似てる」と笑う。
暫く三人は「アハハッ」と笑っていたが、スッと真顔に変わり話しを再開した。
「私さ思ったんだけどさ、あの女があのクズの浮気相手なんじゃない?」
桃花は今にも人を殺しかねないほど低い声で言う。
「私もそう思う。そう考えれば日曜日、巴があの女を無視したのも納得できるわ」
芹那はあの日、目の前で茜を無視する姿を見た。
あのときは秋夜を連れてきたことに怒っていると思ったが、よく考えたら巴がそんなことで起こるはずはない。
浮気相手だから無視した。
簡単な答えだったのに、秋夜に対する怒りで冷静さを失っていた自分を後悔する。
「二人ともあの女がクロだと思ってるってことよね」
楓の問いかけに二人は頷く。
「じゃあ、とりあえず証拠を探そうか。もし違ったら困るからね。それにしても、もし本当に浮気相手だったら、今日のあのふざけた誘いは絶対に許せないわ」
楓はニコッと笑う。
二人は楓の笑みを見て「うわっ!怖すぎ!」と肝が冷えた。
「そうね。もし仮に違ったとしても絶対に一緒に遊んだりしないけどね。私、あいつのこと嫌いだし」
桃花は中学のときに巴と仲良くなり、よく遊ぶようになった。
少しして茜のことを紹介されたが、巴に対しての態度と自分に対しての態度のあまりの違いに腹が立った。
正確に言えば、巴の知らないところで睨まれたり、陰口を叩かれたことが原因で嫌いになった。
最初はなぜそんなことをされないといけないのかと苛ついたが、すぐに自分の場所を奪われると恐れてそうしているのだと気づいた。
なに、その幼稚な理由は、と馬鹿馬鹿しすぎる理由に相手にするのも面倒くさくて放置していた。
だが、もし今回もそんな理由で巴の彼氏に手を出したのなら、絶対に許さないと決めた。
彼女にとったら大切なことかもしれないけど、巴からしたらいい迷惑だ。
友達は失わなかったけど、彼氏は失った。
これは絶対に許してはいけないことだ。
「私も嫌い。でも、仕方ないね。勝手に私達のこと敵対視してきて、毎回睨んでくるんだもん。あんなんされたら誰だって嫌いになるよね」
芹那は茜に睨まれたときを思い出す。
「それも、絶対巴にバレないように見えない角度からだもんね。ある意味すごいよね。感心するよ」
楓は笑いながら言う。
またもや、二人は楓の後ろから黒い何かが見え「うん。怖いわ」と思う。
「本当にね。じゃあ、これからはあの女が浮気した証拠を掴む、でいいよね。もし見つけたら、巴が傷つかないよう守るでいいよね」
「うん」
「意義なし」
桃花の言葉に二人は頷く。
話がまとまると、そこからは茜の話しはせず、芸能人やファション、学校行事のことを話して夜ご飯を食べてから解散した。
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